一般庶民生活雑感
- 現地家庭訪問
一般のお宅にお邪魔する。
とは言っても、ガイドのブンさんの同僚の家とか。
結構、手近なところでまとめてある。
ガイドの仕事をしているくらいなので、お金持ちである。
そこそこの庭もあるし、高床式の立派な木造である。
ヤシの葉っぱでは無い。
下の階はバイクを入れる車庫や、バス・トイレ・洗面所がある。
水洗和便の横に水槽があって水が張ってある。
水槽にはヒシャクがあり、壁に歯ブラシが並んでいる。
正にウォータークロゼットで、全てここで済ますらしい。
洗濯場は庭の井戸の横である。
懐かしい金ダライと洗濯板があった。
上の階はほぼワンルームで結構広い。
キッチンはプロパンガスコンロが1つとナベが2〜3個。
後は食器が少々。さっぱりしてる。
立派な電気冷蔵庫とテレビ兼カラオケが鎮座し、神々しい。
カップラーメンにフカヒレか?
お茶にお菓子までご馳走になって暫し滞在。
のんびりプランなのだ。
- カラオケ
この国はカラオケのテレビ放送がある。
ホテルでチャンネルを回していて発見した。
映像は寛一・お宮みたいな雰囲気。
お邪魔したお宅でも大変な盛り上がり。
ブンさんの同僚もシエスタで帰って来た。
家族皆でテレビの前に勢揃い。
大人気なんだそうだ。
いよいよトンレサップ湖だ。
1週間前に日本のテレビで特集をやっていた。
水上生活で魚だけじゃ無く、猿や大蛇も取って喰っていた。
怖いもの見たさの興味津々であった。
シェムリアップの街から暫く走るとだんだん湖っぽい景色が見えて来る。
乾季と雨季で大きさが4倍変わると言う東南アジア最大の湖。
魚が多く、面積あたり漁獲量は世界一とか。
今は、ど乾季で水は一番少ない。
30cm以上もあるホテイアオイが茂り、水は淀んでいる。
当然、異様な臭い。
この湖に沿ってバラックが並んでいる。
棒っきれとヤシの葉っぱで作った簡素な物だ。
雨季になって、湖の水位が上がって来ると丘の上の方に移動するとか。
要するに水上生活の舟じゃ無いバージョンだ。
いずれも湖を生活用水と食料庫に使っているのだ。
- 水上生活
湖畔の移動生活者のすぐ傍に水上生活者もいる。
こちらは最初から舟で暮らしている。
結構、裕福そうに見える。
皆、自家発電機を持ってテレビなんか見てる。
ほとんどの家(舟)が漁業で食べているらしい。
先ほどのシェムリアップの市場に卸すんだとか。
勿論、生活用水は湖である。
炊事・洗濯・水浴・洗髪・水洗(?)全部まかなう。
石鹸で身体を洗う人がいて、隣の舟では炊事をしている。
舟の上でブタも飼ってる。
魚の養殖もやってる。
舟の学校も教会も警察もある。
凄い。
三角帽子を被った人はベトナムから流れて来た人だとか。
子供は素っ裸で水に飛び込んで遊んでいる。
笑顔は底抜けに明るい。
- トンレサップ湖クルーズ
客は我々2人だけ。
泥の様な浅瀬からスタート。臭。
長く伸びたシャフトの先にスクリューの付いた船外機を上手に操る。
バンコクの水上マーケットに行った時の事を思い出す。
走行中は自然と無口になる。
水飛沫が怖くて口が開けられないのだ。
沖合いに出てエンジンを止め、暫し水平線を眺める。
かなりの大型客船が錨を下ろしていた。
プノンペンから来たクルーズ船で、欧米人が良く利用するとか。
ここから小船でアンコールワット観光に行くらしい。
欧米人も結構、カルチャーショックはあるだろうな。
- 土産物屋
途中、舟の上の土産物屋に寄った。
いろんな飾り物を売る売店と、イケスを持ったレストランを兼ねてる。
イケスにはコイみたいな魚や大きめのエビなどがいる。
注文するとそこからすくって調理してくれる。
お金持ちっぽいアジア人一家がエビのフリッターで一杯やってた。
何だかなあ〜〜。
何も口に入れる気が起こらないなあ。
近所の子供なんだろう、裸でタライに乗って店に近づいて来た。
客に物乞いしていたが、店員に追い払われた。
店の奥は水族館みたいになっている。
いろんなトンレサップ湖の魚が水槽にいる。
何故かヘビもいる。
その奥はトイレである。
当然、自然水洗だ。
- バラック訪問
船着場に戻り、物乞いの子供を振り切ってクルマへ。
妙な仏心は禁物だそうだ。
一旦、あげたら収拾がつかなくなるとか。
ガイドのブンさんに湖畔のバラックの近所でクルマを降りてみたいと頼んだ。
ほいほいと快諾。
ちょっとレベルが高そうな辺りで下車。
バラック街を歩いてみる。
あまりこの辺りを歩く観光客はいないんだろう。
結構、好奇の目で見られる。
この辺りは電気製品も使ってる、そこそこの生活の様だ。
ブンさんが電気製品の修理屋に入って油を売り始めた。
修理屋とは言っても小屋に机があるだけ。
机に向かっておじさんが座っている。
シンプルな工具と、分解された電気製品が散乱している。
現地語だから全く分からないが、所々通訳してくれる。
修理中の製品はテレビ、ミニコンポなど皆、日本製。
日本で捨てられた製品を持って来て直して使ってるのだと言う。
直せる技術に感心。
何でも地雷にやられてこの商売を始めたとか。
言われて思わずあっと息を飲んだが、平静を装った。
確かに両足ともに無い。
ブンさんは気の毒がる訳でも無く、自然体である。
当たり前の様にある事なんだろうな。
急にカンボジアの現実に触れた気がした。
- ハンモック
例のお化けホテイアオイが密生している辺りに来た。
ブンさんが土産にハンモックはどうか?と訊く。
何と、この辺りの人がホテイアオイで作っているそうだ。
確かに家々の前にそれらしきモノが下がっている。
面白半分で買っても良いと伝えた。
1軒のバラックよりはもう少し高級な感じの家に寄った。
勿論、棒っきれとヤシの葉っぱ製ではある。
ブンさんが何か言うと家族総出で出て来た。
$5でハンモックお買い上げ。
泣きそうなくらい嬉しそうである。
ご家族と一緒に記念写真を撮って帰って来た。
家族総出でいつまでも見送ってくれていた。
ちょっと貢献出来たかな。
- 生まれ故郷
のんびりプランである。
いろいろ遊んだ積もりでもゆったりである。
まだ、時間があると言う事でブンさんの生まれ故郷へ。
同じシェムリアップでもちょっと田舎である。
舗装の無い道路をゆっさゆっさ走る。
「この辺りね」とは言っても何も無いが。
田畑が広がり、林の合間に小屋が点々。
ところどころ、ヤシの木が異国情緒を醸し出す。
如何にもこの辺りの一般的な景色ではある。
ブンさんも幼少の砌、裸でこの辺りを転げ回ってたんだろう。
何も無いけど夕暮れ時にはなかなかご馳走の景色である。
まだ少し時間があるからと、もう1箇所観光。
名前も忘れたがご近所の小さな遺跡を見学して、空港へ。
いよいよ帰国だ。
- シェムリアップ空港
ブンさんとはここでお別れだ。
3日間、付きっ切りでお世話になった。
思えば、大変な国情の中を生き抜きハイレベルな生活が出来る人は一握り。
その努力は並大抵では無いだろうなと思う。
運もあるだろう。
何にしても懇切丁寧なガイドをしてもらった。
心からお礼を言ってお別れ。
セキュリティチェックでひと悶着。
小市民はどこへ行っても大して土産物は買わない。
買うのは持って帰って収まる場所や使い道が決まったモノだけである。
それでどこへ行っても石ころを1つ拾って来る。
甲子園の砂じゃ無いが、小さな石ころに産と日時をメモしてある。
そこそこ情景を思い出すもんである。
と言う訳でシェムリアップでも石ころを1つ拾って来た。
これが引っ掛かった。
X線で見た係員が持ち出し禁止であると没収。
不満ではあったがやむを得ない。
1人旅のおじさんは、もう3時間くらい前からここで待っていた。
暇で暇で困ったとか。
そりゃそーでしょ。
両プランともそんなにゆったり時間があるなら、やはり両方行けば良かったのに。
シェムリアップ発PG945便は19:40である。
バンコク22:55発JL704便に乗り継いで明朝、6:30頃成田着だ。