「ゾウのタクシー」のこと【1/12】
- 早朝
クルマから城が見えて来た。
山の稜線に貼りつくように城壁が見える。
朝日を浴びて、赤く輝いてる。
「ひゃあ、朝日を浴びたマッターホルンを思い出すなあ・・・」
ちがーだろー。
道中、ゾウさんの行列を追い越した。
朝早いせいか、足取りが重そう。
まだ眠ってゃあのかも・・・。
アタマから鼻にかけて模様が描いてある。
「ひゃあ、きっとあれが『ゾウのタクシー』なんだべな・・・」
とってもびみょー。
別にゾウさんに乗らなくてもいいべや。
自分で歩っても行けるべや。
「ひゃあ、何だか気が引けるなあ・・・」
でも、大変な観光収入。
ゾウさんのエサ代でもあるんだべ・・・。
「ラクさん」から業務連絡。
「城に着いたらゾウ使いにチップあげて下さい。2人で100ルピー。
もっとくれと言うヒトもいます。でも払わなくていいね。それがあります」
ゾウ使いはどーでもいい。
ゾウさんにスイカの1つもあげたいなー。
- バランス
順番にゾウさんに乗った。
乗り場用に架台が設けてある。
まずはここに行列。
乗り場で声のできゃあオッサンが仕切ってる。
「ひゃあ、そこの若ゃあし、そら使ってんじゃにゃあで。
とっととこっちぃ来るだあよ!」
っとか何とか言ってんだべ。
ゾウ使いは、ゾウさんの頭に乗ってる。
ムチを片手に、如何にも強欲そうな顔してる。
背中に荷台が取り付けてある。
一応、金属のフレームで囲ってある。
乗客は2人ずつ横座り。
フレームにつかまって、バランスを取る。
仕切りのオッサンがうっしゃあ。
乗客にあ〜だこ〜だと指示する。
ウチの夫婦はそれぞれ反対向きに乗せられた。
「ひゃあ、何でこーなんだべ?」
何故?
バランスを考えたつもり?
ナゾを孕んだまま、出発。