珍しくもない本の雑感73(2)

  【美しい老年のために】

  • 調度・財

 これは、思いっきり納得。

―賤(イヤ)しげなる物、居たるあたりに調度(チョウド)の多き。硯(スズリ)に筆の多き。

 長い人生を生きてくると、身の回りに物が増える。
いつの間にか、家中ガラクタで一杯。
「兼好さん」、それは「賤しげに見える」という。

―身死して財(タカラ)残る事は、智者(チシャ)のせざる処(トコロ)なり。

 「兼好さん」は妻も子もなかった。
んで、常に自分の死後の姿を念頭において老年を生きた。
著者も子がなく、早くそうすべきだと思うそうな。
でも、なかなか実行出来ない。
恥ずかしいことだとか言ってる。
そーは言っても、なかなかねえ・・・。

  • がらん洞

 「幸田文」の話も出てた。
老年、1人暮らしだったそうな。
その時、常に心がけてた事。

「少ないのが有難いと思っています。(略)
老いの1人暮らしでは、不自由ない程度にしか持たぬのが、気持ちがかろやかで毎日の家事が楽です。
がらん洞を、汚くないようにして住んできました」

 部屋ってえのは空間があるから有用。
当ったり前の事なのに、何故かこれが出来ない。
 でも、我が家は出来そうな気がする。
嫁さんはモノを捨てる天才。
何でも、何のこだわりもなくなく、バンバン捨てる。
これは天賦の才かも・・・。

  • 物欲

 さて、どうだべ・・・?
日本人の性行が変わった?
借金性向から、貯蓄性向に変わった・・・?
モノを大切にするようになった・・・?
クルマを買い換える年数も延びてる・・・?
バブルの反省・・・?
あり得ない。
 物欲一辺倒から、精神志向に・・・?
良寛ブーム」がその表れ・・・?
日本人も、精神文化面に目覚めたか・・・?
そりゃ、著者の買いかぶりだべさ。
日本人は、どんどん二極化してるだけ。
変わったのは、著者の周りの方々だけかも・・・。

  • 義理

 著者が常に口ずさんでいる言葉。

―されば、人、死を憎まば、生(ショウ)を愛すべし。存命の喜び、日々に楽しまざらんや。

 人が生きている今の時を楽しまないのは、死がすぐそこにあるのを知らないからだ。
死が近いのを知ったら、どうして今を楽しまずにいられよう・・・。
ってな意味だそうな。
 著者は60歳を過ぎてから、あらゆる義理を欠く事にしたとか。
冠婚葬祭、盆暮れ、無用な付き合い・・・。
すると、世間から相手にされなくなる。
その代わり、大きな気持ちの自由を得たという。
 世間に合わせる為に、無理にテレビを見る必要も無い。
電話も出ない。
碁が好きだから、町内の碁会所通いの日々・・・。
全て自分本位で暮らせるそうな。
それって、いいかも・・・。