タリン・フリータイムの雑感

  • 作戦会議

 半日フリータイムのパターンってえのは良くある。
更に、晩メシも勝手にどうぞっていうパターンも多い。
でも、今回は尻尾が決まってる。
夕方、ホテルに集合して「フォークロアショー」の晩メシ。
放棄して勝手に喰う手もあるんだけど、美味い店のアテもない。
 とりあえず、昼メシの後も店に残ってのんびりと作戦会議。
別にガツガツ出掛けなくったって文句あんめえ・・・みたいな。
この作戦会議はとっても重要である。
最低でも30分はかける。
 会議の内容はどうでもいい。
「どっか行きたい?」
「ショッピングセンターで靴探さなきゃ!」
「今から6時間、ショッピングセンターかい?」
「最後にホテルに帰る前でいいけど・・・」
「地下のスーパーも行かなきゃ。そこで土産を買っちゃわないと」
しょーもない会議だ。
 長年のデータの蓄積がある。
嫁さんはビールを飲んで30分くらいすると急激に盛り上がってくる。
ビール飲んですぐにトイレに行っても何も役に立たない。
確かにいつも必ず計ったように30分後である。
 去年のイギリスの「ストアーヘッド」もそうだった。
トンでもなくでかい池を擁した庭園で1周するのに1時間かかる。
昼メシの後、ちゃんとトイレに行ってから歩き出した。
歩き始めて30分、ちょうど池の反対側まで行って盛り上がってしまった。
そこからが大変だった。
コバシリのかき揚げで通常30分の行程を15分くらいで戻った。
すれ違うヒトビトが不思議そうな顔してた。
やっとトイレに着いた時は全身汗みどろである。
大事な学習機能である。
 そうこうしてる内に30分くらい経ったのでトイレへ。
徒歩観光の前の絞り出しを完了。
よっしゃ、これで今回は完璧だ。

  • 城壁内

 タリン旧市街はきちんと城壁に囲まれている。
当時の雰囲気がそのまま閉じ込められたような街並みである。
とりあえず、城壁に沿って隈なく歩いてみる事になった。
いざ、出発。
いきなり「A田さん夫妻」が観光ミニ機関車に乗ってのが見えた。
お〜い、歩け〜。
 城壁に沿って絵や絵葉書を並べてるヒトが沢山いた。
絵はイマイチ趣味に合わんかったけど・・・。
絵葉書を売ってる姉ちゃんはみんな美人だった。
美人の上に笑顔がとっても可愛い。
あれでニコッて絵葉書差し出されたら条件反射で買っちゃうべな?
「Sガピョン」なんて沢山買ってんじゃないかな・・・?
みんな同じ制服だし、なかなか巧い商売だ。
 いい街並みである。
教会や中世の建物の合間にホテルやレストランがある。
街並みに見事に溶け込んでいてお洒落だ。
1軒だけ妙に浮き上がってる店があった。
中華料理屋「北京」である。
周囲にまったく不釣合いな大きな黄色いカンバンを挙げてる。
もうちょっと何とかなんないの・・・?

  • 悪夢

 気の所為か、嫁さんの口数が減ったような気がした。
気の所為じゃなかった。
しっかりと盛り上がってた。
せっかくの作戦会議は役に立ってなかった。
 去年の悪夢の再来である。
もう観光どころじゃない。
が、結構慣れっこになってる自分がいた。
去年と条件が違うのはトイレの在り処がわからないこと。
 地図を広げてみる。
何と言っても無難なのはホテルだ。
出来れば、カフェなんかがあってヒトの出入が多いとこがいい。
城壁を離れてホテルを目指す。
あった!
が、カフェらしきモンはない。
小さな出入口しかない。
そこにスタッフが立っててめっちゃ入り難い。
 「もうちょっとイケるか?」
嫁さんも窮状に慣れて来てると見えて大丈夫だという。
旧市街の北の方に「3人姉妹」という見どころがある。
その傍に「スリー・シスターズ」というホテルが・・・。
安直な名前だけど、観光客受けしそうである。
 行ってみると、ここにもカフェなんかなかった。
でも、スタッフが立ってないだけ入り易い。
中に入ると小さなフロントにお姉さんがいた。
「ホェアイズ・ザ・ウォッシュルーム?」
お姉さん、奥の方を手で示す。
奥の部屋に飛び込んだ。
そこは高級ムードのレストランだった。
黒服のスタッフが怪訝な顔で何か言ってる。
嫁さんはもう蒼白な顔で叫ぶ。
「ウォッシュルーム・プリーズ!」
スタッフがここには無い。トイレは地下だ、と言ってるように聞こえた。
 あとは嗅覚である。
階段を探して転がるように降りて行く。
途中でスタッフらしきヒトが何か言ってたがシカトである。
あった!
転がり込み、セーフ!って感じ・・・。
 すんごいキレイなトイレだった。
ちゃんとハンドタオルまで備えてあった。
何でこんなにキレイなトイレをわかり難い地下に隠してあるんだ?
そりゃ、こーゆー客が多いからだんべな。
せっかく苦労して見つけたトイレだ。
連れトイレしてこっと・・・。
 やれやれ・・・。
これって海外旅行の「お約束」だんべか?
嫁さん俄かに至福の顔になってフロントのお姉さんに愛想振る。
「サンキュー!」
「アイタ!(ありがとう)」
お姉さんもにっこりして「サンキュー」
いいヒトであった。

  • 再開

 「お約束」のトイレ騒ぎが済んで、観光再開。
「太っちょマルガリータ」「3人姉妹」「3人兄弟」などなど・・・。
「聖オレフ教会」ではマニアックな「オレフのレリーフ」も見てきた。
教会の中庭に入ってぐるりと裏に回る。
何だか盗っ人みたいである・・・。
ふと見ると、教会の裏にトイレがあった。
習慣は恐ろしい。
トイレばっかり見てる・・・。
 半分、泣きの入った嫁さんをなだめてすかして何とか「旧市街」を一周した。
ま、満足である。
「土産物屋を覗くか、美味いビールを飲みに行くか、どーする?」
俄然、嫁さんは元気になる。
「土産物を見てから、ビールを飲みに行こう!」
 土産物屋を覗いて歩いていたら「A田さん夫妻」に会った。
それも夫々別々の店で・・・。
いつも趣味がぜんぜん違うので時間を決めて待ち合わせるんだとか・・・。
何となくわかるような気がする。
これと言ったモンも無かったけど、「絵皿」を1枚購入。
ホンットにカネ使わない(使えない)ツアーだった。

  • 「ショッピングセンター」

 嫁さんが元気な理由はこれである。
ビールでも飲んで休憩してから、大事な靴探しが待ってる。
くたびれてなんかいられない。
 「ヴィル通り」からショッピングセンターのオープンカフェに移動。
ホンの目と鼻の先だけど・・・。
陽射しを浴びながらオープンカフェで飲むビールは最高!
何かヨーロッパっぽいじゃん。
でも、つまみは「柿の種」とか「茎ワカメ」とか純和風だけど・・・。

  • 戦闘開始

 休憩が済んだところで戦闘開始だ。
ショッピングセンターは3階建て。
多分、店の数は100じゃきかないと思う。
ある程度、ジャンル別になってて靴は靴でまとまってる。
 どうやら嫁さんは靴探しから全店チェックに方針変更したようだ。
ま、時間もたっぷりあるし、いいんじゃない?
でも、今回の探索は何の苦も無かった。
面白いのである。
店ごとに個性があって、しかもすんごくセンスがいい。
何でこんなにオシャレなんだべ、と思っちゃう。
細かいデザインや色使いに感心させられちゃった。
値段もそんなに高くない。
 「ちょっと、日本じゃ見かけないセンスだあね」
「そーなのよ。オシャレなのよねえ・・・」
嫁さんは気合十分で丹念に探索した。
でも、やっぱり靴は無かった。
「あの時のガイドさんはどこにでもあるって言ってたけどねえ・・・」
「ま、一応、国が違うからねえ・・・」
「諦めるっきゃないか・・・」
ふにゃふにゃふにゃふにゃ〜ってな顔になった。

  • スーパー

 最後の一仕事が残ってる。
スーパーで土産物類を揃える。
これと言った有名なモノがないところなので、逆に楽と言えば楽。
買い物はチョコレートとハーブティだけである。
後は自家用の喰いモノをチラホラ・・・。
 気になっていたスモーク類のコーナーへ。
スモークサーモンを見ると幾つも種類がある。
ショーケースには量り売り、棚には真空パックが・・・。
量り売りのを見ると何となく乾き具合がわかる。
「きっと、こいつだ!」
名札の文字をそのまま覚えて、真空パックのブツを探す。
似たような文字のブツを発見。
え〜い、勝負じゃ!
結果的には「当り」だった。
値段の割にはまずまず美味かった。
 オリーブやレッドペパーなどの香辛料も仕入れて来た。
やっぱこう言うモンは安い。
レジで支払いしようと思ったらレジ袋が有料だった。
しかも1袋18円もする。
やるなあ・・・。
環境対策兼商売かな・・・。

  • 晩メシ

 最後の夜である。
今日は「フォークロアショー」
嫁さんなんか出掛ける前から「踊りたい!」とか言ってる。
他にも踊りたいヒトがいっぱいいるようだ。
何だ・・・。
ウサ晴らしかい?
 レストランに到着するまでの車中でキョーコさんから案内が・・・。
「今回のツアーはホンットにいろんな事がありました。
皆さんにはお伝えしてない事もいっぱいあります。
ホンットに大変だったし、皆さんにもご迷惑をかけました。
そこで会社にクレームの電話しました。
で、今夜の食事は飲み物を1杯ずつサービスさせて頂く事になりましたぁ」
それっ!
一同、拍手〜〜〜っ!
みんな大人である。
 レストランは広いフロアの民家風。
如何にも踊るぞ〜って気合に充ちた造りだ。
客はツワモノどもの他には異人さん夫婦1組だけ。
ウサ晴らしにはおあつらえ向きだべ。
 8人掛けテーブルだった。
何だか「飲んべグループ」に組み込まれてしまった。
「H場さん」「I塚さん」「Sコグチさん」「Sガピョン」「O田さん」「ハマちゃん」
そうそうたるメンツだ。
 テーブルには各々ぐい飲みみたいなのが置いてある。
「今日はウォッカが1杯ずつ付いてま〜す」
げっ!
もちろん我々はビールである。
「I塚さん」が「ウォッカはやらんですか?」と訊いてくる。
「や、おこちゃまなんで麦ジュースで十分なんです」
っとぶりぶりっと答える。
そして宴は始まった。

  1. 【ウォッカ】  飲めん。ホシなし。
  2. 【オードブル盛り合わせ】  イワシ・煮凍り・ゆで卵など好み。ホシ2つ。
  3. 【ポテト3種盛り合わせ】  マッシュポテトベースでゆでたり焼いたり・・・。油っこい。ホシ1つ半。
  4. 【肉・ソーセージ、ザワークラフト添え】  もう肉は喰えん。ソーセージは美味かった。ホシ2つ。
  5. 【ショートケーキ、コーヒー】  予想外に美味かった。ホシ2つ。

 狙っていたイワシの酢漬けは売れ行きが良かった。
大皿が戻って来た時には残って無かった。
多めに取っときゃ良かった・・・。
アフター・フェスティバル・・・。

  • ウサ晴らし

 フォークダンスが始まった。
さあ、ウサ晴らしのお時間である。
嫁さん、待ってましたと飛び出してく。
お約束でみんな代わる代わる出てって踊る。
でも、何だべ?
今ひとつ盛り上げに欠けるような・・・。
意外性が無いのかな?
ヴィルニュスの夜の鳴り物のウサ晴らしの方がずっと盛り上がってたかも・・・。
 「飲んべグループ」はピッチが上がってる。
我々は「Sガピョン」のビールを奪い取ってお代わり。
代りにあっちこっちのテーブルから飲まないウォッカを集めて奉納した。
「H場さん」「I塚さん」「Sコグチさん」でかなり平らげた。
かなりの豪傑である。
 この3人は以前にもツアーで合った事があるらしい。
特に「H場さん」と「Sコグチ」さんは3回目だとか・・・。
「Sガピョン」は去年の夏、北欧で「おばはん連」と一緒だったとか・・・。
何だべ?
海外旅行って決まった人種しか行かないんだべか?

  • 最後のラウンジ

 いつものように最後にピアノバーで一杯・・・。
っと思ってたら「A田婦人」が目ざとく「どこ行くの?」
ってんで「A田さん夫妻」もご一緒することになった。
ピアノバーに行こうとしたら、ツワモノどものがいっぱいたむろしてる。
みんな最後のラウンジらしい。
 「いいじゃん。みんなで一緒に飲もうよ」
「ハマちゃん」が俄然音頭取りを始めた。
さすがに宴会慣れしてる。
結局、ラウンジのコーナーのソファを並べ替えて宴会場を作ってしまった。
飲み物はカウンターから「ハマちゃん」が続々と運んでくる。
盛大に最後の乾杯。
周りのヒトは何事かと思ってたべなあ・・・。
 結局、14名の大宴会になってしまった。
いないヒトを数えた方が早い。
秋田の「S木さん夫妻」、公文の「H竹さん夫妻」、パイプの「K峰さん夫妻」
画家の「K林さん夫妻」と写真家の「Hヤシさん」である。
もちろんキョーコさんもいない。
 ツワモノどもは最後まですごかった。
飲んで、騒いで、笑って・・・。
どっかの温泉旅館とおんなじノリってえ気がしなくもないけど・・・。
誰一人、不平不満なんかまったくクチにしない。
言ってみりゃ大人のバカ騒ぎである。
恐るべし、ツワモノ集団。
 明日はゆったり出発、昼メシの後、いよいよ帰国だ。