そらのことⅤ

  • 大冒険

 そらの散歩に行った。
当犬にしたら、大冒険である。
まず、部屋のドアから外に出るまでが大変。
おどおどと周囲を窺いながら、おっかなびっくり・・・。
 エレベーターまでの廊下も未知の世界。
くんくんしながら容易にゃ進まない。
エレベーターのドアのすき間がおっかない。
覗き見ては固まってる。
 マンションの外に出たら、異次元の世界。
でっかいニンゲンがのっしのっし通る。
道路は鉄のカタマリがうなりを上げて疾駆する。
新鮮な外界なんだべな・・・。

  • 個体差

 ってえのはあるモンだ。
まおお坊ちゃまとは全然違うキャラである。
お坊ちゃまはテッポダマだった。
外に連れてった途端に狂喜乱舞だった。
嬉々として走り回ってた記憶がある。
 環境の違いもあるべな。
何ってったって北海道。
街中でも、いたるところに広々とした公園がある。
キレイな芝生で縦横無尽に走り回れる。
ワンコも多い。
すぐに公園デビューしてた。
 見たところ、そらは内弁慶らしい。
外に出ると、借りてきたイヌ状態である。
クルマの音、犬の遠吠え、子どもの声・・・。
何でも強烈に反応して固まる。
しばし、社会勉強でんな・・・。

  • イヤシ

 日曜日の、この界隈は大渋滞。
俗に「Oリンピック渋滞」と呼ばれている。
我が家の前の道路はズラ〜っとクルマの列。
 そこへ、そらの大冒険。
歩道を毛玉が転がってるとしか見えない。
それも、おどおどしながら・・・。
転がるように走ったかと思うと、ビタッと止まる。
ちょこっと首を傾げる。
 渋滞のクルマのヒトビトが皆同じ顔をしてる。
指差して笑ってるヒトもいる。
誰ひとり難しい顔してるヒトはいない。
 そりゃそーだべな。
見てりゃ、理屈抜きに可愛い。
誰でも癒されるべ・・・。