珍しくもない本の雑感71(6)

 【サロメの乳母の話】

  • 饗宴

 最後の2編の舞台は地獄。
地獄は責め苦の世界、なあんて話は真っ赤なウソ。
住み心地バツグンなところなんだそうな。
でも現世には秘密。
バレると、地獄恐さに品行方正に振舞ってるヒトビトがキレちゃう。
でも、最近は情報がモレてるんだべか・・・?
 ここではしばしば宴が・・・。
出席者は豪華。

    1. エジプトの女王「クレオパトラ」
    2. ビザンチン帝国の皇后「テオドラ」
    3. スパルタの王妃「ヘレナ」
    4. ソクラテス夫人の「クサンチッペ」
    5. フランス王妃「マリー・アントワネット
    6. ゲストの「江青女史」

地獄には、天国に送られるタイプの退屈な人間はいない。
毎日宴を開いても人選に事欠かないそうな。

  • 人民服

 「江青女史」は固かった。
人民服姿で、料理にも手をつけない。
どうも地獄に来た事が不本意だったらしい。
でも、こーゆーキャラはいじられ易い・・・。
 悪女どもが、みんなでいじくる。
「もっとキレイなシナ服を着ればいいべや・・・」
江青」はイライラしていた。
「シナ服は嫌いだべさ・・・」
 「アントワネット」が誘う。
「少し、お酒を召し上がったらいいべや?」
「クサンチッペ」が煽る。
「あなた、紅衛兵を何千万人も扇動できたなんて、すごいべやっ!」
 トロイの「ヘレン」が口を挟む。
「私も、男たちの戦争の原因になったべさ」
「テオドラ」がボソッとつぶやく。
「あれは、あなたのもくろみじゃないべや・・・」
 締めくくりは「クレオパトラ」
「『ヘレナ』に政治的才能はないさ。私には国の将来がかかってたべや」
「アントワネット」が混ぜっ返す。
「政治とか、経済とか、面倒いべ。パーティや宝石なら任せて!」
 遂に「江青」が口を開いた。
「だっから、革命が起こったんだべさっ!支配階級が堕落して・・・」
「アントワネット」反撃。
「あら、支配階級の堕落ぶりは、そっちも同じだったべや!」
クレオパトラ」がまとめてる。
「王政でも、共産主義でも、誰かが支配階級になるのは同じだべさ」
江青」は次の日に人民服を脱いだそうな。

  • 第二夜

 さて、次のゲストは誰にしようか?
悪女どもが集まって相談してる。
「ねえ、『江青』の余勢を駆って、東洋人がいいべや」
「そうすっと、日本人だべか・・・?」
「あそこに、招待に値する女なんかいるべか?」
 1人ずつ検討する事になった。

    1. 天照大御神」・・・神さまをお呼びしてもいいけど、やっぱ面白い人でないとね・・・。
    2. 持統天皇」 ・・・7人いた女帝中で最も悪名高いけど、やってる事は当然の自衛手段じゃない・・・。
    3. 「北條政子」 ・・・源頼朝の押しかけ女房で、名前は立派だけど百姓上がりの頭の悪い女じゃない・・・。
    4. 日野富子」 ・・・室町幕府八代将軍「足利義政」の妻でカネ集め好きは面白いけど、母親の情におぼれたところが幻滅ね・・・。
    5. 淀君」    ・・・「豊臣秀吉」の側室で、日本女では数奇な運命を持った筆頭だけど、政治的才能はなかったみたいね・・・。

結局、日本には悪女も、悪妻もいないらしい。
一同諦めかけた頃に、地上から声が・・・。

「ボク、1人知っているんです。悪妻としてなら、イイ線行きそうな日本の女を!」

塩野七生」のご亭主だそうな・・・。
うん、思いっきり納得!
ご馳走さまでした。