国際会議のことⅢ

  • 試練

 トラバ組に試練がやって来た。
合併会社の荒波に揉みくちゃにされながら6ヵ月半。
今まででも、十分な試練だった。
今回は、更に引きつりそーな試練だった。
 何だか知らない間に、新しいビジネス・プロジェクトに引きずり込まれた。
それも、海外の会社と組んだビジネス。
いろんな取引条件やら、契約やら、ややこしい事この上ない。
しかも、全部英語だべさ。
 毎日、英語だらけのメールが舞い込む。
見ると吐き気がする。
健康に良くないので、ぷちっとか消す。

”知らなかった事にしよう・・・。”

甘かった・・・。

  • 会議

 いつの間にか、国際会議がセットされてた。
毛唐が日本に押しかけて来るという。
来れない毛唐は、テレカンファランスで参加するとか・・・。
会社のカンファランスルームとかいう所が用意された。
事前打ち合わせとかが始まった。
 プロジェクトリーダーとかいうのがのたまう。

「このセッションは、君の専門分野なんで全て任せるから、会議を自由に仕切って下さい」

おいっ!
ちょっとおっ、ちょっとちょっとお〜っ!
誰が専門家じゃいっ!

この4月からの俄か担当者なのに・・・。

「ちょっと待って下さい。英語なんか話せませんよ。通訳でも入れてくれるんですか?」
「うん、通訳は面倒だから入れない事にした。よろしく頼むよ」

 このヒトビトの感覚はちょっと違うらしい。
どーも、英語を特別な技能と思ってないフシがある。
”英語は話せない”って言うと、ちょっとタドタドしいっくらいに思ってるらしい・・・。

  • 作戦

 ちょっと喰いついてみた。

「ホンットに話せないんですよ。会議の進行なんてとっても無理っ!」
「でもさあ、この専門分野の話は我々じゃわかんないんだよね。頼むよ・・・」
「・・・・・・」

 さて、困った。
そんな事言われたって、無い袖はノースリーブっ!
どー考えたって、無理なモンは無理っ!
会議まであと2週間しかない・・・。
 一計を案じた。
まず、英語版で詳細な資料を作るべ。
辞書と首っ丈なら何とかなるべ・・・。
取引上、必要な項目を全部提案して、”Yes or No”で答えを求める。 
 こいつを事前に毛唐に送りつけておく。
もちろん、プロジェクトリーダーを通じて・・・。
答えが”Yes”なら、当日は確認だけ、”No”なら、事前に代案をもらう。
代案の答えを会議までに用意しときゃいい。
毛唐と、身内のプロジェクトの両方への根回しである。
これなら、ほとんどしゃべらナイトでもOKだんべ・・・。

  • 遠視

 決して老眼じゃないっ!
遠視のタチの悪いヤツである・・・。
辞書の小っちぇえ字がぜんぜん見えない。
メガネ外して、ほとんどかぶりつきで読む。
ウィークエンドの大半をこれに費やした・・・。
 嫁さんが呆れてる。

「もう10年昔だったら、良かったのにねえ・・・」

そりゃ、そーだ・・・。
もう10年若かったら、死に物狂いで勉強したかも・・・。
ま、所詮”タラレバ”の話だけど・・・。
 とにかく、この試練を乗り切るっきゃない。
まずは、完璧な資料を用意しないと・・・。
根回しの必需品だべや。
後は、作戦通り進んでくれる事を祈るばかり・・・。