「カルタゴ計画」のこと

  • 身体1つ

 ニンゲン、起きて半畳、寝て1畳・・・。
生まれた時は身体1つ。
死ぬ時も身体1つ。
確かに・・・。
 何にもない・・・。
身体1つ。
何モノにも、とらわれないって生活が可能か?
そりゃ難しいべや。
いろんなシガラミがあるもん。
近づけるっくらいなら可能かも・・・。
 ある優雅なリタイア生活の話を聞いたことがある。
この老夫婦は、毎年クルーズ船で世界中を旅してる。
たまに日本に帰ってくるとホテル住まい。
カネだけあれば、家なんか要らないって言い切る。
そっか・・・。
ホテル住まいを考えりゃいいんだ。

  • ホテル

 ホテル住まいを考えてみた。
ホテルだから、寝ることや喰うことには困んない。
滞在型のリゾッチャホテルと思えばいい。
とりあえずコインランドリーもあるから洗濯も出来る。
最低限の衣類がありゃいい。
服が飽きたら捨てて、買い替えりゃいい。
 メシは基本的に外食。
ローテーションしながら喰えば、飽きることもないべ。
コンドミニアムタイプなら、ミニキッチンもある。
お茶っくらいは部屋で飲めばいい。
基本的に食器なんか最低限あればいいって事になる。
 テレビはある。
ラジオだってあるべ。
パソ子は必要だべな。
ほとんどの情報はパソ子1つで用が足りそう。
間違って、仕事する時にも要るべな。
 テニスコートやプール・ジムもあるべ。
運動不足にはなんないべ。
真面目に通ってれば、何とかブタになるこたあない。
何だ、今の生活と大して変わんないじゃん・・・。

 思えば、ベトナムから帰って来た直後だった。
嫁さんが突然、宣言した。
「家具を買い替えるっ!」
「え、何で?」
「だって、もう古いから・・・」
きっぱりと、固い決意に燃えた表情だった。
 嫁さんから、とうとうと「カルタゴ計画」の説明があった。
「2本のリビングボードは捨てるのっ!」
「へ?」
「もっと部屋をスッキリさせたいのっ!」
「・・・」
 何を言っても通じそうも無い。
渋々、作戦を立て始めた。
レアもののカセットテープはMDに移して処分かな・・・。
マニュアル類や、確定申告関係の書類は捨てられないべや。
飾ってある旅の想い出たちはどうすんべ・・・?
きっと、ためらいも無く捨てるんだべな。
しょーがない。
せめて、写真でも撮っとくかな・・・。

 何で、そんなにムキになってんだか・・・。
何だベ?
風水かな・・・?
良くわかんないけど、やたら真剣ゼミだった。
 ”古くなった家具は捨てなきゃなんない・・・。”
これがまったく理解出来ない。
家を新築した機会に・・・っとかなら、まだちったあわかる。
まして、あと数年で家買わなきゃなんないのに・・・。
 もって生まれた性格の違いだべか?
一神教多神教の差だんべか・・・?
思えば、万物に愛着が湧いてしまうタチである。
すべての事物に神が宿る・・・。
 やっぱ、解決策は1つしかない。
”何も持たないこと”
これに限る。
”無い子に苦労はしない。”
”無い袖はノースリーブ。”
ニンゲン、死ぬ時ゃ身体1つ・・・。