グルメのこと16

  • ご招待

 仕事の取引先からご招待があった。
今まで逃げ回ってた。
「ご招待されても、何もお返し出来ませんよ」
「ま、そー言わずに是非1度お願いしますよ・・・」
こんなやり取りを繰り返してた。
 とうとう年貢を納める事にした。
担当者にも立場っつーモンがあるべ。
条件をつけた。
「気楽なお店で軽く食事するだけなら・・・」
テキも考えた。
肩肘張らない雰囲気の店を探してきた。
値段も高いのか安いのかわかんない。

  • 創作料理

 和洋折衷の店だった。
飯田橋の駅から歩って2分。
”旬菜料理 「めん房」”ってな名前だった。
ご夫婦で切り盛りしている割には、結構な広さだ。
テーブルとカウンターで軽く30人以上は座れる。
 全席、予約で一杯だった。
お馴染みのファンが多いらしい。
料理は”おまかせ”のコース料理。
しかも、各テーブルで料理の内容が違ってた。
良くこなせるモンだと感心した。

  • ”おしながき”

 ちゃあんと毛筆書きの”おしながき”が置いてあった。
後から思い出すのに、とっても助かる。

【前菜:こだわりトマトのファルシ仕立て】
完熟トマトをくり抜いて、ウニとイクラが詰めてあった。そのトマトにワケギが2本、耳のように突っ立ってる。大ぶりの白磁の皿の真ん中にこれがポツンと載ってて、ハーブの効いたドレッシングがサラッと振ってある。見るからにとっても仏メシっぽい。素材の味だけで十分に美味しかった。
【前菜?:瀬戸内より 鱧ちり】
氷の入ったパフェグラスに湯引きした鱧が立ってる。付け合せにキュウリのスティックと谷中生姜が1本ずつ、野菜スティック風に添えてあった。組合わせは何とも言えずビミョー・・・。鱧はとっても淡白で、ちょこっと着いてたトマトソースの味の方が勝ってた。あと、キュウリと谷中は別途、味噌つけて喰いてゃあ衝動にかられる。ま、初夏の風物ってこって・・・。

【黒毛和牛のサーロインと春大根、ほうれん草のスープ仕立て】
これ又、ビミョーな組み合わせだった。ふろふき大根風にコンソメで柔らかく炊き上げた大根とほうれん草は絶妙の塩加減で美味かった。その大根の上に2cm×8cmっくらいのサーロインステーキが2キレ載ってて、更にカリカリニンニクのトッピング付きだった。これはこれで美味しかったんだけど、どっちかっつーと別々に喰いてゃあ気がした。ま、その辺が創作料理ってこって・・・。
【お造り:オオトロ、ヒラメの縁側、松坂牛】
これも凝った角皿に上品な刺身が点々と並ぶ。霜降りの牛肉の刺身、たっぷり脂の乗った縁側、好きなヒトにはこたえらんないべな。ああ、メバチの赤身が喰いてゃあ・・・。
【主菜:松坂ビーフシチュー】
招待者の一番のオススメがこの1品だった。どれどれ・・・っと喰ってみると、確かに独特のシチューだった。街の洋食屋のシチューとも、ホテルのシェフの自慢のシチューとも、市販のインスタントシチューとも違う。何だベ・・・?肉はまっつぁか!まっさか違うわねえ・・・。すごいわねえ・・・。でも、一番印象に残ったのはプリプリした食感かな・・・。
【焼物:”明石浦より”いかなごの焼じゅう】
炭火の入ったコンロと大皿に並んだ15尾のいかなごが登場。コンロでお好みに焼いてポン酢で喰うってな趣向だった。1尾喰って思い出した。いかなごってえのは、あの”釘煮”のサカナじゃんか!柔らかくって、淡白で、上品なサカナで、炭火焼きの趣向も悪くない。っが、招待客の時は、あずましくないので、止めた方がいいかも・・・。

【自家 きゅうりの漬物】
すんごい家庭的な漬物だった。味も懐かしい濃いめの糠漬けで子どもの頃を思い出してしまった。和洋折衷のキーポイントだべな。
讃岐うどん
小振りなザルうどんだった。シェフは関西出身という事で、さぞ本場のシコシコ麺が・・・ってほどでもなかったけど、ま美味しゅうござんした。お代わりもご自由にどうぞってな気遣いが、嬉しいヒトには嬉しいべな。
【デザート:アイスクリーム】
どうやらアイスも自家製らしい。ちょーウルトラハードだったけど、味が濃くって美味かった。

 ご夫婦は神戸で店を開いてたそうな。
それが12年前にあの大震災に遭って放り出された。
理由は知らないけど、飯田橋で復活。
今では支持者がいっぱい。
そんな背景が後からわかった。
味は決して濃くないけど、コテコテ感が漂うのはその所為か・・・。
 しかも、お値段は片手に満たないらしい。
って聞くと確かにコストパフォーマンスは高いかも・・・。
どの品も、オシャレ過ぎない家庭的な創作料理だった。
濃い〜い素材がふんだんに使われてる。
予約客で一杯だったのも頷ける。
特に若い衆と、「団塊の世代」には好評かも・・・。