珍しくもない本の雑感71(2)

 【サロメの乳母の話】

 って誰だ?
舞台はユダヤローマ帝国の属州だった。
頃は、多分、紀元前ちょっとかな・・・。
ユダヤを統治していた「ヘロデ王」の娘が「サロメ
つまり王女だったそうな。
 ある時、死海のほとりに預言者が現われた。
ヨハネ」という名の預言者は「ヘロデ王」を罪人と非難した。
スネに傷を持つ王は苦しんだ。
かと言って放ってもおけず、「ヨハネ」を監禁した。
でも、巷には救世主待望のムードが盛り上がってる。
殺しちゃう訳にもいかんざき。
 そこへ「ティベリウス皇帝」一行が視察に訪れた。
ヘロデ王」は「ヨハネ」の事を隠しながら、懸命にもてなした。
でも、都会のご一行は喜んでくれない。
うがうがしながら、冷ややかに見てる。
父親を助けたのは「サロメ」だった。

  • 褒美

 「ヘロデ王」は娘に頼んだ。
「何でもあげるから、ちょっと踊ってくれんか?」
サロメ」は美しい踊りを披露した。
ローマの客人たちもこれには見とれたそうな。
 「サロメ」は客人の前で言った。

「褒美に『ヨハネ』の首がいただきとうございます」

ローマのご一行は満足してユダヤを発ったという。
なかなかやるじゃん・・・。
 キリスト教徒たちは「サロメ」を憎んだ。
自分たちの聖者を殺した女である。
神の罰がくだされて、のたれ死んだと言いふらしたらしい。
でも、これは真っ赤なウソ。
ローマ人と結婚して、ティヴォリに住んだ。
っと、「七生乳母」が言っている。

  • 「ペネロペ」

 ってえのは「オデュッセウス」の女房。
貞淑な、女の鑑といわれてる。
亭主が「トロイ戦争」に出掛けてから20年間。
ずっと家で亭主の帰りを待った。
 その「ペネロペ」の本心は・・・?

”冗談じゃないわよ!、っざっけんじゃないわよ!”

っだったらしい。
女の鑑も、実はキレてた。
オデュッセウス」が帰国してすぐ離婚したって説もあるとか・・・。

 「オデュッセウス」は滔々と漂流中の話をした。
「トロイ戦争」に勝って、帰国する途中から漂流した。
地中海をあちこち10年彷徨ってた。
確か「ホメロス」の「オデュッセイア」がこの漂流記だったような・・・。
 「ペネロペ」の言い分。

「『オデュッセウス』が漂流した先が、そろいもそろって、官能的な地中海世界の中でも、風光明媚、気候温暖、食べ物は美味く、美人の産地として名高い土地ばかりではありませんか」

「そのうえ、夫の物語りには、証人が一人もおりません。家来たちは、食人種か1つ眼の巨人だかに食われてしまったとかで、イタケに帰ってきたのは、『オデュッセウス』1人だけなのです。ほんとうは、『カリプソ』だか『キルケ』だか、そういう女たちに夢中になって、故国にもどる気を失ったにちがいないのですが・・・」

「あの奇想天外な漂流記も、寄り道を正当化するため考えついた、あの人のでっちあげだということ。木馬の計を考えついたほどの男でございますよ、『オデュッセウス』という男は・・・」

 さすが、「七生おばさん」
すごい想像力というか、史料の分析というか・・・。
さすが、学生時代に「ホメロス」を原語で読破した豪傑だべさ。