癌スケ退治 6日目
・次の沙汰
恐怖の夜が明けた。
毎晩が恐怖の連続。
「今晩は、どんな沙汰が待ってるやら…。」
ま、しょうがにゃあね。
全てが初体験。
恐ろしいったら、ありゃしない。
昨晩は、「咳き込み地獄」だった。
一時間ごとに、悶絶。
寝られたもんじゃにゃあ。
オペ直後は何とも無かったのに…。
看護師さん達も言ってた。
「こんなに痰が出ない人は珍しいわねー。」
嬉しいような、不安なような…。
案の定。
昨日あたりから、雲行きが怪しくなった。
何となく、ノドの奥が…。
えへん虫がいるような…。
理屈的にはあり得にゃあ。
っとわかっちゃいるけど、そう感じる。
感覚だけが残ってるのかな?
ところが、これが大変。
肺は、きっちり呼応しちゃう。
肺だけが頑張っちゃう。
「ぜっは~っ!」
いっっっってぇぇぇ~っ!
冷や汗が出る。
〈心電送信機〉
・鎮静剤
咳くらい誰でもする。
どうってこたあにゃあ。
咳き込み過ぎても、ノドが痛くなるくらい。
そりゃそーだ。
でも、そうは問屋がおろさない。
腹を切ってる。
切って、空腸を間引いて、繋ぎ合わせて…。
しかも病気でも何でもないとこ。
それだけでも、結構な沙汰。
今度はこの沙汰かい。
まだオペから5日。
当然、手術創は癒えてにゃあ。
これで咳き込んだ日にゃあ、あ~た!
そりゃ、痛い!
っなあんてもんじゃない!!
「痛さのあまり、声も出ないで。」
元々、出ないか…。
何とかこの場を乗り切らなきゃ!
ん看護師さんに訴える。
もちろんジェスチャー、又は筆談。
看護師さんもいろいろ。
ジェスチャーで、一発で読み取ってくれる人。
「お腹が痛いんですね。痛み止めを使いましょう。」
これは、天使に見える。
筆談でわかって、すぐに対処してくれても十分嬉しい。
中には問題児もいる。
「痛いですよねぇ、お腹切ってますからねぇ。皆さん同じなので、心配ありませんよ。」
いっぺん殺したろうか…。
〈IDリストバンド〉
・耳鼻咽喉科診察
朝一番、訪問者あり。
見慣れない男性だった。
「耳鼻科の診察がありますので、処置室に来て下さい。」
あ、先生か。
日曜日も診察あるんだ。
って事は、当直だったんだ。
随分早いなー。
「朝一番で、早く終わらせて、どっか遊びに行こうとか…。」
処置室に行くと、ホントに先生1人だった。
看護師も、助手も、誰もいにゃあ。
「ふんふん、いいですねー。手術して5日めですよねー。素晴らしい回復力ですねー。」
誉められてんのかな…。
それとも造りが単純だとか…。
「もう、ドレンは抜きましょう。これで随分身軽になりますよ。」
助手もなしで、どんどんやる。
とっても甲斐甲斐しい。
1人でテキパキと手際がいい。
見ていてほれぼれ。
「さすが、ここんちゃ層が厚いなー。」
何にしても、ドレンが全部抜けた。
残るヒモ・チューブは7本。
「長足の進歩だで。」
〈そら〉
・帳尻
相変わらず、食欲バリバリとか。
嫁さんが、毎日そらの写真を送ってくれる。
癒される。
顔を見ただけで、和む。
「今日のわんこ」に出してやりたい。
沢山の人が癒される事、請け合い!
その嫁さんにゃ感謝してる。
申し訳にゃあ。
ホンットに大変だと思う
何故?
って、そりゃ思うべなー。
頼りにしてる。
からこそ、自分のペースを守って欲しい。
「元気でいてもらわないと、話になんにゃあ!」
嫁さんからメールが来た。
「人生帳尻が合ってるって言うから、きっとこの先にいい事が待ってるよ!」
その通りっ!
確かにこれまでの人生が恵まれ過ぎてた。
そりゃあ認める。
入院なんかした事ないし、人にも、仕事にも、遊びにも、恵まれ過ぎてた。
「でも、この仕打ちはにゃあら?」
ぜってえ、この後取り戻してくれるっ!
さあ、恐怖の夜が来た。
今晩はどんな沙汰が待ってるやら…。