珍しくも無い本の雑感39

  • フラッシュバック

 新聞の書評を見ていて、思わず反応してしまった。
流れる星は生きている」・・・?
引き揚げ・・・?
藤原・・・?
遠い彼方からかすかな記憶が・・・。
 思い出した!
40年前だ!
小学校の図書館で借りた本だ。
何でこの本を読んだのかわかんない。
でも、強烈に印象に残った。
子ども心にもショックだった。
 その著者の娘が書いた本が出たという。
ってえ事は、あの・・・?
リュックの中で半分死にかけてた赤ん坊が・・・?
矢も盾もたまらず、読みたくなった。

  • 60年

 ホントは去年の内に読んどけば良かった。
せっかく敗戦後60年をテーマにいろんな本を読んだし・・・。
ほとんどが昭和史全体を振り返る本だった。
天皇と軍部の事を中心に書かれてた。
 こういう小市民の立場の本もあったんだよなあ・・・。
タイトルは「母への詫び状」
著者は「藤原咲子」
昭和20年満州生まれ。
この年の満州生まれがどういう事を意味するか・・・。
 著者は「奇跡の赤ん坊」としての人生を運命付けられた。
それはそれで大変だったと思う。
生まれて、すぐに終戦。
正確な記憶は無いけど、地獄の様な引き揚げを味わった。
母親「藤原てい」と2人の兄は地獄を覚えている。
このギャップがまた大変だったべなあ・・・。

  • 教科書

 敗戦後60年。
流れる星は生きている」ももう一度読めば良かった。
今読んで、どう感じるべか?
40年も昔の感性とは随分違うべなあ・・・。
娘「咲子」も気づいた通り、この本はドキュメンタリーじゃない。
創作として書かれている。
でも、大半がそのままの経験談である。
まったく違った角度から戦争の愚かさを見られるかも・・・。
 ビンテージのセンセイなんか必読だべさ。
ジュンちゃんもイキがってないで読んでみたらいい。
著者と同じ世代じゃんか。
たまたま生まれた環境がちょっと違っただけだべさ・・・。
 この本こそ教科書にすりゃあいいべな。
100万のゴタクを並べるよりずっとわかりやすい。
腹に訴えるモノがある。
誰でも理屈抜きで戦争なんか御免だと思うんじゃないべか?
小市民的にはこの本と「私は貝になりたい」が双璧かな・・・。

  • 教師

 著者は現在、中国語の教師である。
引き揚げ後、栄養障害の後遺症もあったべ。
複雑な精神状態だった。
常に不安に苛まれながらも、両親の強い保護で現在に至った。
 立教大文学部を卒業。
その後、東京教育大、北京師範大で学ぶ。
ある面、逃避の為の学業だったのかも・・・。
母親とはずっと軋轢があったらしい。
不安定な精神状態を支えてくれたのは父親だった。
父親ってえのは「新田次郎」である。
厩舎や毛並みは申し分なかったんだ・・・。

  • 甘え

 著者は父親が大好きだった。
でも、それ以上に母親に甘えたかった。
ところが母親は甘えを一切許さないように見えた。
厳格で常に著者には冷たく当っていたように思えた。
 それが最近になって曲解だったとわかった。
この本はその「詫び状」なのである。
もう60歳になる娘が86歳の母親の介護をする。
認知症で思う通りにはならない。
でも、心から打ち解けて過ごしている。
 最近になって著者は授業中、生徒に訊いたとか。
「もし、今戦争になって大切なものを1つだけ持って逃げるとしたら・・・?」
生徒たちは笑顔で答える。
「犬」「ペン」「辞書」・・・。
「先生は・・・?」っと逆に訊かれたそうだ。
思わず答えた。
「母をおんぶして逃げる・・・」
後は涙が止まらなくなってしまったそうだ・・・。
 続きは又・・・。