癌スケ追撃 31日目

・土曜日
朝イチ、Dr.E本来室。
「あれ?土曜日なのに?」
クビとノドをチェック。
何とか食事が摂れてる事を喜んでた。
「こーゆーのを食事って言うだか?」
リハビリとも違う。
「治療の一環としての、難業苦行。」

元々、菅ちゃんはキューキュー。
何を喰っても味がしなくなった。
口の中が渇いて、ベタベタ。
加えて昨日から、気持ちが悪い。
「食欲なんて皆無だで…。」
それでも、治療の一環として喰う。
ごく少量を口に入れる。
ひたすら噛む。
ちょっとでも唾液が出るのを待つ。
めちゃ時間がかかる。

飲み込んでも、すんなり入らない。
何か水分が必要。
ファミマでカップ味噌汁を調達。
これで流し込む。
「やれやれ…。」
ところが、これを続けると別の問題が。
消化不良。
しばらく胸焼けして、横になれない。
「ちょっとでも唾液を足さにゃあと…。」

食事時間は更に延びる。
時々、30分くらいで下膳に来たりする。
「あ、失礼しました。」
イラッとする。
特に、昨日今日はダメ。
戦意喪失。
「スタッフに悪いから、やーめた!」
これを口実にギブアップ。
業苦行だで。

Dr.E本は来週、不在と言う。
「学会か?夏休みか?」
そんな事、訊かないけど…。
「何かあれば、必ず連絡がつきますので心配ありません。」
いや、心配はしてないけど…。
それより大変な仕事だなーと思う。
夏休みなら、尚更。
「そー言えば、夏休みシーズンだな…。」
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〈そら〉

癌スケ追撃 30日目

・文月
今日から7月。
夏だで。
いつもなら、会社では予定表を掲示。
夏期休暇取得予定表。
7~9月で分散して休みを取る。
暗黙の了解で、ダブらないようになってる。
「ま、大人の社会だで。」
もちろん、率先垂範で予定を入れる。
「ホントは旅仕度なんぞ始める頃だけんなー。」

追撃1ヶ月経過。
抗がん剤も5回目が終了。
副作用も、だんだん慣れて来る。
ってな期待に反して、今回は不調。
「何だか気持ち悪りぃなー。」
胸がムカムカするし、頭もボーッとしてる。
「気合いだーっ!」
ストレッチとかやってみた。
「よけい気持ち悪りぃ…。重症だで。」

朝メシは、常食が来た。
「やっぱ、毎週頼まないとダメか…。」
金土は、りんどう!
韻を踏んで頼んだつもりだったのに…。
食欲ゼロ。
見ただけで戦意喪失。
っとは言ってもなー。
「生きる為に、喰う!」
牛乳と、カロリーの高そうなもんだけ。
「もう、限界!」
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〈そら〉
・電話
突然、ケータイが鳴る。
思わず出そうになっちゃう。
「うおっと~っ!」
寸前で思いとどまる。
「あぶねー、あぶねー!」
出ちゃうとややこしい。
先日は、失敗して出ちゃった。
銀行の姉ちゃんだった。
「あれっ?あれっ?」
いろいろ悩んだ挙げ句、
「又、お電話しまーす。」

今日は、宇都宮のハトコ。
昨日は、昨年亡くなった大先輩の奥さん。
一応、嫁さんに連絡。
話が繋がるようにはしておく。
「でも、不義理しちゃってるよなー。」
バタバタだった。
単身社宅の転居通知も出してない。
一度、近況報告しないと。
「退院したら、お手紙書こうかねー。」

癌スケ追撃 29日目

・5クール目
抗がん剤の5回目。
そして、放射線の20回目。
何だかんだ言ってる内に、ここまで来た。
「ニンゲンって、すごいっ!」
余りに長い道のり。
副作用の数々。
待ってるのは地獄の沙汰。
「いい話は1つも聞かなかったで。」
何も考えないに限る!

放射線科の診察があった。
「何か、変化はありますか?」
唾液が出ない、味覚がない。
っと伝えた。
やっぱ、あんまし感動しない。
「クビやノドの痛みは?」
それほどない。
クビとノドを診る。
「まだ赤みもそんなに強くないですねぇ。」
感動しないなー。

Dr.F澤曰く。
「今までは比較的広域に照射してましたが、これからは焦点を絞ります。痛みは解消されますね。」
へ?
どーゆー意味?
特に痛みはないけど…。
痛くならないって事かなー?
焦点を絞るって意味もイマイチ不明。
「どこに焦点を絞るんだべ?」
ま、いっか。
「わかんにゃあこんは、考えにゃあ!」
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〈そら〉
・夏越の祓
今日で6月も終り。
夏越の祓だで。
「茅の輪くぐりに行かなきゃ!」
ムリ。
そんな事とは縁遠い暮らしだで…。
今年も半年終わった。
あっという間と言えば、言える。
「癌スケ一色の半年だったなー。」
なんて振り返ってる余裕もない。
「今を生きる!」

2週間ぶりの口腔外科。
前回の歯科衛生士さんが待ってた。
体育会系。
ガタイもいいし、歯切れもいい。
「もう2週間も経っちゃったのねー。」
どれどれ…。
「歯みがきは完璧ね。あと、渇き対策だねー。」
保湿剤を使ってみるか、訊かれた。
過去の事例では、まあまあ。
「助かったと言ってくれるヒトが多いね。」
1,500円だと言う。
「じゃ、それ!」

「今年も半年終わったわね。」
突然、四方山話。
「今年は、大変な半年になっちゃったわね。」
気遣ってくれる。
「でも、こんなに頑張ってるんだもん。この後はきっと良くなるわよ!」
いいヤツじゃん…。
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〈病棟にて〉
・退院予定
看護師さんに訊かれた。
「いつ退院なんですか?何か聞いてます?」
は?
ちょっとイラッとする。
「好きで、長逗留してる訳じゃにゃあっ!」
っとも言えない。
「退院って、自分で決められるの?」
いえいえ、そーじゃない。
「何か聞いてらっしゃるかと思って…。」
そんなに連携悪いの?

又、外出する事にした。
ここは狭すぎる。
我が家も広くはないけど、まだ刺激がある。
雑務もあるし…。
看護師さんに伝えた。
「わかりました。先生に訊いてみます。」
その後、耳鼻咽喉科診察。
先生にも直接伝えた。
「わかりました。確認してお答えしますね。」

部屋に戻って、ひっくり返ってた。
とんとんっ!
先生だった。
「うおっと~~っ!」
跳ね起きた。
「確認出来ました。9:00~18:00でいいですね。」
わざわざ部屋まで…。
有難いこって。
夜、試しに看護師さんに訊いてみた。
「日曜日に外出をお願いしてるんだけど…。」
「はいはい、許可証頂いてます。」
言えよ!

癌スケ追撃 28日目

・採血
6:00前、看護師さんが来た。
採血だで。
「又、血ぃ抜きに来よったでぇ。」
朝早くからご苦労さん。
毎週、月曜と水曜に採血。
月曜の検査値で、前の週のダメージ確認。
水曜の検査値によって、木曜のケモを決める。
って計画になってる。
大きく異常値が出たら、中止もあり得る。
「ここまでやって来て、冗談じゃにゃあで…。」

毎週2回の採血。
もう結構な量が抜き取られた。
何より駐車針跡がすごい。
採血以外に点滴もある。
「血管が穴だらけだで…。」
今朝の看護師さんは上手だった。
慎重に場所を選んで、すんなり採血。
痛みもなかった。
「こーいたのも、向き不向きがあるだか…?」

もう、かなり血管が弱ってる。
あちこち硬化。
触るとグリグリしてる。
ただ、太い血管は狙われる。
ブスブスやられる。
「あれっ?」
針を刺しても血が出ない。
「ごめんなさい。他の場所にします。」
めちゃ痛い事もあった。
「あ、ごめんなさい!場所移しますね。」
跡が青あざ。
「てんめー…。」
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〈そら〉
耳鼻咽喉科診察
9:30くらいにお呼びが。
耳鼻咽喉科の診察。
処置室に向かった。
「今朝の血液検査も、全く問題ありませんね。」
明日も継続だと言う。
あと、クビやノドも確認。
あんまし感動してなかった。
「全て、想定内って事か…。」

「食事もとれてますね。」
おいおい、簡単に言うな。
どんだけ苦労してるか…。
「唾液が出ない。味がしない。大変です!」
ユアトーンを使って訴えた。
「そーですよね。」
あんまし感動しない。
「大変なんですが、食べないと体力が落ちちゃいますから、頑張って食べて下さい。」
これも想定内か…。

あと、気管孔も診た。
「あー、キレイですねぇ。」
何度も聞いたセリフなので、慣れてる。
「これは、M木先生が癌研から導入された技術で、みんな注目してたんです。」
それも聞いてた。
あんまし感動しない。
「こんなにキレイな気管孔は、珍しいですよ。」
へ?
「そーなの?」
横にいた看護師さんも言う。
「そーなんです。みんなぐじゅぐじゅしたりして、大変なんですよ。」
知らなんだ。

癌スケ追撃 27日目

・白血球
Dr.E本、来室。
「お変わり、有りませんか?」
ま、変わりはない。
唾液が出ない。
味がしない。
「これは、仕方がないですねー。治療が済めば、徐々に回復すると思います。」
想定内らしい。
「食事は出来てますか?」
食事とは言い難いけど、頑張ってる。
安心した様子。

昨日の診察の事を話した。
白血球が下がったと言われた…。
「あー、2900くらいでしたね。全然心配ありません。」
えりゃあ違いだで…。
「ま、水曜日の血液検査で確認しますが、このまま継続でいいと思います。」
これも想定内らしい。
「だるさとか、有りませんか?」
性格的にはだるいけど…。
これと言った症状はないなー。
更に安心した様子。
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〈そら〉
・治験
他に検査値異常はない。
唾液減少や味覚異常も想定内。
消化器症状は想定を上回る少なさ。
って事らしい。
「治験としては順調な症例かな…?」
より少ない副作用で、より高い効果を!
これが目的。
ま、副作用は見える。
「効果はどうやって見るんだべ…?」

人類史上、最大の治験。
EUが揺さぶられてる。
イギリスで、再投票を求める声が増えてる。
離脱票を入れた衆が後悔してる。
EU側は、早く出て行けと要求。
「小学生じゃあるまいし…。」
ヨーロッパ。
成熟した大人の社会ってイメージだった。
玉石混淆、複雑な問題のるつぼ。
何もかもひっくるめて、成熟してる。
器の大きさ、奥の深さ。
ある面、理想社会に思えてた。
「何だかイメージが崩れたなー。」

癌スケ追撃 26日目

放射線
今日で17回目。
半分強。
「サインはダブリュっ!」
意味わかんない。
治療が実質的に半分を越えた。
「やっと、折り返しだで!」
でも、放射線科はいつもの通り。
「はい、横になって下さい。」
「はい、お面をかぶせます。」
「はい、治療を始めます。」
特に折り返しの激励もなかった。

耳鼻咽喉科の診察で、変化があった。
担当はS水先生。
「今朝の血液検査で、白血球が下がってました。」
感染し易くなる。
「マスクして、気をつけるようにして下さい…。」
へ?
突然、そんな…。
散歩できなくなっちゃうじゃん。
マスクだって限界があるし…。

もう1つ、やけど対策。
「軟膏を出しますので、クビに塗って下さい。」
だんだん赤みが出て来た。
やけどの一度の状態だとか。
「まだ、日焼けと同じですけど…。」
今の内から対策した方がいいそうな。
アズレン軟膏だった。
「うがい薬と同じ成分だで…。」
ノド用も処方された。
まさにアズレンうがい薬。
「思ったよりレトロだで…。」
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〈そら〉
・沙汰
折り返したところで、沙汰は…?
抗がん剤の副作用は落ち着いてる。
「幸い、死ぬほどの沙汰には遭ってにゃあ。」
検査値異常で、投与中止もない。
消化器症状だけ。
それもちょっと慣れた気がする。
元々、吐き気はない。
何とか不快感と折り合いをつける。
なるべく喰えるだけ喰う。
無理はしない。
投与後、二日間の闘いは制した。

問題は放射線の副作用。
特に、唾液と味覚。
「この沙汰にゃ参ったなー。」
って感じ。
ただでさえ頑張ってる食事。
菅ちゃんの緊張が強くなってる。
加えて、唾液が足りない。
無理に水分で流し込む事は出来る。
でも、後で胸焼けする。
「やっぱ、消化不良になっちまあなー。」
トドメは味覚異常。
とにかく、生きる為に喰う!
「もはや、食事じゃにゃあで!」

癌スケ追撃 25日目

・外出
気分転換する事にした。
Dr.E本のオススメに従った。
「今週か、来週の方がいいと思いますよ。」
ちょっとひっかかるなー。
けど、素直に従った。
「先の事なんか、わかんにゃあし。」
期日前投票をしておきたい。
あと、散髪もしたい。
爪も切りたい。
「結構、忙しそうだで。」

9:30。
嫁さん、到着。
一応「外出許可証」を携帯。
これを医師が発行しなきゃなんない。
「ちゃあんとしてんだ…。」
きっと、ゴマ粒みたいな字で書いてあんじゃね?
一切、自己責任です!
みたいな…。
許可証と、身障者手帳をポケットに。
あと、ユアトーン。
「これで全て用が足りるはず!」

まずは、期日前投票
市役所別館へ。
駐車場は、3ヵ所あった。
一番近いのが、身障者用と書いてある。
「チャレンジっ!」
全然ノーチェックだった。
っつか、身障者っぽい衆は見当たらない。
「おめーもそーだ!」
確かに…。
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〈そら〉
・そら
買い物してから、我が家へ。
ほぼ1ヶ月ぶり。
玄関を開けると、そら。
脱兎のごとく、吹っ飛んで来る。
すごい勢い。
「おーっ!久しぶりだなーっ!」
もみくちゃにしてくれる。
そら、狂喜乱舞。
飛んで跳ねて、舐めて噛んで…。
がうがう言ってる。
「相変わらず、愛いヤツよ!」

ユアトーンを使ってみた。
「ソラー、コッチオイデー。」
固まってる。
「何だ、こいつ?」
みたいな…。
何度か呼んだら動いた。
のそのそと近寄って来た。
警戒心いっぱい。
お愛想で、シッポもちょっと振って…。
「慣れるまで、時間かかりそうだで。」

忙しかった。
昼メシは、憧れのチーズグラタンと焼そば。
もちろん、サニーサイド目玉焼き載せ。
残念ながら、味は全部同じ。
口に入れた時に、かすかに香りがわかるくらい。
でも、完食。
「今しばらくの辛抱だで…。」
散髪もした。
爪も切った。
「あー、さっぱりした。」
帰りは、半額バス。
手帳を提示すると、運ちゃんが対応。
「慣れたもんだで。いかに多いかって事か…。」