同窓会のことⅢ
- 「R子」
「ガタ」が電話を代わった。
「もしもし・・・」
女性の声がする・・・。
「誰だかわかる?」
「ん〜〜〜、わかんないなあ〜〜」
っとか言いながらも想像を巡らす。
”多分・・・。”
同級生で覚えてる女性なんて、かなり限られてる。
”きっと、アイツだんべな・・・。”
っとは思いつつも、あんまりテキトウな名前も言い難い。
「『R子』です・・・」
「お〜っ!懐かしいねえ〜!わざわざ東京から出掛けてったんだ・・・?」
「そうよ。こんな時しかみんなに会えないもの・・・」
「ま、そりゃそ〜だ・・・」
「顔が見れなくって残念だわ。忙しいの・・・?」
「う〜ん、いろいろねえ・・・」
やっぱ、予想通りだった。
「Bケ」に続いて出てくるとなりゃ、ま、そーだべな・・・。
今夜は沼津の実家に泊まるという。
そっか、実家もそのままあるんだ・・・。
- 鉄アレイ
「R子」の話が続く。
「最近、スポーツクラブに通っててね・・・」
「ほ〜、健康的じゃない」
どっかの嫁さんと、おんなじ生活スタイルなんだべか・・・?
「クラブにね、鉄アレイなんかがあるの・・・」
「ふう〜〜ん・・・」
真面目に筋トレか何か、やってんだべか・・・?
「その、鉄アレイを見るとね・・・」
「うん・・・?」
「昔の千本(センボン)の部屋を思い出しちゃうのよ」
「は・・・?」
「確か、部屋に鉄アレイとか、エキスパンダーとか転がってたよね〜」
「あ〜、そー言えば・・・」
部屋の景色が浮かんできた。
まだ、10代半ば。
ドラマーや格闘技にも憧れて、身体を鍛えてた頃だもん・・・。
部屋にはレトロな真空管ステレオがあって、いつもレコードがかかってた。
ドラムセットに、ギターに、鉄アレイに、マンガに・・・。
足の踏み場も無かったんじゃないかな・・・。
- 千本
18歳までの記憶は全部ここが舞台。
沼津市の千本地区・・・。
常盤町とか、緑町とか、旭町とか、郷林とか・・・。
千本公園ってな立派な公園もあった。
同窓会メンバーも、みんな産地はここいら辺・・・。
思えば、凄まじい家だった。
100%木製で、重たい瓦屋根。
きっと、火事で燃えても、100%ヘンな有毒ガスは発生しなかったべな。
ガラス窓は、木枠でレールの上を車輪が走るヤツ。
時々、レールから外れて大騒ぎになった。
何より、掃除するって概念が無かった気がする。
掃除ってえのは、1年に1回、年末にするモンと思ってた。
ニンゲン、変わるモンである。
結婚当初、嫁さんが毎日掃除や洗濯するのを見て、異常な潔癖症かと思ってた。
今じゃ、当ったり前になっちゃった。
それにしても、あの家に平気で他人を招いてたんだ・・・。
恐ろしや・・・。
- 東京
電話が最初の「Bケ」に戻った。
やれやれ・・・。
これ以上、何か出てきたらイスから転げ落ちそうだ・・・。
「どっきりカメラ」じゃないんだから・・・。
それが、同窓会の魅力なんだべか?
っとすれば、次は又40年後じゃないと、感動がないべや。
「オレは沼津にいるもんでさあ〜」
どうやら、「Bケ」も引きずり込まれたっぽい・・・。
やっぱ、同窓会の発端は同級生「ぴら」の電話だったという。
彼が精力的に電話をかけまくって下地を作ったそうな。
確か、我が家に電話をもらったのは6月・・・。
相当なエネルギーだったべな・・・。
「今度、東京で飲もうかね?」
「おう、娘も日本橋勤務になったから一緒に行こう」
「いいね」
「ウチの娘がさあ〜、これが又美人でさあ・・・」
娘さんが、無事に嫁に行けることをお祈りしながら電話を切った。