珍しくもない本の雑感65(5)

 【魔女の1ダース】

  • 小咄(コバナシ)

 著者は笑いの取り方を知ってる。
ロシア流小咄も沢山出てくる。
更にシモネタも大好き。
通勤の電車の中で読んでて、思わずニヤっとしちゃう。
ふと我に返って、”あべっ”っと下を向く。
そんな小咄を少々・・・。

【アダムとイブ】
 エデンの園ってどこ?アダムとイブって何人(ナニジン)?
ある文化人類学の国際会議で、こんな激論が交わされた。
(イギリスの学者) 「イギリスは紳士の国だ。林檎が1つしかないとき、何はさておき、まずレディーにお譲りするとは、これぞジェントルマンシップ」
(フランスの学者) 「たかが林檎1個で男に身体をまかせる女なんてフランス人ぐらいしかいないはずだ」
ソ連の学者) 「ろくに着るものもなく裸同然の暮らしをしていながら、食い物ときたら林檎1個ほどしかないのに、そこを楽園と信じ込まされていたなんて、ソビエト連邦の市民以外に考えられますか?」
反論はなかったそうな。

ん〜〜ん、しぶい・・・。

  • ライト系

 もっと軽いタッチの秀作も沢山あった。

【京都のベトナム人】
 ベトナム人女性の美しさは定評がある。
とびきりの美女30人以上が来日したことがある。
ベトナム民族歌舞団の面々だった。
 ところで、ベトナム語には「類冠詞」っというのがある。
樹木には必ず「カイ」、鳥には必ず「チム」という「冠詞」がつく。
雀は「チム・セエ」、鶯は「チム・ワイン」、鳩は「チム・ポコ」という。
 休演日、美女一行は京都見物に行った。
平安神宮前の広場に行った時、鳩の群れが舞い降りた。
美女たちは一斉に歓声をあげた。
「オ〜ッ、チム・ポコ、チム・ポコ、チム・ポコ・・・」

【通訳泣かせ】
 駄洒落が出てくると通訳はお手上げである。
特に同時通訳では分かり切ったことだと思いたいのだが、残念ながら、
スウェーデン食わぬはオランダの恥ってなもんだ、ガハハハ」
っとか、
毛沢東思想(モータクトーシソー)ってのは、ありゃ中身をとって見りゃあモーソーだね」
なんてことを発言して、悦に入る人は後を絶たない。
はっきり申し上げて、天敵である。

【日ソ防衛問題シンポジウム】
 冷戦関係が少しずつ解凍し始めた頃で、双方コチコチの会議だった。
そんな時は通訳だって目いっぱい緊張する。
ソ連側の団長が団員の紹介を始めた。
ある将軍の名前が出て、著者はブースの中で通訳不能に陥った。
社会主義労働英雄、陸軍大将、シリミエタ同士・・・」
日本側の錚々たる主席者の面々も笑いを噛み殺して身悶えして見えたとか。

日本大使館
 戦後、日本大使館がモスクワに戻ったのは1957年のこと。
カラシニコフ横町のショボい建物に落ち着いた。
GNP世界第2位の国力とのイメージギャップが甚だしくなってきた。
さすがのソ連政府からも別の物件のお勧めがあった。
イギリス大使館の並びの最高のロケーションだったそうな。
でも、日本側は候補地の番地を知るなり、即座に断わってしまったとか。
「モスクワ市ヤキマンコ通り○○番地・・・」

アエロフロート
 サービスの悪さと、時刻表の当てにならないことで定評のある「アエロフロート
あまりにも時刻表通りに飛ばないので、ついに怒り心頭に発した男が、
「どうせ遅れてばかりいるのなら、時刻表なんかつくるな!」
っと息巻いたところ。
「お客さん、時刻表があるからこそ、遅れもあるのです」
っと職員にたしなめられた。

これは、1年前の「ウズベキスタン航空」を思い出した。
そもそもサービスなんて概念はない。
確かにそう思った。
笑えないけどね・・・。