珍しくもない本の雑感81
【雁】
- 偏読
いつものパターンである。
一度、読むとその作者を続けて読みたくなる。
もちろん、面白かった作者に限られる。
”他の作品だとどんな表現になってるべ?”
今回もこのパターンにハマった。
次のターゲットは「雁」
「森鴎外」の長編小説の内の1つと位置づけられてるそうな。
長編っとは言ってもそんなに長くない。
”中距離”って感じだべか・・・。
当ったり前だけど、「夏目漱石」と同じ明治の時代背景。
「三四郎」とかとイメージが重なってくる。
書生の「僕」があれこれ考えながら話が進む。
ゆったりとした時間の流れ。
”やっぱ、いいなあ〜・・・。”
- 詞(コトバ)
詞(コトバ)の扱いの丁寧さには舌を巻く。
時代が違うだけじゃあ済まない気がする。
「さあ、ずっとお這入なさいよ。檀那はさばけた方だから、遠慮なんぞなさらないが好い」クツワムシの鳴くような調子でこう云うのは、世話をしてくれた、例の婆あさんの声である。
何だか、情景が目に浮かぶべや・・・。
女はどんな正直な女でも、その時心に持っている事を隠して、外の事を言うのを、男程苦にしはしない。そしてそう云う場合に詞数が多くなるのは、女としては余程正直なのだと云っても好いかも知れない。
年輪が言わせる詞(コトバ)だんべか・・・?
教育家は妄想を起こさせぬために青年に床に入ってから寐(ネ)附かずにいるな、目が覚めてから起きずにいるなと戒める。
メタボオヤジでも同じなんだけど・・・。
- 不条理
この作品にも「山椒大夫」「高瀬舟」との共通点を見つけた。
一種のやり切れなさっつーか・・・。
やっぱ、世の中っつーのはそんなモンだって・・・。
真面目にコツコツ働けばきっといい事があるとは限らない。
格差は厳然とある。
カネはカネを生むし、所詮ビンボーはビンボー。
ビンボー家に生まれた「お玉」
飛びっきりの美人なのに、妾にならなきゃならない・・・。
相手は高利貸しでボロ儲けした成金。
自分の女房・子どもにゃ一文たりともカネ使わせない。
んで、自分は女を囲うんである。
ま、そんなモンだと・・・。
更にやり切れないのは上野の池の「雁」
「僕」の友人が、逃がしてやろうと石を投げる。
それがたまたま「雁」に当たってしまう。
「僕」は友人と3人で「雁」を喰っちゃう・・・。
んで、作品のタイトルが「雁」
”何じゃ、そりゃっ!”