続々々・【ぎんざ一二岐(いぶき)】のこと

 見事な強肴だった。
間違いにゃあ。

「こりゃ、ぜってゃあ酒を強いられる肴だで・・・」

本領発揮ってヤツでんな。
ワインが進んじまあ・・・。
ワインも美味かった。
サラリと辛口で、料理の邪魔しにゃあ。

「多分、そーいた酒をちゃあんと吟味されてんだべなー」

 次に八寸。
これ又、見事だった。
盆は24cmじゃにゃあ。
大ぶりの盆に5品を2人分。
見た目もキレイ。

「ひゃあ、喰うのがもってゃあにゃあみてゃあだなー」

板さんが1つずつ説明してくれる。
千葉の金太郎鰯。
福井のこのこ。
北海道礼文のうに・・・。

「やはり熱いうちに揚げ物から召し上がって下さい」

 こんな川えびも初めて見た。
ほとんど手長海老。
全長10cmっくりゃあある。
イタメシに使えそうな大きさだった。
これが又いい塩加減。
香ばしく、パリパリで美味ゃあっ!
続いて同じ揚げ物の水茄子。

「水茄子って、揚げても美味ゃあだなー。新発見だで・・・」

 このこもモノが違あ。
ふつーはやたら塩っ辛い珍味ってイメージ。
でんでん違あ。
酒の肴には違いにゃあ。
でも上品。
だし味を感じる。
金太郎鰯も美味かった。
絶妙な煮物だった。
 極めつけはうに寿司っ!
うにの殻に寿司が入ってる。
寿司は大葉やゴマが利いてる。
その上に新鮮なうにがトッピング。
更にプリプリイクラがパラパラ・・・。

「ひゃあ、こりゃあ反則ずら?」

 たまたま思ってた。
シーズンだなー。
鮎の塩焼きが美味ゃあ季節だなー。
そいだら、出たっ!

四万十川天然鮎】

何てラッキー!
ちょーブランド物だで・・・。
数時間前に四国から届いたそうな。
みゃーんち空輸するんだそうな。
 塩は尻尾に多め。
ボディには、ごく薄く。

”いいなー。塩焼きはこうありてゃあよなー”

って思って見てた。
完璧だで・・・。
 時々、勘違いしてる衆がいる。
塩大盛りがサービスとか思ってる。
塩漬けみてゃあにしちまあ。
せっかくの鮎が台無し。

「ひゃあ、鮎の香りもヘチマもあったもんじゃにゃあっ!塩削らにゃあと喰えにゃあじゃんかっ!」

みてゃあな・・・。
 やっぱ完璧だった。

「美味ゃあーっ!美味ゃあーっ!美味ゃあーっ!」

大騒ぎ!
あんまし騒ぐもんで、大将が来た。

「内緒ですけど、もしよろしければお代り出来ますよ・・・」

確かに1匹じゃ足りにゃあ。
鮎好きは2〜3匹軽く行っちまあ。
 でもなー。
やっぱ止めとく。
結構、料理が多いし・・・。
まだ御飯もあるし・・・。
今から焼いてもらったら間が空いちまあし・・・。

「ありがと。でも、又次回の楽しみに取っとくわ」

ちぃっと後ろ髪引かれる。

「又、毛が無くなっちまあで・・・」

 最終コーナー。
蒸物は冷製茶わん蒸し。
これが又凝ってる。
焼き鱧ががっつり。
生姜ベースのあんかけ。
そこに枝豆がパラパラと・・・。

「まあ、良くこんな料理を考えるモンだで・・・。こりゃぜってゃあ冷製が美味ゃあな」

感激モノだった。
 いよいよ、もう1つのウリ。
土鍋御飯。
さっきから奥の方で文句言ってた。
ぐつぐつ・・・。
板さんが茶碗を持って来た。

「これから御飯を4通り味わって頂きます。まずはこれをどうぞ!」

まずは炊き上がる寸前。
アルデンテ状態を味見する。

「まさにアルデンテ。でも噛むと甘味が良くわかるなー」

 続いて炊き上がった直後。
蒸す前の状態。

「やっぱ美味ゃあコメだってこんが良くわかるなー。早く喰いてゃあっ!」

んで、蒸し上がった御飯。
美味かった。
上品で、ほのかな甘味。
最後はオコゲ。
鍋底のパリパリを食す。
ちぃっと醤油をたらして・・・。

「ひゃあ、たまんにゃあなー。ホンットに幸せだ!」

 一緒に漬物、ちりめんジャコ、シジミ汁も出た。
これもたまんにゃあ。
どれも最高。

「このぬか漬けも美味ゃあっ!絶品だでっ!」

板さん、嬉しそう。

「これは、自分が毎日ヌカ床に手を入れてますんで、自分のエキスが浸み込んでます」

 デザートは自家製アイス。
香ばしいトウモロコシアイスを最中に。
最中の皮がやたらに美味ゃあ。
訊くと、出す寸前にもう一度焼いてるそうな。

「まあ、芸が細きゃあっつーか、仕事が丁寧っつーか・・・」

ほうじ茶も美味ゃあ。
京都から取り寄せてるそうな。
 近来稀に見る大当たりだった。
スタッフが良く出来てる。
大将や女将さんが出来てるんだべな。
心憎い気遣い。
でも必要以上に介入しにゃあ。
とっても居心地がいい。
しかも料理は絶品。

「そりゃあ、ミシュラン君も星つけたくなるべーじゃ。文句なし【☆3つ】+αだでっ!」