珍しくもない本の雑感68(2)

 【ガセネッタ&シモネッタ】

  • ピアノ

 終始「駄洒落」で埋まってる訳じゃない。
なかなか味わい深い話も多い。
ショスタコービッチ」の話はなかなか良かった。
ピアノの指導の話である。

「世の中にはピアニストを名乗る輩が掃いて捨てるほどいるが、そのうちの大多数は、ピアノ(小さな音)が弾けた例がない。世の中に蔓延る自称ピアニストたちは、ぼくに言わせりゃ、メゾフォルティストだね。メゾフォルティストになるのが、一番簡単だってことだ」

んなるへ・・・。
 著者も耳が痛かったそうな。
通訳者の職業病である「誇張癖」
何とかメッセージを伝えたい一心で、つい話を誇張しちゃう。
我々も同じだべさ。
表現の幅を持つってえのは大変なこってある。

  • 師匠

 著者の師匠は「徳永晴美」さんというそうな。
この方は駄洒落を吐かない日など1日もないらしい。
不可能なはずの駄洒落の同時通訳もやってのけるとか・・・。
この方の話もなかなか・・・。

【初対面】
「万里ちゃん、お客さんに『ああ、同時通訳の米原さんですね』なんて初対面で言われたら、なるべく”ド”と”ジ”のあいだを詰めて、『はい、ドジ通訳の米原です』と聞こえるように受け答えした方がいいよ。なにしろ、同時通訳に失敗はつきものだからね。とくに米原さんはね」

でも、優しい師匠らしい。

【懐疑心】
通訳の最中、「キチンと訳しているのだろうか」という疑いの眼差しで冷たく見つめる顧客もいる。とても居心地が悪い。
「そんな時は、オシッコに行きなさい。ちょっと長めにトイレにいて、出ていってごらん。君を見る顧客の眼はすっかり変わっている。君はなくてはならない人になっているはずだよ」

 いい師匠につけるかどうかの差は大きい。
又、いい師匠につくのも本人の才能だんべな・・・。

  • 意味

 この「徳永」師匠はいい事言ってる。

「通訳は字句ではなく、意味を訳せ!」

日本人がガイジンに奥さまを紹介する。
多分、「愚妻です」っとか言う。
でも、通訳は間違っても「My stupid wife」とか言ってはいけない。
人間性を疑われる可能性大だから・・・。
そりゃ、そーだ。
 ガイジンが日本人に奥さまを紹介する。
きっと「我が”最愛の”妻です」っとか言う。
日本人はヘタすると吹き出したりしそうである。
 通訳は”最愛の”はカットしてOK。
欧米人は、自己と自己の近親者を口を極めて絶賛する。
賛辞は”枕詞”なのでカットしてOKなんだとか。
なるへ・・・。

  • 寡黙

国際会議でインド人を黙らせ、日本人に語らせることができたら、議長としては大成功

 これはそのスジの常識らしい。
インド人をロシア人に差し替えても真理だそうな。
ロシア人の”長広舌”は風土病らしい。
日露対談とかは大変。
著者も辟易させられた経験が多々あるとか・・・。
 日本人の寡黙は有名。
著者の経験ではしゃべる比率は1:5っくらいだという。
するとロシア人は不安になっちゃう。
”何か不満なんだべか・・・?”
”ひょっとして、理解されてないんじゃないべか・・・?”
この不安は更にロシア人を多弁にする。
こうして永遠に悪循環が続くらしい。
 多分、相手がナニジンでも同じだべな。

沈黙は金

なんて文化なんだからしゃーない。
最近はずいぶん日本人離れしたヒトが増えたけど・・・。