珍しくもない本の雑感44

 何のこっちゃ?
フツーは知らんわな・・・。
本屋と花屋が結託して普及させようとしてるらしい。
バレンタインデーやホワイトデーのたぐいである。
菓子屋にばっかりいい思いさせてたまるかってんだな・・・きっと・・・。
また、毛唐の習慣を引っ張り込んで来たらしい。
 スペインはカタロニア地方。
この日に女性が男性に本を贈る。
すると男性はお返しに真紅のバラを贈る。
こんな習慣があったんだそうだ。
まあ良く見つけ出して来るモンである。
本屋と花屋にとってはおあつらえ向きじゃんか・・・。

  • スタンダード

 1つ難点がある。
花ならともかく、ヒトに本を贈るのは難しい・・・。
特にこの世の中である。
何も考えないうつろなヒトビトに何の本を贈るか?
反応が眼に浮かぶ。
「うざい〜ぃ!」
「厚すぎぃ〜!」
「字が多い〜ぃ!」
 ウチの事業所の若い衆もおんなじ・・・。
”ヤならよせっ!”
っと言いたいけど、百歩譲って彼らが読めそうな本を探す。
なるべく薄くて、字がでかくて、絵が多い・・・。
内容的には吹けば飛ぶようなモンである。
でも、そういう本が結構売れてる。
ホントはスタンダードがいいと思うんだけどなあ・・・。
 最近の出版業界の営業活動は涙ぐましい。
ペラッペラッの本を売る為にはしょうがないんだべな。
でも、日本には古くてもいい作品がゴマンとある。
こういう作品に手をつけないなんてあまりにもったいないべや。
 今、また「夏目漱石」を読んでる。
なるべく幅広くいろんな本を読もうと心掛けてはいる。
結構、自分なりに苦行を強いたりもする。
でも、苦行に疲れて癒しを求めて戻るのはこの世界・・・。
やっぱ、いいモンはいいっ!

  • 喪中

 折りしもお坊ちゃまの喪中である。
今、読む作品はやっぱ「坊っちゃん」だしょ。
何回も読んでるんだけど・・・。
何回読んでも面白い。
一服の清涼剤ってとこですか・・・。
 何が面白いって、とにかくわかりやすい。
ひたすら直球勝負である。
途方もなく純粋な正義感。
そんなバナナ!
って言うのが小説の面白さだと思い知らされる。
 言い回しが何とも言えない。
明治の江戸っ子独特のべらんめえ口調である。
加えて漱石一流のハスに構えたモノの見方。
読んでると気分が爽快になってくる。
危うく電車の中でニヤついてしまいそうになる。
あべっ!
”ちっくしょ〜、こんな言い方してみてえなあ・・・”

  • 発見

 さすがに100年前に書かれた作品である。
「語注」「解説」「鑑賞」「年譜」で50ページ近く占めている。
至れり尽くせり・・・。
ここまでしないと現代人に受入れ難いのかな・・・。
 結構、新たな発見もあった。
「後生畏るべし」とかいう「論語」からの引用がある。
っかと思えば、「ちゃんちゃん」みたいな蔑称も登場する。
ロシアの司令官クロポトキン」も登場する。
幼少のころの記憶がよみがえる。
実家のじ〜じがヘンな歌を歌ってた覚えがある。
♪ロ〜シ〜ヤッ、野蛮国っ、クロポトキンッ、キンタ〜・・・♪
そりゃ、現代人は知らんわな・・・。
この辺りになると、「語注」がないと厳しいかも・・・。

  • 「和魂洋才」

 漱石はロンドン留学で身体を壊す。
明治の知識人の宿命だったらしいけど・・・。
「洋才」を身に帯びれば、「和魂」が傷つく。
どうしょうもなく日本人なんだべな。
ま、気持ちは良くわかる。
 漱石自身が「神経衰弱と狂気」とまで言ってる。

倫敦に住み暮らしたる2年は尤も不愉快の2年なり。余は英国紳士の間にあって群狼に伍する1匹のむく犬の如く、あわれなる生活を営みたり。

この反動からの幾つかのリハビリ的作品が書かれる。
これがめっちゃ面白いところがすごい。
 晩年には有名な「則天去私」を口にする。
でも、終生決して健康とは言えない身体だった。
この時代の作家は健康じゃ務まらなかったらしい・・・。
虎は死して皮を残す、じゃないけど命がけだったようだ。
時代は変わった。
今は筋トレして泳いでチョー健康な作家が一番売れる作品を書く。
ま、それもいっか・・・。