珍しくもない本の雑感74
【最後の将軍 ―徳川慶喜―】
- 大御所
言わずと知れた、メジャー中のメジャー。
歴史小説の大御所。
日本の経営者が一番好んで読む作家。
じゃあ〜〜ん!
「司馬遼太郎」
何故か、今まで1冊も読んだ事がなかった。
何となく食指がいごかなかった。
あんまりにも有名過ぎるのかな・・・?
ま、元々が偏食だしなあ・・・。
話題性はある。
周囲と本の話をすれば、かなりの確率で登場する。
ネタ的には読んどいた方がいいんだけど・・・。
要はへそ曲がりなんだべな。
- 試食
「司馬遼太郎」って言うと、長編。
全10巻とか、全8巻とかいうイメージがある。
「坂の上の雲」、「竜馬がゆく」・・・。
本屋でもで〜んっと構えてる。
それも食指がいごかなかった理由の1つかも・・・。
いいモンを見つけた。
「最後の将軍 ―徳川慶喜―」
MHKの大河ドラマにもなったヤツである。
300ページっくらいでお手軽。
試食品にはちょうどいいべ・・・。
ってんで、買ってきた。
さて、”初シバ”だっ。
- 主題
出だしは興味津々・・・。
人の生涯は、ときに小説に似ている。主題がある。
うん・・・。
あんまり新味はないなあ・・・。
でも、これが書かれたのは60年代。
まだ日本語を大切に使ってた頃なんだから・・・。
主題がある。
そりゃ、小説家が言うんだから間違いないべ。
「徳川慶喜」の主題は・・・?
それは”世の期待”だという。
これほど”世の期待”をうけ続けた人物は類まれとか・・・。
ふう〜ん。
何となく「慶喜」って色が薄いイメージだった。
きっと、お人好しで、後始末を押し付けられちゃった。
「整理回収機構」の代表やらされちゃったみたいな・・・。
大分、このイメージは変わった。
- あとがき
あとがきが面白かった。
著者は、「徳川慶喜」がず〜っと書きたかったそうな。
そして、やっと念願かなった。
無用のことだが、あとがきを書く。この小説をかき終えてからも、なお私の胸にさざめきだっている波がおさまらず、それをわずかに、あとがきを書くことによってしずめたい。(略)
私のうかつであった。「慶喜」が将軍であった期間はわずか2年たらずでしかなかった。であるのにこれほど多くのことばがかれのために必要だったとは、当初気づかなかった。それでもなおいま、書き足りなかった悔恨がのこっているのは、どうしたことであろう。
この作品は「文芸春秋」に単発で載せるはずだったそうな。
それが書き終わらなくって、お代わりした。
それでもまだ終わらなくって、再お代わり。
それでも何でも、まだおさまらなくって、あとがきになった。
よっぽど入れ込んでたんだべな・・・。