まおの食欲の雑感91

  • 品評会

 「納骨」は15分っくらいで終わった。
さて、品評会の始まりである。
「ちょっと、このまんまじゃ寂しいんじゃない?」
「墓石はともかく、周りがお粗末過ぎるよ」
じ〜じが言い訳攻勢に出た。
「石屋には、ちゃんと全体を高くしてって言ったんだけどなあ・・・」
「おかしいよねえ。伝わってなかったのかしらねえ・・・」
ば〜ばも助け舟を出す。
 沼津のば〜ばが追い討ちをかける。
「この線香立てはダメだわね。周りが汚れてしょうがないよ」
「線香の燃えカスが詰まっちゃうのよね」
「屋根付きの横にして置ける線香入れの方ががいいわよ」
 みんなでご近所の墓の見学が始まった。
「あれがいいじゃない」
「これはイマイチだわね」
何となく、意見が出尽くしたところで嫁さんが電話する。
お寺の隣にある石屋の工場である。

  • 直談判

 「今、『納骨』が終わったんで、ちょっと来てくれんかな?」
石屋はすぐ来た。
営業の「杉Y」と名乗っていた。
息子夫婦である事を説明して、交渉に入った。
 ここに在住ではないので、親を介してお願いした。
墓石そのものは良かったが、周りがイメージ通りでは無かった。
話に行き違いがあったようだ。
この際なので、イメージ 通りに造っておきたい。
ってな内容である。
 最初は営業らしく謝ってた。
「行き違いがあったようで済みません」
「話は良くわかりましたので、ちょっとお時間下さい」
「カロートも大きくして全体を造り直します」
っと殊勝であった。
 でも、話してる内にだんだんわかってきた。
このヒトは相当忘れるクセがありそうだ。
多分、じ〜じはちゃんと注文を伝えたんだべ。
んで、15万円っくらいの見積もりが出たんだ。
ところが注文の半分っくらいをウチ忘れた。
結果、請求書が12万円。
こんなとこだべ・・・?

  • 追加注文

 「ところで・・・」
追加の交渉を始めた。
「線香立てを屋根付き横置きに変えたいんだけど・・・」
「へ?]
「これは周りが汚れるし・・・」
「あ〜、確かにそうですねえ。どのようにでも出来ますよ」
 じ〜じ、ば〜ばが勢いづいていろいろ言い始めた。
「あっちの墓みたいには出来ないの?」
花立てと線香入れがセットになったヤツを指差してる。
「この型だと、せっかくの墓標の文字が見え難くなっちゃいますよ」
嫁さんもひと言。
「花立てはこのままの方がすっきりしてて良くない?」
ここですったもんだ始まった。
収拾がつかない。
 結局、我が家が一番いいと思う型に落ち着けた。
そもそも、我が家のことなのである。
嫁さんが鋭いツッコミ。
「お支払はどうしましょう?」
「う〜ん。ホントは上乗せ5万円欲しいけど・・・3万円下さい」
「先にもらった12万円の請求はどうします?」
「全部、終わってからでいいです」
嫁さんのお手柄である。
結局、元の15万円じゃんか・・・。

  • 精進落とし

 5人で遅めの昼メシ。
精進落としだ。
じ〜じ推奨の寿司屋があるという。
じゃ、ってんでそこに向かう。
「徳兵衛」とかいう店だった。
何と、寿司がいごいてる・・・。
・・・ま、いっか・・・。
 14:00過ぎなのに満席だった。
やっと順番が来て、6人がけの席に案内された。
年寄りは妙にテンションが高い。
「味噌汁はどうする?」
「まずはお茶を入れるんだろ?」
「ガリも取り分けるか」
 少々、シラケ気味でビールを2つ注文。
ビールとお茶で「献杯
「まおの為に時間を割いてくれて有難う・・・」
んな〜んて、ヒトの話なんか聞いちゃいない。
たちまち戦場である。
 「それそれっ!それ取って!」
「あ〜っ、タコワサビが来たよっ!」
「アナゴとウナギを握ってもらってくれっ!」
「アニキたちは何を食べるのっ?」
 何で、そんなに殺気立ってんだべ?
嫁さんと2人でつまみを喰いながらしみじみしてた。
さすが地元、いいつまみもある。
「生シラス」「桜えびのお造り」・・・。
こたえらんないっ!
でも、ビールが鼻に沁みる・・・。

  • 帰還

 夕方、沼津のば〜ばを送って行った。
基本的に沼津のば〜ばは独り暮らしである。
田舎なので、近所付き合いも友だちもいっぱいいる。
以前はカギなんか掛けないところだった。
防犯面とかは心配ない。
人類、みな兄弟の世界がある。
 でも、寝る時はやっぱ独りである。
これは腹に沁みて寂しいんだと思う。
よく、我が家に泊まると熟睡出来ると言ってた。
いつもお坊ちゃまが添い寝してたし・・・。
・・・・・・・。
 沼津の家に着くとば〜ばが言った。
「あ〜、今日は楽しかった!有難う」
嫁さんが怪訝そう・・・。
「楽しかったの?私はホンットに悲しかった・・・」
「・・・・・・」
会話がかみ合ってないべや・・・。