癌スケ追撃 24日目

・問題児
夕べは参った。
隣に、おかしなご仁が入って来た。
夜中にずーっと騒いでる。
それもアヒルみたいな声で…。
「ぐえ~~っ!ぐえ~~っ!」
「すみませ~ん!すみませ~ん!」
看護師さんが出向く。
一瞬は止む。
でも、すぐに再開。
「っせーなー。眠れにゃあで!」

何だべ?
認知症かな?
結局、一晩中続いた。
完全に寝不足。
さすがに朝、看護師さんに文句言った。
「申し訳ありません。」
平謝り。
彼女らも困ったんだべ。
手に負えなかった…。
「ひと声かけてくれれば、絞めてくれたのに…。」
f:id:maosuke1225:20160626072210j:plain
〈そら〉
・漢方
嫁さんから情報が。
咽頭癌オペ患者のブログ。
喉頭摘出。
リンパ郭清。
空腸汚職食道再建。
「条件はぴったしかんかん!」
オペ後、6年経過。
それだけ見たら、好事例。
オペ後2年で、空腸の蠕動運動が治まった。
漢方が奏効した。
「そりゃ 、気になるで!」

詳しい情報が欲しい。
「よっしゃ!調べてみんべー!」
ブログを探した。
あった!
埼玉県在住の男性だった。
今でも定期検診に通ってる。
都内も含めて、3つの大学病院に世話になってる。
長い付き合いになった。
行くと、大勢の方が挨拶してくれるとか。
「ま、それもビミョーだけんなー。」

漢方の記事は見つかった。
でも、詳細不明。
担当医に漢方医を院内紹介してもらった。
漢方医も初の試みで処方。
4種類くらい試した。
いつの間にか蠕動運動が治まった。
う~~ん…。
「何とも言えにゃあなー。」
ご本人も言ってる。
「気持ちの問題か、薬効かは不明。」

もう1つ、思った。
この方は、オペ後6年経過。
我々が描いている理想のカタチ。
「その為に、追撃してるんだべや!」
ただ、この方は前立腺癌を発症。
他にも心臓病も併せ持つ。
咽頭癌とだけは、縁がキレたって事らしい。
「……」
あり得る。
先の事なんか、わかんない。
「やっぱ、今を生きるっ!」

癌スケ追撃 23日目

放射線
今日で16回目。
半分弱。
「サインはブエっ!」
唾液減少は結構進んだ気がする。
味覚異常もかなり迷惑。
「失って、初めてわかる有り難さ!」
味がしないって、新鮮。
特に塩味がしないと、どんだけ不味いか!
口の中で唾液が足りないから、ずーっと噛んでる。
「何か汁物がないと、飲み込めにゃあで。」

元々、菅ちゃんで苦労してる。
加えて、唾液減少、味覚異常。
「でも、生きる為に喰うっ!」
どんなに頑張っても、喰うのに3~40分かかる。
疲れる…。
作業完了と同時に眠たくなる。
いつの間にか意識不明。
「まさしく、3食昼寝つき…。」

あとは、放射線やけど。
これが想像できない。
クビがただれて皮が剥ける。
「それは何となく想像できるで。」
問題はノド。
ノドも同じ事らしい。
「それって、何も出来にゃあら?」
飲み食いは無理か?
鼻チューブ?
「面倒くせーっ!」
f:id:maosuke1225:20160625080542j:plain
〈そら〉
抗がん剤
4回目の投与から明けて1日。
最初の頃に較べると、かなりまし。
船酔いしてる感じはない。
朝イチ、通じもあった。
ただ、食欲はない。
頑張って喰う気にならない。
抗がん剤の副作用は、だんだん慣れるみたいよ。」
嫁さん情報は正しかった。
この治験の意味があったかも…。

イギリスもすごい治験に乗り出した。
EU離脱っ!」
又、思い切った事を…。
キャメロン首相は辞任。
為替・株式市場は動揺。
世界経済が大混乱するのでは…?
「でも、本質だべなー。」
誰だって、自分が一番可愛い。
次に家族。
そして地元。
「成熟した大人の社会も、本質には勝てにゃあ!」

そー言えば…。
九州で、業を煮やす話があった。
ガキが3匹、とんでもない事をした。
錦鯉を棒で突き刺した。
たくさんの鯉が傷ついた。
何匹か死んだ。
「何で、こんな事が出来るんだべ!」
面白かったとほざいてるそうな。
「これも、本質か…。」
ニンゲンは、喰う為以外で他の動物を殺す事が出来る唯一の動物。
でも、相応しい罰もある。
ガキどもには、喉摘刑が相応しい!

癌スケ追撃 22日目

・4クール目
木曜日がやって来た。
濃厚な1日になる。
看護師さんたちの動きも変わる。
ちょっと緊張感が漂う。
「良く訓練されてるよなー。」
朝イチ、補液の点滴開始。
まず、身体をじゃぶじゃぶにする。
ここで、放射線科から呼び出し。
確かに補液点滴中なら放射線照射可能。
「テキも考えたなー。」

補液のスタンドを引きずって地下へ。
まだ外来患者は多くない。
すいすいと放射線照射。
その後、Dr.F澤の診察。
「今日で15回目でしたが、体調はどうですか?」
唾液減少と、味覚異常を伝えた。
「あー、出て来ましたか…。」
あんまり感動しない。
口の中を診ても、ふんふん言ってるだけ。
「じゃ、引き続き頑張りましょう!」
ちゃんちゃん!

部屋に戻ると、朝メシがあった。
「そりゃ、そーだべなー。」
当然、きっちり冷めてる。
一段と、喰うのに苦労した。
点滴部隊が、次の薬剤を持って来た。
必ず二人で来る。
患者のリストバンドと薬剤を照合。
バーコードをスキャン。
更に品名、容量、患者IDを二人で読み合わせ。
「見事なダブルチェックだで!」
尊敬しちゃう。
f:id:maosuke1225:20160624093048j:plain
〈そら〉
・ケモ
看護師さんたちの隠語。
ケモセラフィーの事だと思う。
化学療法。
補液に続いて、アロキシとデカドロン。
制吐剤と、ステロイド
抗がん剤の副作用防止。
制吐剤の進歩はすごいらしい。
Dr.E本が言ってた。
「かつては部屋でゲーゲーやってるヒトが多かったですが、今はいませんねぇ…。」
確かに吐き気は一度もない。
それくらい、内蔵の動きを止める。

その代わり、副作用もある。
6人に1人が便秘するとか。
その為に、緩下剤センノサイトを飲む。
「何だか、堂々巡りじゃんか!」
んで、真打ちブリプラチン。
看護師さんたちも、この扱いは慎重。
しっかり読み合わせ確認。
2時間かけてゆっくり点滴。
その間も液漏れがないか、何度も確認。
「気分が悪くなったりしたら、すぐに教えて下さいね。」
ま、安心出来る。

最後にマンニットール。
利尿を狙う。
補液もずーっと継続。
身体がじゃぶじゃぶ状態だし…。
全部終わったら、17:00回ってた。
「あーあ、やっぱシャワー無理だったで。」
間もなく晩メシ。
マメ御飯、高野豆腐…。
「ノド通らにゃあよなー。」
頑張って完食。
「生きる為に!」
タイミングが悪かった。
内蔵の動きが止まって来た。
横になると、酸っぱいもんが戻って来る。
「しくじったで。起きてるっきゃにゃあじゃ。」
f:id:maosuke1225:20160623183700j:plain
〈晩メシ〉

癌スケ追撃 21日目

・脱毛
朝、ふと気がついた。
枕に短い毛がいっぱいついてる。
「げっ!」
じじーは目も悪い。
見えるのは、黒い毛だけ。
「って事は、この倍くらい抜けてるだか?」
ま、元々大した量じゃない。
「多分、誰も気づかにゃあら?」

遂に来たか…。
これで、聞いてた副作用は揃ったか?
船酔い、二日酔い状態、食欲消滅。
強烈糞詰まり。
唾液減少、口渇、むせ込み。
塩分中心に味覚異常。
そして、今回の脱毛。
「どーよ!」
食事にはかなり影響がある。
元々、香りが分かり難い。
「メシ喰うのに、どんだけ苦労するか…。」

でも、問診で訊かれる。
「目眩、耳鳴りはないですか?」
「手足のしびれはないですか?」
「下痢はないですか?」
ずいぶんメニュー揃えてんなー。
まだ、そんなにあるの?
何より、放射線やけどが辛いらしい。
皮膚がただれる。
「食事が難しくなるかも知れません。」
こぞって脅かす。
「今でも、十分難しいんだけど…。」
f:id:maosuke1225:20160623060415j:plain
〈病棟にて〉
・ユアトーン
突然、ノックが。
見知らぬヒトが立ってる。
「りんどうショップの者です。」
おー。
電気喉頭を注文した…。
「品物をお届けに参りました。」
へ?
1週間くらいって言ってたべや?
「ねぇ…。早く来たんです。」
まだ、代金用意してない。
「これ、郵便局でお願いします。」

早速、嫁さんに連絡。
現金を用意してちょ!
すると、意外な反応が…。
「ネットで振り込んじゃえば?」
へ?
アタマん中で繋がんない。
とりあえず、口座番号を伝えた。
後から解説。
ゆうちょ銀行も民営化で、他銀行と同じ。
要するに銀行振込。
メインバンクから振り込めば、手数料ゼロ。
「手間もお金も要らないのよ。」
思わず尊敬した。

便利な世の中になった。
スマホ1つあれば、生きて行ける。
あながち大袈裟でもない。
そんな気がする。
ここに居ると、中心メディアがテレビ。
ワイドショーのハシゴ。
んで、もうちょっと掘りたい時はスマホ
「確かに十分かも…。」
メディアの質として、大差ない。
今日は、参院選の公示日。
平和ボケ民の選択は見えてる気もするけど…。
期日前投票には行くべーじゃ!」

癌スケ追撃 20日目

夏至
一番日が長い日。
冬至の時と、5時間違うそうな。
ま、ここに居たらあんまし関係ない。
それでも、日が長いのは感じる。
この部屋は北向き。
ふつーなら、日は射さない。
ところが、今は朝陽と夕陽が窓から射し込む。
「おてんとさん、恐るべし!」

今日、恐ろしくお育ちの悪い知事が辞職。
夏至に合わせただか?」
下衆だから…。
やっぱ、赤貧は悲しい。
東大に入れるくらいの高い能力。
強靭な精神力。
何一つ活かされなかった。
「ま、当然だべなー…。」
全ての原点が、今に見てろ根性。
成功するに連れてエスカレートする。
「世の為、ヒトの為なんて微塵も思わにゃあら?」
f:id:maosuke1225:20160622074208j:plain
〈そら〉
・外出
夜、Dr.E本が来室。
手術着のまま。
一応、気遣ってくれてる。
今のところ、検査値も所見も順調。
このまま継続すると。
「気分転換に外出していいですよ。」
ま、それもいっか。
一応、7/10(日)を予定してる。
「う~ん、出来れば今週・来週がチャンスだと思いますよ。」
先に行くと怪しいそうな。
そんなにひどいの…?

嫁さんと相談。
今度の日曜に外出するべーか。
朝、クルマで迎えに来てもらう。
たっぷりクルマに充電して、期日前投票
あと、とこやま、爪切り。
貯まった雑務を消化。
昼メシだけ、シャバで喰う。
んで、バスで再入所。
「結構、忙しそうだで…。」

癌スケ追撃 19日目

・検査日
朝イチ、採血。
6:00前に来る事もある。
ベッドに寝たまま採血したりする。
看護師さんは膝まづいて作業。
「楽じゃにゃあよなー…。」
看護師さんも大変だけど、検査室も大変。
急いで検査して、電子カルテにアップ。
「そんな時間から働いてるんだ!」
交代制かも…。

9:00。
耳鼻咽喉科の診察開始。
もう、この時は検査値が出てる。
「今朝の血液検査、全く異常なしでした。」
ってな調子。
ノドや、クビの様子も調べる。
「う~ん、ちょっと赤くなって来ましたね。」
痛くはないと、伝えた。
「それでは、このまま継続しましょう!」
電気喉頭を取り出す。
「ガンバリマスー!」
おーっ!
歓声が挙がった。
f:id:maosuke1225:20160621072842j:plain
〈そら〉
・ユアトーン
聞いた話。
病棟でちょっとした有名人らしい。
「電気喉頭の達人がいるって評判ですよ。」
Dr.E本も言ってた。
「最初からこんなに上手いヒト、見たことがないですよ!」
そーだべか?
お世辞半分にしても、悪くない。
とりあえずコミュニケーションが成り立つ。
「あっという間に、木に登っちまあで!」

午後から、りんどうショップへ。
病棟で借りた2台を持参。
「仕方なく、自費で買います…。」
スタッフも気の毒そうながら、嬉しそう。
せっかくなので、訊いてみた。
「他の機種でデモ機はにゃあかね?」
1つあった。
ニューボイス。
基本、仕組みは同じだった。
音程と、音量が変えられる。
音質も結構クリア。
「ただ、輸入品なので修理には時間がかかります。」

決めた。
ユアトーンにした。
マイボイスも面白いと思う。
抑揚がつけられるってのは、新味。
ただ、何故か音質がこもる。
スタッフにも聴き較べてもらった。
「ホントですねぇ。ずいぶん違いますねー。」
たまたま、コイツが外れだった?
その可能性もある。
「けど、それも引っ括めて決めたっ!」
75,000円。
さすがに非課税。
1週間くらいで届くそうな。

癌スケ追撃 18日目

・御一同様
今日も病院は休み。
静かだ。
不快感は大分緩和された。
今日も24時間点滴。
ほぼ2時間置きの尿量測定。
合間で、シャワー。
運動不足解消。
あとは、スマホタブレット
「これで、1日暮れてく…。」

今日は、イベントがあった。
次男坊御一同様が来る。
じじばばとセット。
賑やかになる。
昨日は三男坊夫婦が来てくれた。
二日に亘って、一族郎党勢揃いだった。
結構時間もかかるのに…。
「遠いところ、申し訳にゃあで…。」

二日に亘って、食い物が集まった。
ゼリー、プリン、果物…。
「すげーなー。喰いきれにゃあで…。」
特にすごかったのは、ばーば。
さくらんぼと、丸ごとメロンを持参。
さくらんぼは何とかなる。
「ここで、メロンをどーやって喰うだか?」
相変わらず、飛ばしてる‥‥。
「しばらく、デザートに事欠かにゃあで。」
f:id:maosuke1225:20160620151726j:plain
〈そら〉
・電気喉頭
 今日も大活躍。
とりあえず会話が出来る。
みんなに好評だった。
「明日、買いに行くべー。」
デモ機は2台っきゃない。
国産の2種。
輸入品はデモ機がない。
「でも、このどっちかでいいべ?」
ショップのスタッフも、国産を推奨。
輸入品は修理が大変だとか。
ドメスティックでいいじゃん。

 次男坊は、盛んにユアトーンを推してた。
理由は簡単。
マイボイスのメーカーがセコムだから。
セコムって聞くとピクつく。
ライバルらしい。
公私ともに、ライバルに負けられない!
って事らしい。
「そりゃ、幸せな会社だよなー。」
でも、実際ユアトーンの方が優勢。
音がクリアで、大きい気がする。
皆の意見も同じだった。

突然、看護師さん来室。
見たことがない姉ちゃんだった。
「こんにちは、私別な病棟の担当なんですが、ちょっとお話しを伺いたくて…。」
へ?
何ごとか?
「電気喉頭を上手に使われてるそうですね!」
担当の患者さんに、喉摘者がいるそうな。
そー言われちゃ、しょんない。
「デモキヲカリテマスー。」
っと使ってみせた。
「わーっ!上手ですねーっ!大分練習したんですか?」
場所さえ見つければ、簡単。
とりあえず便利だから、お奨めすると伝えた。
「ますます買うっきゃにゃあじゃ!」
f:id:maosuke1225:20160620151803j:plain
〈そら〉