行方不明者のこと
- 行方不明
集合場所に戻っても、まだ揃ってない。
何でも、1人完全に行方不明なんだとか。
それも夫婦連れの奥方が見当たらなくなったそうな。
「久美」さんが飛び回ってる。
入国審査ゲートの向こうを覗き回ってる。
どっかのばーちゃんが声を掛けて来た。
「両替されたんですか?」
「はい。レートは高いですけどね・・・」
「どーやってやるんですか?パスポートとか出さなきゃダメなんですよね?」
「いや、簡単ですよ。何もしゃべる必要もないし、お金だけ渡せばOKですよ・・・」
「日本円じゃダメなんですよね。ドルとユーロはどっちがいいんですか?」
「そう、ドルかユーロですね。計算したら、どっちもレートは同じでした」
堰を切ったように、要介護軍団が両替所に向かった。
行方不明者の事なんかどこ吹く風・・・。
”まいったなあ〜。後で高かったとか文句言わないべなあ・・・。”
「久美」さんは、まだ走り回ってる。
何だか気の毒になっちゃう・・・。
やれやれ・・・。
- 保護
ようやく、行方不明者が見つかった。
まだ、70歳にはなってなさそうなご夫婦の奥方。
2人ですったもんだやってる。
「だいだい、お前はだなっ!」
「そんな事言ったって・・・」
やれやれ・・・。
うちわモメの前に、やるべき事があるべやっ!
このヒトビトは、”38人を待たせた!”
っとかいう感覚は無いんだべな・・・。
確かに入国審査は個人個人。
この奥方は審査後、ターンテーブルを素通りして外に出ちゃったとか・・・。
ご夫婦でスーツケース1つだった事も災いした。
っとは言えなあ・・・。
”大丈夫かあ〜・・・?”
- 現地ガイド
現地ガイドも、バスの運転手も相当待たされた。
2人でタバコ吸いながらイライラ・・・。
現地ガイドは「ナターシャ」さん。
日系3世とか言ってたけど、見た目はまったくの日本人。
でも、日本語は何だかカタコト音がしてる。
オバハン、くわえタバコで荷物の積み込みを手伝ってる。
ま、体型的にはスーツケースの2つや3つ、ヘでもないって感じ。
服は中国国旗みたいな赤。
顔はぶん殴られたみたいな塗装をしてる。
いやあ〜、すぎゃあオバハンだった。