同窓会のことⅡ

  • 不審電話

 ウィークエンドの夜。
草木も眠る21:00過ぎ・・・。
突然、電話が鳴った。

”ちぇっ!又かよっ!”

 何回か、呼び出し音が続く。
その後、留守番電話に切り替わる。
冷たいオバサン声が流れる。

「只今、留守にしております。御用の方は、ぴ〜っと言う・・・」

 この1ヶ月っくらい、不審電話が続いてる。
無言電話である。
受話器を取っても、相手は何も言わない。
どっかの事務所みたいな、ざわついた物音だけが聞こえる。
留守番電話にしておくと、執拗に掛け直してる。
あんまりシツコイんで電話線を抜いちゃう。
何だべ・・・?

  • 二次会?

 留守番電話に声が入った。

「もしもし、沼津の『井U』ですけど・・・」

あれっ!
ひょっとして、同級生の・・・。
 嫁さんが急いで受話器を取る。
嫁さんも共通の同級生である。

「あれ〜、『Bケ〜』?珍しいじゃない。突然、どーしたの?」

通称「Bケ」なんである。
何だか、ごちゃごちゃの末、電話を代わった。

「せっかくの送別会なのに、ちゃんと来なきゃダメじゃない」
「送別会・・・?」
「あ、違った。同窓会だ。懐かしいヒトが集まってるよ〜」
「あ〜、そっかあ〜、今日だったんだ・・・?」

 相変わらずである。
鋭い滑舌に、アルコールが追い討ちをかけてるらしい・・・。
同窓会かあ・・・。
時間から察するに、多分二次会の会場なんだべな。
すっかり記憶の彼方に消えてた・・・。

  • 「ガタ」

 鋭い滑舌は、饒舌だった。

「今日は、『O竹先生』も来てるんだよ〜」
「へえ〜、懐かしいねえ〜」
「今、電話代わるよ・・・」

 電話口からごちゃごちゃ声が聞こえる。

「O竹先生〜、もにゃもにゃ・・・」
「お〜、あの漫画家になった・・・?」
「いや、むにゃむにゃ・・・」

”漫画家あ・・・?”
 「O竹先生」かあ・・・。
通称「ガタ」と言う。
中学生の狭い世界とは言え、憧れの存在だった。
酒と、歌と、詩と、絵と、テニスと、チャップリンと、ギャグが大好き・・・。
毎年、年賀状はステキな木版画を作って送ってくれる。
奥さんとの合作で必ず短い詩が添えてある。
”あんな大人になりたいモンだ!”
40年前には、そー思ったモンだ・・・。

  • 「まお」

「もしもし、O竹です」
「いやあ、お久しぶりです。何十年ぶりでしょう?」
「40年だよなあ。いやあ懐かしいなあ・・・」

 最初は半信半疑だった。
毎年、何百人もの卒業生を送り出す身である。
40年前の何百分の一が、特定できる訳がないべ・・・。
ま、同窓会の席だし、酔いも手伝って・・・。
っと思いながら話してた。
 ふと「ガタ」がヒトコト。

「ところで、『まお』は元気にしてるの・・・?」

ひっくり返りそうになった。

”覚えててくれたんだ・・・!”

こちらからも、毎年の年賀状だけは欠かさず送ってた。
必ず、版画に「まお」が登場してた・・・。
 思えば40年前。
元々、「ガタ」の影響を受けて始めた木版画である。
毎年、うんうん唸りながら続けてきた。
少なくとも、「まお」は印象に残っててくれたんだ・・・。
あ〜、びっくりした!
でも、ちょっと感動・・・。