珍しくもない本の雑感55(5)
【辺境・近境】
- 抗体
旅先での食あたりはかなり辛い。
著者は「嘔吐」と「下痢」の連続だったそうだ。
もう、寝てるっきゃない。
抗生物質を飲んでも芳しくなかった。
ただ吐いて、下痢って、横になってる。
これが断続的に6時間ほど続く。
うんざりしたらしい。
このまま死んじゃうんじゃないか・・・。
”「海老フリャア」や「マカロニ」なんかで死にたくないなあ・・・。”
ま、時間が経てば回復するんである。
こんな事も何度か繰り返せば慣れる。
やがて抗体が出来て、ジモティと同化出来るかも。
でも、抗体が出来る前に帰っちゃうんだよなあ・・・。
- 試練
メキシコは課題の1つである。
我が家の旅行候補先リストに入ってる。
他にも南米、インド、チュニジア、モロッコ、南ア・・・。
怪しいところが沢山残ってる。
嫁さんはタイで1度、エジプトで1度やられた。
だから、警戒心満々である。
確かにエジプトでやられた時は死ぬかと思った。
添乗員以外のツアーメンバー全員が倒れた。
すごい確率である。
辛いのは動かなきゃいけない事。
著者みたいにホテルで寝てるって事が出来ない。
パックツアーはスケジュールに追われる。
落ち着かないハラで、トイレを探しながら移動する。
もう、試練以外のナニモノでもない・・・。
- 疲弊
これがメキシコだ。
うるさいだけのメキシコ歌謡曲を受入れる。
8月の午後のとめどもない暑さを受け入れる。
ロシアン・ルーレット的な嘔吐と下痢を受け入れる。
これらは著者を疲弊させ、うんざりさせた。
こういう、受容のプロセスが旅行の本質かも・・・。
っと言ってる。
きっと、疲弊なんか東京にもある。
何故、わざわざメキシコくんだりまで疲弊を求めて・・・?
著者は言う。
「その疲弊はメキシコでしか手に入らない種類の疲弊だから。ここに来て、ここの空気を吸って、ここの土地を踏まないことには手に入れることが出来ない疲弊だから。
ドイツにはドイツの疲弊があるし、インドにはインドの疲弊がある」
確かに・・・。
- ドライブ
旅の後半はクルマに乗った。
「三菱パジェロ」だったそうな。
写真家の「村松映三」と「オアハカ」で合流した。
「松村さん」はニュージャージーから運転して来たそうだ。
「パジェロ」はバスとは雲泥の差。
長時間移動でも桁外れに楽になった。
でも、ジモティの誰もが同じ事を言う。
「日が暮れたら絶対に運転してはいけませんよ。日の暮れる前に何があっても泊まるところを見つけなさい」
ドラキュラならぬ、強盗が頻繁に出るらしい。
行方不明になるヒトが後を絶たないそうだ。
クルマを止められ、金品を奪われ、殺される。
まず、死体は見つからないそうだ。
- 非日常
この旅は間違いなく「非日常」だべさ。
「いくぶん非日常的・・・」っとか言うレベルじゃない。
なかなか経験できるこっちゃない。
フリーツアーならではのスリルも堪能した。
ジモティの中産階級も近寄らないロコバスに乗った。
「ロシアン・ルーレット」の”当たり”も経験した。
銃撃戦と隣り合わせの緊張感も味わった。
インディオの写真を撮って石を投げられたりもした。
カネをねだる子どもに取り囲まれた。
市場でキレイな女の子から民芸品を値切って買った。
幾つものインディオの村を訪れた。
政府の近代化政策で、インディオの生活も変わりつつある。
仕事を求めて都会に出て行く。
昔ながらの共同体は無くなっちゃうんだべな。
- 響き
故郷から都会に出たインディオの青年の話。
青年は村で暮らしてる時は1度も飢えたことがなかった。
貧乏な村だったけど、飢えというものを知らなかった。
何故か?
村ではお腹が減ったら誰かに挨拶すれば良かった。
「こんにちは」
すると相手は、その声を聞いてわかってくれた。
「ああ、ハラが減ってるようだな。ウチに来てご飯をお食べ・・・」
村では、言葉の響きで相手の身体の具合がどうかまでわかってしまった。
そんな響き合う心の中で彼は育った。
都会に出て間もない頃、青年はお腹が減ると挨拶した。
「こんにちは」
相手は「こんにちは」と挨拶を返すだけ・・・。
彼は空腹で声が出なくなるまで挨拶しまくった。
でも、誰も彼にご飯を喰わせてくれなかった。
そしてようやく彼は認識した。
ここでは誰も”言葉の響き”というものを理解しないのだと・・・。
ホンマかいな・・・。
続きは又・・・。