【富士山】のこと 15

  • 「赤富士」

 すぎゃあ景色だった。
世の中の色が一変する。
下界はどんどん光を得て色づく。
周りの斜面は真っ赤に染まる。
残雪も真っ赤。
鳥居も、毛唐も、ミクニも真っ赤。

「ひゃあ、現地『赤富士』ってえのも初めて見たで!」

 感動モノだった。
舎弟も痛みを忘れて見入ってた。
写メを送る。
そーだ!
写メを送っちゃるべーじゃ。
待てよ・・・。

「ひゃあ、まだ5時だで・・・。こんな時間に送ったら後で張り倒されちまあで・・・」

温存。
 元気が出た。
いいモンを観れた。
あとひと息で頂上だで・・・。
舎弟もご来光観たから帰ろうとは言わにゃあ。
意地で登る覚悟らしい。

「どーしても頂上の焼印は持って帰ゃーるだよっ!」

よしゃ、よしゃ・・・。

  • 【登頂】

着いた・・・。
遂に来た。
良くぞ、たどり着いた。
騙し、騙し、牛歩で来た。

「ひゃあ、ぜってゃあムリだと思ったけん、良く来れたよなー」

舎弟も感慨深げ・・・。
3720m。
山頂の小っちぇえ鳥居をくぐる。
「久須志(くすし)神社」。
主祭神浅間大神
「木花之佐久夜毘賣命(このはなさくやひめのみこと)」が祀られる。
女性の神様だそうな。

「みぃ〜んな、ここで無事登頂出来たで感謝すっだよ」

 左手には4軒の山荘。
「山口屋支店」、「扇屋」、「東京屋」、「山口屋」が並ぶ。
ほとんど観光地の雰囲気。
すぎゃあヒトだった。
舎弟は一目散に焼印に走る。

「やっぱ、頂上の焼印を押さにゃあと下りらんにゃあで!」