珍しくもない本の雑感68(3)
【ガセネッタ&シモネッタ】
- 同時通訳
「グローバリゼーション」
いつの間にか、市民権を得たような顔してるコトバである。
老いも若きも、フツーに使うようになった。
何だかわかんないけど、とりあえず言っとけみたいな・・・。
要するに「多国籍資本」の策略じゃん。
んで、何しか通訳希望者が増えたそうな。
でも、著者いわく。
この職業には向き不向きがある。
- 時間のストレスに耐えられる図太い神経系と頑丈な心臓
- 完璧主義じゃなく、次善で我慢する妥協の精神
- 機転といささかの勇気
- 失敗を恥じる自尊心と、落ち込まずに自分を励ます能力
っが必要なんだとか・・・。
- リサイクル
でも、そんなんはだんだん身につくとも言ってる。
一番大変なのは、自分を押し殺す事らしい。
通訳が意思を持っちゃまずい。
本来は自分の意思表示のための道具を一時的にヒトに貸す。
これがキツイという。
んならやめちゃえばいいのに・・。
それがやめられないらしい。
何故か?
それは「笑い」だそうな。
こんな「笑い」のネタの宝庫は他にない。
あんまり面白いから本を書いた。
通訳仲間だけで抱腹絶倒してたらもったいないっ!
これは是非とも”公共財”にしようっ!
仲間に言われたそうな。
「あ〜ら、米原さんって、最近はもっぱら通訳業の産業廃棄物をチョコチョコッとリサイクルして出版部門へ流し、甘い汁を吸っているっていう評判だわよ」
スルドイッ・・・。
- 「世界」
著者が職業を問われて答える。
「通訳です」
すると、返って来る反応の9割はこうだとか。
「じゃ、英語がご堪能なんですね・・・」
「何語の通訳ですか?」
んなんて訊くのは同業者っくらいだとか・・・。
日本人にとって「世界」とは、何はさておきアメリカ。
「外国語」とは、何はさておき英語。
「国際化」とは、何はさておきアメリカの意向に従うこと。
確かにそーなってる・・・。
「子どもは”国際人”にしないと・・・」
っと親は必死で子どもをアメリカン・スクールに入れる。
アメリカに留学させる。
確かに偏りすぎだとは思う。
けど、占領下だからねえ・・・。
ヒトは己の経験を一般化したがる動物。
ホンの2〜3人のガイジンとの接点で、印象が決まる。
するとその人種全体、更にその国そのものにまで派生する。
「ったく、あの国はど〜たらこ〜たら・・・」
ありがちな話である。
かつて、ロシア人を招待するプロジェクトがあったとか。
2週間ほどあちこち案内して、親日家にしようってな事だったらしい。
何人かに著者が会ったそうな。
異口同音だったらしい。
「ああ、最終日にあなたに会えて、本当に良かった。さもなきゃ日本と日本人を大嫌いになって帰国するところでしたよ」
穏やかじゃない。
いったいどうしたのか、尋ねたそうな。
「日本人って感情を極力抑えて皆ロボットみたいに同じ考えしか口にしない。何て薄気味悪い連中だろうって思ったんですよ」
いったいどんな日本人と接触してたのか・・・?
「ほとんど、外務省の人たちでしたがね・・・」
そりゃそーだ・・・。