行方不明者のこと
- 行方不明
集合時間になった。
が、またまた行方不明・・・。
今さら、驚きもしにゃあけど・・・。
「久美」さんが必死に何度も数を数えてる。
どー見ても「聖ワシリー寺院」前の木陰には36匹しかいない。
4匹不足・・・。
「ナターシャ」さんは呆れ顔。
オニのような顔で仁王立ちである。
気の毒な「久美」さんが広場を駆け回ってる。
イヤホンガイドを使って、必死に呼びかける。
「集合時間になりました。この聞こえましたら、至急『聖ワシリー寺院』前にお越し下さい!」
悲痛な呼びかけもだんだん聞こえなくなる。
相当、遠くまで探しに行ってるらしい。
確かに近所にはいそうもないなあ・・・。
- 「ロブノエ・メスタ」
「聖ワシリー寺院」のすぐ前に何かあった。
石造りの円形の遺跡みたいなモンだった。
ガイドブックを引っ張り出してみる。
かろうじて出ていた。
400年以上も昔のモノらしい。
皇帝の布令を読み上げた演壇だったそうな。
このそばに処刑場もあったとか。
待ち人来たらず。
ヒマこいて、この遺跡を観てきた。
ま、ふつーなら観ないべ。
ケガの功名と言うべきか・・・。
その代わり、「聖ワシリー寺院」内部観光はオアズケ・・・。
みんな、ただボッケ〜っと待ってるだけ。
待つこと、30分以上。
やっと「久美」さんが4匹を見つけて来た。
「久美」さん、気の毒に汗びっしょり・・・。
4匹は、70代の夫婦と、女性2人連れだった。
「あっはっはあ〜。迷っちったよ〜。あっはっはあ〜・・・」
てんめえ〜・・・!
- スルー
ったく・・・。
大した神経である。
謝りもしない・・・。
勝手に「イヤホンガイド」をオフにして集合場所を聞いてなかった。
勝手にバスを降りた場所に集合してたそうな。
「ナターシャ」さんは完璧にキレた。
「もう時間がありませんっ!観光は終わりですっ!早くバスに乗って下さいっ!」
あ〜あ、とうとう「聖ワシリー寺院」の内部はスルー。
そんな事なら、勝手に観ておけば良かったなあ・・・。
騒げば、困るのは「久美」さん。
誰も何も言わないで、黙々とバスに向かう。
怒る気にもなんない。
自分達の親っくらいの年寄りである。
要介護軍団から目が離せない事だけは良くわかった。