和食屋の雑感Ⅶ

  • 週末

 週末が待ち遠しくなった。
いい事なんだか、どうだか・・・。
疲れ気味なんだべか?
でも、テニスコートに行けば元気である。
1週間のウサ晴らしだ。
 っとは言え、今は我慢の時。
せっかく正しいストロークを覚えかけてる。
以前のように力任せに引っ叩いちゃいけない。
元の木阿弥になっちゃう。
安定した球が打てるようになるまで我慢である。
 今日は珍しいメンツだった。
我がキリギリス夫婦と上級者の「S々木夫婦」だけだった。
やっぱこの夫婦は巧い。
球がえりゃあ安定している。
その巧さがわかるようになったって事は我々もちったあ上達したんだべ。
 「A賀コーチ」はいつもの手を使う。
前半、明るい内にストロークの基礎練習。
後半はナイターでボレーを交えた実践練習である。
「S々木夫婦」はちゃんと付き合ってくれる。
老夫婦には有難い。

  • 難題

 嫁さんが困った事を言い出した。
テニスの後は当然、外食。
「今日は油はダメ!和食が食べたい身体なのよね」
勝ち誇ったように言う。
油がダメ・・・?
大好きな中華もイタメシも封印である。
 そのくせ、今日は候補を絞ってない。
まったくの気分だけである。
さて、困った。
「ま、とりあえず出掛けようかね」
当ても無く歩き出した。
 我がマンションを出て50m。
「『N々菜』をのぞいてみようか?」
「多分、満席だろうけど・・・」
ダメモトでのぞいてみたら誰もいない。
「えっ!うそ!」
「どうぞ、テーブル席は予約ですけど後は大丈夫ですよ」
「・・・」
何だかフア〜ン。

  • 当たり

 開店してもう1年半。
コンセプトは大当たりだったべ。
スローフード」を看板にしての「にっぽん料理」
地野菜をじっくりと炊きあげる。
地物の魚を丁寧に調理する。
刺身よし、煮てよし、焼いてよし。
 開店して間もない頃に行って結構感動モノだった。
決して安くは無かったけどなかなかだった。
その後、クチコミであっという間に有名になった。
いつ行っても満席状態が続く。
嫁さんは昼の部でちょくちょく行ってたらしい。
昼は予約のみ。
 でも、数ヶ月前に嫁さんがぶちぶち・・・。
「何だか味が変わったわ。仕事が雑になったみたい・・・」
お友達もみんな同意見だったそうな。
手が回らなくなっちゃったかな・・・。
以来、1年半ご無沙汰だった。

  • お任せ

 前に来た時もお任せした。
確か3,500円と4,800円・・・。
あれっ?4,400円と6,300円になってる。
2〜3割のアップじゃん。
昼のお任せも3,150円になった。
前は2,500円だったべや。
 そう言う事が一切気にならないヒトは幸せである。
羨ましい限り。
一度でいいから値段の書いてないメニューでオーダーして・・・。
出来っこないのである。
値段の書いてないメニューなんて不安で仕方がないべな。
どーしょーもない貧乏性である。
 明らかに値上がり。
かと言って単品で頼むのもあずましくな〜い。
じっくり炊き上げる料理ばかりだ。
当然、出て来るまでに時間がかかる。
頼むタイミングが難しい。
こう言うとこは段取りをお任せしないと疲れっちゃう。
 嫁さんに任せた。
「4,400円の方で2人お願いします」
おっ!珍しい。
それって値段を気にしたのかな・・・?
「上のコースだとお腹一杯になっちゃうから・・・」
やっぱし・・・。

  • エベス

 当店は飲み物にも凝っている。
ビールはエベスのプレミアムビールである。
ちょと重たい。
基本的に料理の邪魔しないビールの方がいいのに・・・。
回し者じゃないけどアサヒスーパードリャアはイケると思うんだけど・・・。
 ま、いっか。
最初のヒトクチは済ませて来たし・・・。
嫁さんのチエで家を出る前に一杯練習して来た。
これで後は鬼が出ようが蛇が出ようが・・・。
しっかりしてるのである。
 ここのシェフは「伊楚辺刺激」さん。
ナンと29歳だとか。
大したモンである。
「ご主人は2回目ですね。前も同じ席でしたね」
大したモンである。
自分で商売するってこういう事なんだよなあ・・・。
うつろじゃ出来ないのである。
 シェフは最近、ワインにハマッてるそうだ。
ブルゴーニュのナンたらカンたらとか言ってた。
3万円って聞くと「安いっ」って思っちゃうとか・・・。
うつろじゃ無いから大丈夫だろうけど、アブナイ・・・。
値上げの原因はそれじゃないべな・・・。

  • 復活

 相変わらず食器道楽でもある。
でも、その方がいいらしい。
高いから扱いが丁寧になってまず割らないそうだ。
嫁さんは箸を誉めた。
「和食の味は器で半分決まっちゃうわよね」
シェフの嬉しそうなこと・・・。

 まずは【青菜と根菜の煮浸し】
やっぱ、美味かった。
ちゃんと復活してんじゃん。
味の濃い地野菜がナンとも言えない。
但し、ちょっとだけ塩っ気が強くなった。
汁を飲もうかどうしようか一瞬考えたくらいである。

 嫁さんがささやく。
「これが一時はもっと明らかにしょっぱかったのよね」
「これでもちょっとしょっぱ系だけどね」
「やっぱこの辺りは漁師の味なんじゃない?だんだん濃くなっちゃうのよ」
「もうちょっと薄味でもいいかもね・・・」
「ぜんぜん良くなったわよ。これなら美味しいじゃない」
ま、テニスの後でもある。
嫁さんが汁を飲みたがるくらいだからまずまずなんだべ。

 【金目と湯葉の変わりかぶら蒸し】
イケてた。
上品で素材の味がきちんとわかる。
但し、やっぱし気持ちだけしょっぱい。

 【湯葉の椀物】
イケます。美味い。
これで如何にいいダシ汁を作ってるか良くわかる。

 【お造り】
本ワサビと粗塩が乗った黒系の皿が出された。
次いで、シェフが1つ1つ刺身を乗せてくれる。
いずれも2切れずつ上品に乗せる。
なかなか凝った演出である。
美味さが3倍増っくらいになるべや。
 まずは石鯛。
「粗塩が美味いって言うお客さんが多いです」
無理強いしないとこが又いい。
コリコリした食感が懐かしい。
 次にシメサバ。
「これは醤油でしょうね」
地物のサバはテキトウに脂が乗りきってない。
シメるとちょっとパサついた雰囲気になる。
これが美味いんだよなあ・・・。
嫁さんも地物なら大丈夫。
北海道ではシメサバ喰う度にのた打ち回ってた。
身土不二」か・・・。
 最後は金目である。
「これは両方ともいらっしゃいますね」
素直に塩と醤油で1切れずつ喰ってみた。
確かに両方ともイケた。
嫁さん、大満足である。
やっぱ、料理は付加価値だよなあ・・・。

 【焼き魚】
大磯で揚がった大カマスだった。
嫁さんが「あっ、サンマだ!」とボケをかました。
そう、カマスのである。
これは脂ノリノリだった。
そして絶妙の塩加減だった。
こういうのってあるんだよなあ・・・。
何かの拍子でこれ以上無いバランスがとれた状態。
こんなに美味いカマスは喰った事がない。

 【だし巻き卵】
これは意外な一品だった。
嫁さんはきゃーきゃー言ってる。
好きなのである。
でも、美味かった。
 前回も思ったけど当店は揚げ物が無い。
サカナ以外で何か1つ動物性タンパクが欲しいとこなんだべ。
前回はすき焼きが出てたような気がする。
そんなに肉を喰いたいとは思わんのでちょうど良かったかも・・・。

 【地野菜炊き合わせ】
本領発揮である。
これはホンットに美味い。
ニンジン、ゴボウ、カブなどなど・・・。
惜しむべくはホンのちょっとしょっぱい。
ホンの少しだと思うんだけど・・・。
好みの問題かなあ・・・。
「葉モノは冷めると塩が強く感じますから先に召し上がって下さい」
やっぱ塩っ気は気にしてんだ・・・。

 【炊きたてご飯】【じゃこ山椒】【塩昆布】
土鍋で炊いたご飯である。
キラキラのご飯は見るからに美味そう。
いや、実際美味い。
こんなメシもなかなかお目にかかれないかも・・・。
自家製の【じゃこ】【昆布】もイケてる。
お土産も用意してるそうだ。

 【赤だし】【浅漬け】
これも隠れたこだわりがあった。
味噌を溶くタイミングをいろいろ変えているんだとか。
今回はかなり味噌の香りが強く出ている。
それが狙いだったと嬉しそうだった。
 実は嫁さんに評価されてなかったけど浅漬けは美味かった。
これは絶妙の塩加減だった。
全体にそんなに悪くない加減だった。
最初の頃の塩加減に戻りつつあるんじゃないべか?

  • 総評

 最後にデザートのリンゴが出た。
これはまるでリンゴみたいなリンゴだった。
ま、フツーのリンゴである。
そして茶釜のお湯で入れてくれたお茶を飲んでご馳走様。
 コンセプトはいいと思う。
スローフードって言葉はレトロっぽくなってきたけど・・・。
今流行の「LOHAS」にも合致してる。
地野菜を美味しく食べられるなんて贅沢である。
 但し、値段はちょっと・・・。
2人で13,000円弱だった。
今回はビール2杯とグラスワイン1杯飲んだって事もあるけど・・・。
ちょいちょいメシ喰いに行く値段じゃないべな。
出来れば1万円を切りたい・・・。
え〜い、この貧乏人!
ちったあ、嫁さんを見習ったらどうじゃい?