さくらのこと

  • 1周年

 さくらの時季だべや・・・。
この時季は、情緒不安定になる。
ここ数年のこったけど・・・。
いつの間にか、さくらは心ざわつかせる花になっちゃった。
 去年の4月1日は、東京へ向かった。
不安も希望も無かったなあ・・・。
ただ、義務感だけ。
満員電車に揺られて70分。
こんな近くにヒトがいっぱいいる景色は初めてだった。
 新しい職場。
新入社員なら、心構えも違ったべな。
既に知命も過ぎたジジイである。
残りを指折り数えるだけ・・・。

”やっと指が1本折れたぜっ!”

  • 花見

 1年前の3月末。
旧会社の片付けに追われてた。
この街の事業所で、総出で後始末してた。
4月からは、みんなそれぞれの道を歩まなきゃならん。
切ない後片付け・・・。
 さくらが満開だった。
事業所の庭にも立派なさくらがあった。

「せっかく桜が満開なのに・・・、ちょっと花見しようぜっ!」

 みんなが手を止めた。
誰かが買い出しに行った。
誰かが倉庫から荷物用のパレットを引っ張り出して来た。
あっと言う間に立派な宴会場が・・・。
ちょっとほろ苦い、でも最高に美味い酒だった。

  • 同期

 こんな花見もある。
この酒を最後に、みんな散り散りに・・・。
ある者は早期希望退職を選択して、悠々自適の生活に。
ある者は合併会社の大阪の事業所に。
そして、ある者は東京の本社事業所・・・。
これが一番しんどかったかも・・・。
 我々が勤めた事業所は閉鎖された。
建設してからちょうど10年。
ま、しょーがない。
合併会社の半分の施設は要らなくなる。
でも、何故こっちを捨てるんだ!
ってな気持ちは拭えない。
いつも思ってること。

”散るさくら、残るさくらも散るさくら・・・”