珍しくもない本の雑感67(3)
【王妃 マリー・アントワネット】
- 「バスチーユ」
フランス革命の象徴。
1789年7月14日に「バスチーユ」が襲われた。
蜂起した市民は、もはや暴徒だった。
商店を襲い略奪を始め、手がつけられなくなった。
愚民がどんどん増長する。
血の臭いに酔って、自分を見失ってゆく。
勢いだけで何でも出来る気になっちゃう。
何が目的なのかさえ、わからなくなってゆく。
大衆ってのはこーゆーモンだ。
ってな描写が実に巧みだった。
- 譲歩
1歩譲歩すれば、更に100歩を要求される。
愚民はそーゆーモンだ。
マリー・アントワネットはそれに気づいた。
が、善人のルイ16世は譲歩に譲歩を重ねた。
譲歩は断頭台まで続いた。
「国民を裏切ることは出来ない」
そう言い続けて、国外逃亡も出来なかった。
”愛すべき国民”なんて、いなかったのに・・・。
国民議会が創設された。
議会によって、「バイイ市長」ってのが任命された。
無秩序な市民軍から、正規国民衛兵が創設された。
司令官に「ラ・ファイエット」ってのが就任した。
でも、いずれも暴徒と化した愚民を抑えるチカラなんぞなかった・・・。
- 「巴里祭」
7月14日。
革命記念日を日本では「巴里祭」と呼ぶとか。
第一回目の記念日に、ルイ16世は宣誓したそうな。
「朕は憲法を維持し、法を施行せしむる。朕が国家によって委任された権限のすべてを用いることを国民に誓う」
群集からは拍手と大歓声が起こったという。
マリー・アントワネットは目をつぶっていたとか。
1年前の群集の声を思い出していた。
「万歳!、万歳!」と連呼する歓声。
この声は簡単に変わり得る。
「殺せ!殺せ!」
「オーストリア女に死を!」・・・。
- 「博愛」
フランス革命の3大支柱の1つ。
っとされていた「博愛」は誤訳だった。
これは「同士愛」「身内愛」が正しいそうな。
多分、その方が納得感がある。
愚民は増長し続けた。
公然たる殺戮、「9月の虐殺」が始まった。
対象は「同士」以外。
身内以外なら誰でも殺しちゃうってこった。
とってもわかりやすい。
貴族や、教会が対象になった。
これがフランス革命の本質だった。
さすが、著者もその部分をまったく外してなかった。
教科書って不思議だ。
何故、あんなにフランス革命が美化されてたんだベ?
- スペクタクル
この本を読んだ動機は「博愛」だった。
「七生おばさん」は”誤訳”と言い切ってた。
それがどう表現されているべか・・・?
その面では満足した。
でも、それ以上にトクした気分だった。
大歴史スペクタクルとして十分に面白かった。
子供たちよ。わたくしは美しく優雅に死んでいきます。仏蘭西の元王妃として・・・。
王妃は最後の最後まで、優雅さを保った。
貧農の娘「マルグリット」は泣いたそうな。
恨み骨髄だった「マリー・アントワネット」は望み通り死んだ。
すべてが終わった・・・。
何故泣くのか彼女は自分でもわからなかった。
著者らしいエンディングだべや。