珍しくもない本の雑感62

 【野火】

  • あと引き

 自分的読後感には2通りある。
何となく、あとを引いて同系統の本を読みたくなる時・・・。
そして、まったく気分転換したくなる時・・・。
今回は、あと引いてしまった。
毒を喰らわば・・・みたいな勢いで読んでしまった。
 こーゆーのは、何となくあとを引くよなあ・・・。
「黒い雨」に続くのは、やっぱこれだしょっ!
っみたいな・・・、
「野火」
大岡昇平」作。
戦争文学の代表的作品とされてる。

  • 確信

 ”自信が確信に変わった。”
って面白い言い草やなあ・・・。
わかったような、わかんないような・・・。
ま、何しか確信を持って言える。

今の若人には絶対に読み継がれない!!

 中途半端かも・・・。
多分、現実感が無いから胸の痛みは感じない。
でも、バーチャルの世界ではもっとエグい事が常識になってる。
そのどっちでもない世界。
読んでもらえないべなあ・・・。

  • 芸術

 自身の体験から書かれた作品。
考えたらゾッとする話なんだけど・・・。
出だしの描写なんか、やっぱ芸術家やなあ・・・って思わせる。
こんな極限状態でも、こんな表現が出来るんだ・・・。
ヘンなとこに感心しちゃった。
 敗色濃厚なフィリピン戦線。
こんな場面で結核に冒された主人公の彷徨記。
部隊はイモを数本渡して主人公を放り出した。
逃げるのに足手まといってなこって・・・。
ま、そんなもんだべな・・・。
 主人公は山の中を歩き回った。

病気は、治療を望む理由のない場合何者でもない。
私は喉からこみ上げて来る痰を、道傍の草に吐きかけ吐きかけ歩いて行った。
〜中略〜
比島の熱帯の風物は私の感覚を快く揺った。マニラ郊外の柔らかい芝の感覚、スコールに洗われた火焔樹の、目が覚めるような朱の梢、原色の朝焼と夕焼、紫に翳る火山、白波をめぐらした珊瑚礁、水際に陰を含む叢等々、すべて私の心を恍惚に近い歓喜の状態においた。

この辺が、実体験なのか、創作なのか・・・?

  • 極限

 飢えの極限。
んな〜んて現代人は誰も知らない。
それどころか、飽食で喰いモンの4割は捨ててる。
想像のカケラも出来ない世界だんべ。
 主人公は、その極限状態にあった。

少し前から、私は道傍に見出す屍体の1つの特徴に注目していた。海岸の村で見た屍体のように、臀肉(しりにく)を失っていることである。
最初私は、類推によって、犬か烏が食ったのだろうと思っていた。しかし或る日、この雨季の山中に蛍がいないように、それらの動物がいないのに気がついた。

げっ!
まさか、こりゃ創作だんべ・・・。

  • 狂人

 そんなバナナ、っと思いつつ・・・。
どこか、割り切れなさが残るのは、著者の狙い通りか・・・?
終戦後、日本に帰国した主人公は精神病院に入る。
っという設定が何とも割り切れない。
夢か、現か、幻か・・・。
この後味を残した事で、強烈な印象の作品になったと思う。
 最後の方に出て来た一文はすごかった。

戦争を知らない人間は、半分は子供である。

・・・かも知んない。
どーしても知りたい向きは、どーぞ最前線へ。
別に知りたくない我々は、今の世の中でオンの字である。
飽食でも、格差社会でも何でもいい。
このまま行こ〜ぜっ!