帰国のことⅡ

  • 30分ルール

 我が家には30分ルールってえのがある。
正確には嫁さんだけのルールだけど・・・。
何か・・・?
単純なルールである。

  1. ビールを飲む!
  2. ぴったし30分後にトイレに行く!
  3. 更に30分後にお代わりに行く!

 これは計ったように狂わない。
そりゃあ見事なモンである。
だから旅行中にビールを飲む時は逆算する。
もし、トイレに行ける見込みが立たない時は飲まない。
しょーがないんである。

 ここは空港である。
トイレなんぞ、売るほどある。
何も心配ない。
せいぜいフライトの時間から逆算すりゃ済む。
せいせいと飲ませてもらったぜ。
 30分後、フライト直前にトイレへ。
お約束通り。
あとは空の上でお代わりすりゃいい・・・。
定刻通り搭乗。
アテンダントもシートベルトを締めている。
あとは離陸を待つだけ・・・。
 ん・・・?
飛ばない・・・。
何故か、誘導路の途中で待機。
ウンともスンとも言わない。
10分・・・15分・・・20分経過・・・。
嫁さんの顔が引きつってきた。

「何やってんのよ!このヒコーキ!」

きっちり、お代わりの時間なんである・・・。

  • 猛牛

 パイロットのアナウンスが・・・。

「申し訳ありませんが、まだ管制塔から離陸許可が出ません」

嫁さん、青ざめてきた。

「構わねえから、行ってきちゃえよ・・・」

 嫁さん、動こうとした。
その時、こちら向きに座ってるアテンダントと目が合っちゃった。
猛牛のような眼つきで睨んでる。
嫁さんがジェスチャーでトイレを指差す。
猛牛は黙ってクビを横に振った・・・。

  • 戦闘機

 その時、窓の外に着陸機が見えた。
ん・・・?
ヤに小っちぇえ・・・。

「何だ!戦闘機じゃんか!」

「F15」か何かわかんないけど、確かに戦闘機だった。
続けて4〜5機着陸した。
 機内が一斉に騒がしくなった。

「何だ、あれは!」
「ふざけやがって!戦闘機の為に民間機が遅れるのかよ!」
「税金使ってるヤツが、税金納めてる我々より優先か!」
「こっちも忙しいのによお〜っ!」

 嫁さんの声が重々しく・・・。

「許せない・・・」