珍しくもない本の雑感75(2)

 【伊豆の踊子

  • 方解石

 「三島由紀夫」の言葉を借りると、そーなんだと。
大きな結晶をどんなに砕いても、同じ形の結晶に分かれる・・・。
川端小説は、どの部分を截断(セツダン)しても作品の構図が出来上がる。
まれな天稟(テンビン)だとか・・・。
ふう〜〜〜ん。
 それにしても「三島由紀夫」ってこんなに理屈っぽかったかな・・・?
ギャグかと思えるっくらい。

これは実は純粋に選択され限定され定着され晶化された資質の、拡大と応用と敷衍(フエン)の運動の軌跡であって、問題はこうした魔術的な内的普遍性をもった資質が、どんな風に発見されたかという微妙な経緯、ならびにその能力の花ひらいて行った過程にある。

わっかんな〜いっ!

  • 踊子

 確かに「伊豆の踊子」は方解石かも・・・。
急激な抑揚は少ない。
全体にまったりとした空気が流れてる。
ある種、「草枕」の空気に似てるかも・・・。
 ヒトの心根も巧く描かれてる。
旅芸人を軽蔑し、学生をちやほやする茶屋の婆さん。
びみょーに警戒しながら、旅は道連れという芸人のおふくろ。
花のように笑う、はにかみ王女の踊子・・・。
別れに人目もはばからず涙する主人公。

 いやあ〜、これぞ古典だなあ〜。

つくづく思った・・・。
かつて、日本人にはこんなココロの機微があった気がする。
今や、完全に絶滅したべな・・・。

  • 法華の太鼓

 ”だんだんよく鳴る・・・”じゃないけど・・・。
伊豆の踊子」は大正11年〜15年の作品だとか。
その後、昭和2年に「温泉宿」が誕生。
これが又、何とも・・・。
 空気は、まったりしてない。
温泉宿の女中と酌婦たちの流転が延々と描かれてる。
ちょっと残酷な気もするくらい・・・。
著者の成長って書かれてたけど、複雑怪奇。
かなり、ずしりと肚に残った・・・。
 次が「抒情歌」
昭和7年の作品だそうな。
これが又、何とも言いようがない・・・。
一人称で、浮世離れしてて、カルトがかってて・・・。
更に強烈に印象に残った。

  • 厭人癖(エンジンヘキ)

 最後は、「禽獣」
ま、「三島由紀夫」が”名作”と言ってるくらいである。
強烈な読後感だった。
そりゃ、相当肚をえぐられるような気がした。
どうしたら、こんな作品が出来るんだべ?
 この読後感の原因の1つは動物だんべな。
作品には、厭人癖が漂ってるそうな。
確かにそーだんべな。
だからと言って、動物に救いを求めてるってんでもない。
描かれてる動物に対する愛情が感じられない。
そこが許し難い。
 何で、こんな作品が・・・?
ちゃあ〜んと背景があった。

2、3歳で父と母を、7歳で祖母を、そして15歳までに、たった1人の姉と、祖父とをことごとく死界に送った人の哀しみは、残された作品に探るほかはない。

そーだったんだ・・・。