【富士山】のこと 20

  • 米寿

 いい景色も見た。
我々のちょっと前にじさまがいた。
1人連れ。
そこそこの年齢には見えた。
じさまの順番が来た。
後ろのアベックにカメラを託す。

「すみません。このボードと一緒にお願いします・・・」

 プラカードを作って来てた。
石碑の横にボードを持って立つ。
思わずみんな見る。

【88歳、富士山登頂23回目、2012年8月20日】

へ?

「え〜〜〜〜っ!」

一瞬、目を疑っちまあ。
どよめきが起こる。
続いて拍手っ!
あちこちから賞賛の声が挙がる。

「おめでとうございま〜す!すごいですねー!」

じさまもご満悦。
いやあ、いいモン見せてもらったで・・・。

  • 割り込み

 「最高地点」に登った。
っつーこんは後は下るしかにゃあ。
それはそれでてゃあへん。
しかも【五合目】まで・・・。

「まあ、ぼちぼちとゆっくり帰ゃーるべーじゃ!」

「測候所」の石段を下る。
行列の横をゆっくり。
脚が痛くてカニ歩きだで・・・。
行列の長さはさっきと変わってにゃあ。
突然、妙齢のばさま達が前から登って来る。

「ひゃあ、何だ?こいつらあ・・・?邪魔っ臭しゃあな・・・!」

 ひょっとして・・・。
案の定だった。
そのまんま行列の前の方に割り込み。
もちろん、みんな不愉快そうな顔。
でも何も言わにゃあ・・・。
確かに面倒い。
触らぬカビに祟りなし・・・。

「ったく・・・。ニシだかミクニだか知んにゃあけんど、暗澹たる気持ちになんなー」