【富士山】のこと 29

  • 2km

 最後の2km。
地獄だった。
こっからは砂礫道が無くなる。
その代わり樹林ん中。
無理くりこさえたような山道だった。
気の根っこがボサボサ。
段差も多い。
その段差は60cmっくりゃあある。
 救いは樹林。
木の枝に掴まりながら進む。
木の枝は黒光りしてる。
誰しも同じようなこんになってんだべなー。

「きゃあ〜〜っ!」

前の方歩いてた女性がコケた。
木の枝に足をとられたらしい。
危にゃあなー。
時々、登山道と交差。
登山道ははるかにいい。
良く整備されてる。
夕べは暗くてわかんなかった。
下山道とは雲泥の差。

「こんなひでえ道、無理に作んなくていいだにっ!
疲れ果てて下りてくるのに危にゃあで・・・」

  • ゴール

 遂にゴール。
【古御岳神社】が見えた。
鳥居も見えた。
もう息も絶え絶え・・・。
足が上がんにゃあ。
無事帰還を感謝しなきゃ・・・。
ちぃっとホンキで手を合わせた。

「血じゃらけで、汚にゃあ手で申し訳にゃあね・・・」

 こっからは石段。

「何で、ここの石段はこんなにできゃあだねっ!」

まともに正面を向いて下りらんにゃあ。
カニ歩き・・・。
すれ違う衆が増えて来た。
こいから登る衆だで。

「ひゃあ、そんなのん気な顔してられんのは今のうちだで・・・」

 やっと山荘まで来た。
倒れる寸前・・・。
山荘前の休憩所はヒトがいっぴゃあ。
おばちゃんちが呼び込みしてる。

「お疲れさまあ〜。どうぞ、休んでって下さ〜い!どーぞー・・・」

思わず引きずり込まれそうに・・・。