居酒屋の雑感Ⅹ

  • 不調

 今日は何だか朝から不調。
左半分の頭痛が痛い。
全身がだるくて胸のあたりがムカつく。
首、肩、背中がパンパンに張ってる。
昨日の酒が残ってるのかなあ・・・?
 水を多めに飲んだ。
胃薬も飲んだ。
マッサージ器にかかって首や肩をほぐした。
でも治らない。
 嫁さんは胡散臭そうな顔で見ている。
本人が原因がわからないくらいだ。
きっと、仮病に違いない・・・っと思っているに違いない。
ふと、気付いた。
多分、熱発だ。
毎晩あんまり暑いので窓を開けて扇風機をかけて寝ている。
やられた!
 急いで解熱剤を飲む。
テニスレッスンの時間を1時間繰り下げてもらう。
全身倦怠感が和らぐまでちょっと横になった。
コテっと眠れた。
やっぱ間違いない。
熱発だ。

  • 脱力

 テニスには丁度いいみたい。
最初っから無理は出来ないなっと思ってる。
不調で力が入らないので身体のブレが少ない。
だるくて力みようが無いので腕力に頼らない。
体力の無駄遣いをしたくないので最短の動きを心掛ける。
複雑である。
 もうちょっとで掴めそうなんだけどなあ〜みたいな気持ちになる。
そのもうちょっとが大変なんだけど・・・。
嫁さんも似たような感触らしい。
もうちょっとタマ数を打てば感じが掴めるかも・・・。
 日は長い。
夕方でもコートをレンタルして打つ事は可能。
でもなあ・・・。
疲れ果ててるからなあ・・・。
「もう少し打ちたいけど、疲れてるからやめた方がいいよね」
「かえって打ち方がおかしくなっちゃうよね」
っという会話を聞いていてコーチは無言だった。
やっぱ判断が合ってるんだ。

 いつものパターン。
疲労困憊の後は美味いビールと外食。
ここんとこ、ご近所のラーメン屋にはまってる。
抜群にビールが美味いのでそこでもいいんだけど・・・。
今日はJR駅ビルの本屋に行きたい。
必然的に駅ビルにある店に行く事になる。
 「どこに行くかね?」
「今度新しく出来た店に行ってみようか?」
さすがである。
ちゃあんとプランが出来ていた。
今度の店は「T風炉」っていう。
何でも東京の方のチェーン店でそこそこの評判を得てるとか・・・。
ま、モノは試しで・・・。

  • 変遷

 その店は先月まで「S麦花」という名前だった。
そしてその前は去年の10月まで「Kまる」という店だった。
ずいぶん入れ替わりが激しい。
いずれもまったくの居抜きだった。
 もっとも先月までの「S麦花」は良く半年も続いたと思う。
店の名前にソバを冠している。
なのにあまりにひどいソバだった。
許せなかった。
他の料理はフツーなんだけどこれが致命的だった。
 去年の10月までやってた「Kまる」はソバが結構美味かった。
みんなそのイメージを引き摺って足を運んだと思う。
何せ、まったくの居抜きで店の名前が変わった。
そして店の名前があれだ。
我々も見事にハメられた。
さすがにそのソバの味のひどさは口コミであっという間に広がった。
とってもじゃないけど2度と足を運ぶ気にならないべ。

  • 警戒

 ま、とりあえず試しだ。
1度は入ってみないと語れない。
入って行くと「暫くお待ち頂きます」とか言ってる。
「待つの?どれっくらいかかるの?」
喉が渇いて頭の中でビールが渦を巻いてる嫁さんが憮然と訊く。
「はいっ、20分くらいかと・・・」
「20分も待つの・・・?どうする?」
嫁さんが不機嫌そうに振ってくる。
「別に待ってまで入りたかないけど・・・」
 不穏な空気を察したらしい。
「あっ、少々お待ちさいませ」
お姉さんがパタパタの奥の方に入って行った。
「大丈夫です。すぐにご用意出来ます」
何なんだ?
 メニューを見る。
「生ビール」が390円。
「オリジナル地生ビール」が530円。
つまみも平均単価にしたら500円っくらいだろうか?
「ヤに安いな・・・」
「でも、東京じゃ安くてそこそこって評判みたいよ」
「ふ〜ん、でも390円はビールじゃねえべ」
「う〜〜ん、怪しいねえ・・・」
 スタッフを呼ぶ。
「これは発泡酒でしょ?」
「いえ、違います。アサヒのスーパードライです」
即、オーダー。

  • 落胆

 嫁さんの頭の中のビールの渦巻きは最高潮に達していた。
「生ビール」到着。
「おっ疲れい!」
ぐいっと一飲み。
次は「ちっくしょ〜!」のはずだった。
「ん?」
「何だ?これ?」
味が無いのである。
ビールの水割りみたいな・・・。
がっくり。
 即、スタッフを呼ぶ。
「追加でオリジナル地生ビール」
「済みません。本日切らしております」
あ〜あ、嫁さんの落胆ぶりは甚だしい。
ぶちぶち言ってる。

  • 料理

 ビールを諦めてつまみをオーダー。
突き出しに【冷奴】と【タコわさび】を選択。
3〜4種類から漏れなく1つ選んで頂く強制突き出しシステムらしい。
ま、どうってこたあ無い1品だった。
豆腐はスが入って夏向きになってたし、タコわさびはそのまんまだった。
 【もっちり豆腐】は前の前のお店「Kまる」の得意技だった。
その思い出でオーダー。
どっちかというとチーズの勝ち。
豆腐の香りは全滅してて、やっぱ思い出の1品とは違ってた。
 【じゃこパリパリサラダ】は梅ドレッシングで・・・。
揚げた春巻きの皮みたいなので出来た器に入っていた。
見事に梅のさっぱり感が消されて濃厚な油っこい1品だった。
 【もちとカマンベールチーズの春巻き】は恐いもの見たさでオーダー。
長さ20cmくらいの大春巻きで面白かった。
カマンベールや大葉や明太子の香りもして楽しい。
但し、いかんせんモチが多過ぎてずっしりと腹に溜まる。
これでメシ代わりにしてもOKかも・・・。
 【備長串焼き】は鶏モモ・胸盛り合わせとエリンギベーコン巻き。
これは当店の売りの1つだった。
何せ「備長焼・十割そば」を冠している店だ。
串焼きは平均単価で1本250円と決して安くない。
こだわりの焼き方なんだべ。
値段に見合っているかどうか疑問ではあるがまあまあ美味かった。

  • 仕上げ

 仕上げはやっぱソバだべ。
嫁さんと作戦を練った。
半分ずつ喰おう。
シンプル【せいろソバ】を1枚と【ミニ麦とろ飯】をオーダー。
ソバには「腰のソバ」と「香りのソバ」の2種類があると言う。
最近は「コシ」を出す為にソバにタピオカの粉を混ぜると聞いた事がある。
迷わず「香りのソバ」を選択。
この作戦は大正解だった。
【ミニ麦とろ飯】はそのまんまなので美味かった。
大和芋の淡白なとろろなのでさっぱり喰えた。
 極めつけはソバである。
先に天然わさびがサメ皮とともに出て来た。
最近はこれもお約束になった。
わさびをすりおろした頃にソバが出て来た。
出て来たソバを見た瞬間、二人とも声が出なかった。
見るからに味が想像出来た。
そしてそれは外れなかった。
見事な光沢。
稲庭うどんと見まごうばかりの太さ、2〜3cmの千切り状態。
口に入れると何となくカニの甲羅のような香りが漂う。
何だろう?
どうにも表現のしようが無いソバのようなモノだった。
多分、いや間違いなく生まれてこの方こんなにマズいソバを喰った覚えはない。
駅の立ち喰いソバの方がずっと美味い。
いや、それは駅のソバに失礼だ。
「マルちゃんのカップソバ」の方がずっと美味い。

  • システム

 最近はシステム化されたチェーン店が増えてる。
この街にも沢山のチェーン居酒屋がある。
そして厳しい競争に晒されてる。
少しでも安く、均一な味で、均一なサービスで・・・。
安い給料で使える若者には事欠かない。
教育で均一なサービスを叩き込むのもシステム化された。
「いらっしゃいませ。こんにちは」
「1万円のほうからお預かりします」
訳がわからん。
 少しでも安くする為に材料も安くするんだろう。
最近はまともなビールを飲むのにすっごく苦労する。
何かビールのような飲み物であればいいと思ってるフシがある。
カタチだけ揃えた料理が増えて来る。
何とかみたいなモノとか、何とかもどきとか・・・。
飲むヒト、喰うヒトがいるからやってんだべ?
舌がおっかしいんじゃ無いかと思っちゃう。
こんな傾向がずっと続くとは思えないけどなあ・・・。
何だか寂しい限りだあね。