「ヒルトップ」〜チェスターの雑感

  • 「イングリッシュ・ブレックファースト」

今日は9:30出発。
時間はたっぷり。
今日から朝食は「イングリッシュ・ブレックファースト」
薀蓄を聞いた。
まず席につくとフロアスタッフが飲み物を注いでくれる。
次にブッフェコーナーでフルーツなどの冷たい料理を取ってくる。
これを喰い終わると暖かい卵やハムなどがサーブされる。
これがなかなかのボリューム。
最後に薄切りカリカリトーストが出て来る。
これにジャムをたっぷり付けて喰うのが正式らしい。
イギリスはこれが基本。
後は多少のアレンジがあると思っていれば良いそうだ。
初日の「スコティッシュ」もこれのアレンジだったんだ。
いずれにしても優雅な朝食だ。
豪華な料理で味も美味しかった。
間違いなく「ホシ3つです」だった。

  • 牧場の朝

今日の行程はゆっくり。
朝食後に散歩する時間がある。
ホテルの裏の丘は牧場になっている。
てくてくと歩いてみた。
又、ピーターラビットに会えるかも知れない。
今日は正真正銘の抜ける様な青空。
朝露の残る牧場は気持ちが良い。
丘の上からのウィンダミア湖の眺めが素晴らしい。
何と無く身体が浄化されて行く様な気なする。
気のせいだが・・・。

  • ホークスヘッド(Hawkshead)

「ヒルトップ」に行く為の拠点になる街らしい。
大型バスはここに停めて小型シャトルバスに乗換える仕組みだ。
「ヒルトップ」までの道路が狭いのでこの仕組みにしたらしい。
シャトルバスの予約時間までフリータイム。
しばし街中を散策する。
小洒落たホテル・土産物屋などが並び滅茶苦茶キレイな街だ。
土産物屋もちょっと一ひねりしている。
どの店をのぞいても同じモノを置いて無い。
徹底的にオリジナリティに拘っている雰囲気だ。
日本語で「ピーターラビット公認店」と言う看板を見かけた。
何じゃそりゃ?
ちょっと風変わりな小物屋に入ってみた。
おもしい。
興味を引かれるモノが多い。
小さな額入りのおもしい絵が沢山ある。
昨晩のホテルの洗面所に飾ってあった絵と同じ作家の絵があった。
ムラムラっと来た。
が、絵は持って帰るのが至難である。
値段も1万円そこそこでケチな小市民には安く無い。
さんざん迷った挙句、結局お買い上げ。
キャンバスは観光するには結構な荷物だ。
ドライバーにバスのドアを開けてもらう。
ついでに夜のビールも購入した。
ドライバーのビールと一緒に冷蔵庫へ入れてくれと頼む。
ニヤリと親指を立てて引き受けてくれた。
こやつもよほど飲んべと見た。

  • 「ヒル・トップ」(Hill・Top)

小型シャトルバスに乗換え、「ヒル・トップ」へ。
湖水地方に心酔したビアトリクス・ポターが買った農場とか。
ピーターラビットの印税をつぎ込んだ。
ナショナルトラストに全て寄付した為に今の姿が残せたと言う訳だ。
ナショナルトラストは今やイギリス最大の土地持ちらしい。
しかも政府に頼らず、観光収入や会費などで運用しているとか。
スケールが大きい。
「ヒル・トップ」の農場の家にもスタッフが大勢居た。
日本人スタッフも2〜3人居た。
絵本を片手にポターの使っていた調度品などの説明をしてくれる。
箱根寄木細工のタンスなんかもあった。
何ともしみじみ出来る良いところだ。
何よりその姿を維持している仕組みに感心。

  • アイビー・ハウス・ホテル

ホークスヘッドの街に戻って昼食。
18世紀の建物をそのまま使った小さなホテルだ。
ご主人が挨拶に出て来られた。
「ヨウコソ、イラッシャイマシタア〜!○○××△△・・・」
外した。
一同、あっけに取られてしまった。
もう一度やる、と言い張るご主人をトモコさんが制していた。
でもビールも料理も美味かった。
ビールは地ビール「ホークスヘッド・キング」
料理はまずワイルドマッシュルームのスープ
続いて砂肝包みチキンローストとグリル野菜添え
デザートはアイスクリーム。
ご主人は結構腕に自信のあるシェフらしい。
スープは美味いんだが、一同何のスープか分からない。
キノコみたいな気がする。
ハーブも入っているんじゃ無いか?
議論百出。
シェフに訊いてもらう。
「マッシュルームの様だが何のスープか?」
ご主人、喜色満面。
「これは野生のマッシュルームでハーブを使って・・・」
シェフと言うのは客の反応が何よりの御褒美だと良く分かった。
いずれにしても「ホシ3つです」だった。

  • チェスター

バスで3時間ほど移動。
小さな街でフリータイム。
「○○スター」と言う名前は古代ローマの砦があった所とか。
チェスター、グロースター、ウィンチェスターなど。
なるほど、街は完全に城壁で囲まれている。
1周4km、50分で回れる。
「ローマン・ハーバー城壁」と言うそうだ。
ガイドブックにも1回りすれば街全体が把握出来るとある。
良し、回ろう。
結構観光客が大勢歩いている。
でも今日の陽射しは強烈だ。
軽く30℃は越えた様だ。
ジモティは水着姿で歩いているヒトが多い。
気持ちは良く分かる。
炎天下、4kmの散策は汗みどろだ。
ノドはカラカラ。
大聖堂やチェスター城を見ながら、頭の中はビールで一杯。
城壁から見下ろす民家の庭でビール飲んでるヒトが見える。
くっそ〜。
飲みてえ〜!

今日の宿泊はマナーハウス
添乗員のトモコさん、大感激。
今回のツアーで一番の楽しみだった、と本音もポロリ。
何でもチェスター市内のホテルが取れなかったとか。
「ミキトラベル」も苦肉の策だったんだろう。
安くは無いだろうが、夕食を市内ホテルで済ませてからチェックイン。
マナーハウスでディナーを摂ったら赤字だろうと言っていた。
要するにイギリス得意の「B&B」(Bed&Breakfast)だ。
それでも凄い事らしい。
トモコさんのはしゃぎ方は尋常では無かった。
「持って来た中で一番良い服を着なくっちゃ」とか。

  • 帳尻

マナーハウス参上前に夕食。
チェスター市内のレストランだ。
猛暑の散策でノドがカラカラ。
早くビールが飲みたい。
例によって同じメンツがバーコーナーに向かう。
1パイントが£2.3(約500円)今までで一番安い。
料理はトマトスープ、ビーフシチュー、デザートがアイスクリーム。
スープは酸っぱくって美味かった。
前菜にスープが出るとビールのつまみが無い。
でも大丈夫。
こう言う時はパンをスープに浸してつまみにする。
長年の熟練のワザだ。
ところが今夜は勝手が違った。
パンのバスケットが無い。
各人にバナナの半分くらいの大きさのハーフカットが配られた。
え〜っ?こんだけ〜?
つまみ不足である。
メインのシチューが出て来た。
え〜っ?これがシチュ〜〜〜?
どう見てももつ煮込みのスープ仕立てだ。
透明なスープに肉片とイモ・ニンジンなどがちらちらと浮かんでいる。
満足しない。
苦肉の策で皆がパンのお代わりを要求。
厨房がパニくる。
デザートが出始めた。
パンとアイスクリームが出て来る。
アイスクリームは半分くらいがホイップクリームになってた。
流石にトモコさんがクレーム。
ついに厨房が逆ギレ。
「こんなに暑いのよ。しょうが無いじゃない」だって。
確かにこの辺りの厨房にエアコンがあるとは考え難い。
猛暑、恐るべし。

  • クラブウォール・マナー(Crabwall・Manor)

ホテルに向かうバスの中はブーイングの嵐。
「夕食でスープを三杯喰うとは思わなんだ」とか言ってる。
すかさずトモコさん。
マナーハウスが如何に高いか、良く分かりましたね」
更に続けてこの際だからと
「私もお腹が空いちゃったのでディナーに行こうかと思います」
ホテル到着。
ビシッとした黒服が出迎える。
確かに泊り客らしき外人の格好が尋常では無い。
タキシードやカクテルドレスのやんごとなき風の方々が見える。
ガーデンパーティーかな。
紳士・淑女は芝生でドリンク片手に談笑中。
このマナーハウスは10年ほど前から営業を始めたとか。
それまでは貴族のお屋敷だった。
広大な敷地、牧場、イングリッシュガーデン。
駐車場にはロールスロイスや高級車がゾロリ
大きな屋敷は迷路の様な造りで、総うぐいす張り。
全ての客室の大きさ・インテリアが違うんだそうだ。
古い調度品、真鍮の金具、屋敷全体の匂いに歴史を感じる。
ふと気が付くといつの間にか同行メンバーで変身したヒトがいる。
バスの中で着替えたのかな。
頭をムースで固めてジャケット姿で決めている。
すぎゃあ。
その根性は尊敬モノだ。
当ホテル支配人が泣いて喜びそうだ。

  • 差別と落胆

バスドライバーはここには泊まれない。
我々を降ろした後、先ほどの帳尻ホテルに戻っていった。
それって差別じゃない。
良く考えてみると先進国でドライバーは貴い仕事では無いかも知れない。
どこの先進国でもお年寄りや外国人労働者が多い。
我々のドライバーも結構なお歳だ。
孫に小遣いやりたいからまだ頑張って働くんだ、と言っていた。
何だか気の毒な気持ちでバスを見送る。
あっ!!!
バスの冷蔵庫からビール出すの忘れた!!!
せっかくキンキンに冷えたビールが・・・。
落胆は大きかった。
ん〜〜ん。許せん!
やはり差別はいか〜ん!
ドライバーも同じホテルに泊まらせろ〜!
とほほ・・・。

  • 灼熱地獄

落胆のあまり部屋で休む事にする。
広大な敷地で部屋は全て南向き。
ホカホカに暖まっている。
しかも洗面所にはタオル乾燥の為のパネルヒーターが付いている。
スイッチは無い。
頼んでもいないのに無休で働く。
暑い!!
バカみたいに暑い!!
突如、庭の向うで花火が上がり始めた。
ドカン・ドカンと凄い迫力だ。
わが街の年に1度の花火大会の半分くらいの量があったと思う。
スケールがでかい。
どうでも良いが暑い!!
窓は全開だ。
外気は涼しいがとても追っつかない。
焼け部屋に水である。
とても我慢出来ない。

  • 窮鼠バーに行く

窮鼠は立ち上がった。
「バーにビール飲みに行こう」
「短パンTシャツじゃダメだろうね」
わざわざ暑いのに襟付きシャツとスラックスに着替える。
23:00過ぎ、意を決して出撃。
もう幾らか空いてくるだろうと言う読みだ。
とんでもにゃあ。
今まで優雅にディナーを摂っていた客がバーに殺到し始めた。
如何にも上品な身なりの御仁がうようよ。
これからがバーの時間なんだ。
やっぱり敷居が高い。
でもどうしてもビールは飲みたい。
何とか隅の方に小さなボックスをゲット。
座ってフロアスタッフ登場を待つ。
ノドはカラカラだ。
忙しくなっちゃったんだろう。
待てど暮らせどスタッフが来る気配は無い。
しかも周りの酔客はタバコモクモクで煙くってしょうが無い。
キレた。
バーカウンターに向かう。
「Excuse me!」顔は完全に怒っていた(と思う)。
「Yes」と怯え気味のお姉さん。
「Can I takeaway beer?」トモコさんが教えてくれたヤツだ。
「Sure」安心しきった笑顔になった。
どんな銘柄が良いかと訊く。
怒ってるから何でも良い、と答える。
よりによってバドワイザーを4本出して来た。
くっそ〜。
何でイギリスまで来てバドなんだ?
銘柄指定しなかった自分が悪い。

  • ヤケビール

冷たいビールを抱えて急いで帰還。
確か日本から持って来たスーパードライが残っていたはず。
味が薄いが冷えているバドとブレンドだ。
パンツ1つになってガーっとビールを煽る。
「ちっくしょう〜〜〜っ。たまんにゃあ」
後はJALワインでも飲んで酔っ払って寝るしか無い。
何でも良いが小市民はこう言う所に価値観が見出せない。
幾ら高くても上品でも、もう結構である。
明日から楽しみにしていたコッツウォルズ地方だ。