珍しくもない本の雑感82

 【青年】

  • 三たび

 相変わらずのクセである。
ど〜も、一度読んだ作者にハマる。
もちろん良かったからだけど・・・。

やっぱ、「森鴎外」はすぎゃあっ!

 今度は「青年」
「鴎外」が書いた長編小説の初っ端らしい。
やっぱ、明治のゆったりした時間の流れが心地いい。
分類すると「教養・発展小説」ってなジャンルになるらしい。
青年が成長してゆく過程を描き、かつ「人生とは何か」を問うてるそうな。
ふう〜〜〜ん・・・。

  • 詞(コトバ)

 やっぱ、味わい深い表現は多い。

帳場のぼんぼん時計が、前触(まえぶれ)に鍋に物の焦げ附くような音をさせて、大業(おおぎょう)に打ち出した。

何か、情景が浮かんでくる。

初音町の往来へ向いた方の障子に鼠色の雲に濾(こ)された日の光が、白らけた、殆ど色神(しきしん)に触れない程な黄いろを帯びて映じている純一が部屋へ、大村荘之助が血色の好い、爽快な顔付きをして這入って来た。

お〜っ!
これぞ古典っ!

  • 若さ

 「青年」らしい場面も幾つか・・・。

「きょうは話がはずんで、愉快ですね」
「そうさ。一々の詞を秤の皿に載せるような事をせずに、なんでも言いたい事を言うのは、我々青年の特権だね」

何か言わなくてはならないと思って、いいたくない事を言う位は、所謂附合いの人の心を縛る縄としては、最も緩いものである。その縄にも縛られずに平気で黙りたい間黙っていることは、或る年齢を過ぎては容易に出来なくなる。大村と純一とはまだそれが出来た。

若い心は弾力に富んでいる。どんな不愉快な事があっても、自己を抑圧していても、聊(いささ)かの弛(ゆる)みが生ずるや否や、弾力は待ち構えていたようにそれを機として、無意識に元に帰そうとする。

 そっかあ〜。
やっぱ、不愉快を引きずるのは、若さが遠のいた証拠か・・・。
「鴎外」も、主人公・純一に自己愛(ナルシズム)を投影してるそうな。
純一は、遅まきに描かれた「若き自己の願望像」だとか・・・。
ま、気持ちはわかるなあ・・・。