珍しくもない本の雑感68(5)

 【ガセネッタ&シモネッタ】

  • 「義憤」

 著者は子どもの頃をチェコで過ごした。
だからこそ、感じた「義憤」があった。

「日本人が全国民的に文字習得に費やす膨大な時間とエネルギーと記憶容量を考えると、何たる非効率、何たる無駄。同じ時間を何かもっと意味あることの習得に使えないものか」

んなるほど!
っと思った。
 ところが、コペ転があったという。
これも通訳だからこそ気づいた事だんべな。
日本語のテキストをロシア語に訳すのと、その反対ではしんどさが違う。
日本語をロシア語に訳す方がはるかにラクなんだとか・・・。
ロシア語通訳仲間も皆同じだったそうな。

  • 生産性

 んで、気がついた。
英語やロシア語は表音文字だけ。
中国語は漢字だけ。
日本語は漢字とかな文字が混じっている。
これが実に上手く出来てる。
 基本的に意味の中心を成す語根の部分が漢字。
そして意味と意味の関係を表す部分がかな。
これで、一瞬にして文章全体を目で捉えることが出来る。
 アメリカ生まれの速読術は表音文字対応。
これは、日本語にはほとんど役に立たない。

実は「かな漢字混合文」それ自体が速読に最適だった。

 著者は実験してみたそうな。
小説を黙読するスピードを較べた。
著者の場合、日本語の方が6〜7倍の速さで読める。
子どもの頃、費やしたエネルギーは報われてた。
まさにコペ転だった。
でも、本を読めばって話だけどね・・・。

  • 筋肉

 著者はかなり本を読むヒトらしい。
「かな漢字混合文」の効用はコペ転だった。
コペ転によって、ますます元取りたくなったらしい。
意地汚く本を貪ってるそうな。
 元々本好きだったらしい。
文字から映像を立ち上げる。
それを頭の中のスクリーンに映し出す。
もう、こーゆー筋肉が出来上がっちゃったという。
だからどうしても活字の方を好む。
 映画と原作のどっちが良かったか・・・?
よく聞く議論だべさ。
一旦、活字の筋肉を作っちゃったヒトは不幸である。
出来合いの映像では、物足りない。
ちょっとだけ、気持ちがわかる・・・。

  • 偏食

 著者はハマる方のタイプだったそうな。
ある作家が気に入ると、ず〜っとその作家を読んでたとか。
完全な偏食だべや。
ま、それもわかる。
 しかも考え方は正しいべや。
人生、限られた時間しかない。
本を外した時の虚しさも相当なモンである。
どうしても冒険するのは度胸がいる。
 通訳になってから自然と読み方が変わった。
職業柄、いろんな分野の本を読まなきゃなんない。
好き嫌いなんか言ってれらんない。
ところがコレが又、ハマったらしい。
ドイツもコイツも面白いじゃあ〜りませんかっ!

偏食はあきまへんでえ〜。

ちょっと耳が痛い・・・。

  • 氷河期

 本屋に行くのも楽しみ。
でも、欲しい本は注文するっきゃない。
最近の本屋は、参考書と雑誌とマンガしか置かない。
気味が悪いという。
 店に入ると背筋がゾーッとするそうな。
つい後ずさりして引き揚げて来ちゃうらしい。
決して冷房の効きすぎじゃあない。
氷河期を感じてしまうらしい。
 喰えるモンがどんどん減ってゆく。
自分と同類が絶滅の危機に瀕している。
そこはかとない不安にかられるそうな・・・。
わかる。
 やっぱ、著者は期待を裏切らなかった。
電車の中で、うんうん頷いたり、ニヤついたり・・・。
はっ!
周りの眼が・・・。
知ったこっちゃないわいっ!