珍しくも無い本の雑感16

  • デジャウ゛

またまた超売れっ子の本を読んでしまった。
村上春樹」著。
国境の南、太陽の西」である。
ヘンなタイトルだなあ・・・とか思いながら読み出した。
ま、多分このヒトは外さないだろう・・・みたいな。
何故かこの作品の「僕」は1951年1月4日生まれ。
著者の2歳年下の設定にどんな意味があるのかは良く分からない。
父親は大手証券会社勤務。
転勤に伴って幾つか社宅を転々とする。
いつもそれなりの階級の集まる環境に置かれていた。
成長する過程で知り合う女性も同級生も皆それなり・・・。
小学校時代の友人、足の不自由な「島本さん」
高校時代の恋人「イズミ」
2人ともフツーにありがちなパターンで別れる。
「僕」は東京の大学に出て小さな教科書出版社に勤める。
「有紀子」と運命的に出会い、結婚、義父の支援で起業。
六本木でジャズ演奏の店を2軒経営する。
嫁さんと2人の娘と経済的にも精神的にも安定した生活。
ふとしたキッカケで湧き上がる2人の女性の想い出・・・。
・・・。
何だろう。
何か覚えがあるなあ・・・。
記憶のどこかにストーリーが蘇って来る様な気がする。
嫁さんにこの本を読んだ覚えがあるか、聞いてみた。
知らない、と言う。
デジャウ゛かな・・・。

  • ローテーション

最近の本の読み方に規則性が出来てきた。
もともと読みたいのは今となっては古典みたいな作家。
何だか重みが違うと言うか・・・。
本を読んだあ〜って気がするんだよなあ・・・。
この作品の「僕」も新しい小説はほとんど読まない。
何故なら

「たぶん、がっかりするのが嫌だからだろうね。つまらない本を読むと、時間を無駄に費やしてしまったような気がするんだ。そしてすごくがっかりする。昔はそうじゃなかった。時間はいっぱいあったし、つまらないものを読んだなと思っても、そこから何かしらは得るものがあったような気がする。それなりにね。でも今は違う。ただ単に時間を損したと思うだけだよ。年をとったということかもしれない」

・・・だそうだ。
何と無く分かる気がする。
でも偏るのは良くないとも思っている。
自ずとローテーションが出来てきた。
「新しい小説」「村上春樹」「ノージャンルの最新の本」「古い小説」
こんな感じのローテーションになってる。
んな訳で「村上春樹」は「古い小説」に近い存在になってる。
そしてまず裏切られない。
幸いにして沢山作品を出してくれてる。
しばらくこのローテーションは崩れそうも無い。

  • 余所の世界

この本が刊行されたのが1992年だそうだ。
もう今から13年も前だ。
著者が42〜3歳の頃だったのかな・・・。
いつからか著者は余所の世界に心を奪われている気がする。
何だか不思議な余所の世界。
井戸の底とか、壁の向こうとか・・・。
不可解と言えば不可解なんだけどこれが又良い。
超常的故の面白さが加わってますますハマる。
「井戸」と「羊男」と「地中海」は何だかアタマに焼き付いちゃったなあ・・・。

  • 「僕」

「僕」はいつでもやったらカッコイイ。
筋骨隆々で、インテリで、スカしてて、料理が得意で・・・。
今回の「僕」もカッコイイ。
今回の「僕」は若手経営者。
アルマジロだか何だかのブランド物スーツを着て店を仕切る。
青山墓地が見えるマンションに住んで、箱根に別荘も持ってる。
毎朝、「BMW320」で娘を幼稚園に送って行く。
その後、プールとジムで身体を鍛えてから事務所に出勤。
小学校時代にココロに焼きついた彼女をずっと追っている。
嫁さんも含めて、その後に出会った数多くの女性を傷つけても・・・。
多分に著者が自身を「僕」にダブらせているんだと思う。
これが如何にもこのヒトの小説らしい面白さだ。
なかなかこんなに理路整然としたヒトはいないもの・・・。
ライフスタイルがカッコ良過ぎるし、話す言葉がふるってるし・・・。
実在したらとっても勝ち目が無い。
おっ!そうか!
ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ・・・。
唯一「僕」に勝てる事があったぜ!
我が家のクルマは「BMW325」だ!