珍しくもない本の雑感59(6)

 【昭和史ー戦後篇 1945−1989】

 占領政策もいよいよ佳境に入った。
1つは「新憲法」問題。
日本政府は決して改憲に積極的じゃなかったらしい。
”アメリカもそこまで要求してこないんじゃないか?”
ってんで安穏としてた。
 日本人の得意ワザだべさ。
”臭いモノにはフタ”
”あったら困ることは無かったことにしよう・・・”
戦時中も全てこの方式で、膨大な犠牲者を出したんだべや。
 でも、やっぱ「マッカーサー」にズバッと言われたそうな。
憲法は改正を要する。しかも早急にだっ!」
”出来なきゃ、アメリカがやる”っと脅された。
ひゃあ、参った・・・。
 日本政府の意見はまとまらない。
なま殺しの軍人もどきがゴロゴロしてる環境である。
まとまる訳がない。
結局、業を煮やしたGHQに主導権を奪われちゃったとか・・・。
これも情けない・・・。

  • 教育政策

 昭和20年12月31日。
GHQからすごい指令が出たそうだ。

    1. 一切の教育機関における「修身」、「日本歴史」、「地理」の3課目を直ちに廃止し、総司令部より許可あるまでは再開を許さない。
    2. 3課目にかんする文部省の法令などを全部廃止する。
    3. 教科書と先生の持っている教本を全部回収する。
    4. 日本政府が希望するのなら代案を提出せよ。

 「教育勅語」が全否定されたのはちょっとわかる。
「いったん緩急あれば義勇公に奉ず・・・」は要らないべ。
でも、道徳心の教育も否定する必要はないべや。
これも政府は”へいへい”と受け入れたそうな。
 この話は、かなりショッキングだった。
そっかあ!
そーだったんだ!
日本人はこの時に”精神”を抜かれちゃったんだ。
”日本人離れ”の始まりだったんだべな・・・。
 「授業が減ったぜ、バンザ〜イっ!」
子どもの反応は、こんなモンだったべな。
それ以来、着々とニンゲンの質は落ち続けた。
歴史教育も途切れちゃった。
世界に冠たる歴史音痴民族はこうやって作られたんだ・・・。
これが一番強烈な占領政策だったかも・・・。

 昭和21年1月4日。
またまたGHQから、ひっくり返るような指令が出たそうな。
戦争に関与したリーダーたちを片っ端からクビにするってこって・・・。
追放にも区分けがあった。

  1. A項=戦争犯罪人
  2. B項=職業陸海軍軍人、陸海軍省などに勤めていた職員など
  3. C項=極端なる国家主義
  4. D項=大政翼賛会、翼賛政治会などの有力者
  5. E項=日本の〈東南アジアや朝鮮や満州などへの)膨張に関係した金融機関・開発機関の職員 ― 満州国の職員など
  6. F項=占領地の総督や行政長官などの官吏 ― 東南アジア諸国に日本から占領地支配のために派遣されていた職員など

 ってえ事は日本の主な人物は総退陣。
軍部はもちろん、政界、官界、経済界の幹部が消えちゃったそうだ。
政党なんか、ほとんど解散状態になったとか・・・。
 ここでも日本人らしさを発揮したそうだ。
”昨日の友は今日の敵”
お互いにチクリまくって、周りを陥れたそうな。
「御身大事」、「疑心暗鬼」であさましいモンだったらしい。

 新聞やラジオはGHQの監視下に置かれた。
戦時中の日本政府より厳しかったらしい。
新聞の変わり身もすごかったとか・・・。
8月15日を境に、忍法”手のひら返しっ”
「これからの日本人は民主主義的に生きなきゃ・・・」
 みんな怒ったらしい。
作家「高見順」氏の日記。

「新聞は、今までの新聞の態度に対して、国民にいささかも謝罪するところがない。詫びる一片の記事も掲げない。手の裏を返すような記事をのせながら、態度は依然として訓戒的である。等しく布告的である。政府の御用をつとめている。
敗戦について新聞は責任なしとしているのだろうか。度し難き厚顔無恥。・・・・・」

ま、”厚顔無恥”は今に始まったこっちゃないけど・・・。

 占領政策の次のステップは思想改革だったそうな。
政治、経済、制度改革はメドがついた。
日本政府は何でも”言いなり”だった。
”今こそ、日本人の精神構造にもメスを入れるべ!”
ってんで、GHQの命令が飛んだらしい。
 新聞は「太平洋戦争史」ってのを連載。
日本の侵略戦争を事細かに報じたらしい。
ラジオでも「真相はかうだ」ってのが流れたそうだ。
よく出来たドキュメンタリー・ドラマだったらしい。
南京虐殺」とか、「バターン半島死の行進」とか・・・。
大本営発表」の逆バージョンだったらしい。
 でも、皮肉なモンである。
こういう思想改革はヘンな方向に向かったらしい。

「これらは非道な軍国主義者たちがやったことだ。一般の日本人は徹底的にこの軍国主義者の横暴によって支配されていたのであって、何も知らない国民はなんと哀れであったか・・・」

 これで、みんなが勘違いしちゃったらしい。
「そっか。俺たちは悪くなかったのか・・・」
「何だ、軍国主義者たちのせいだったんだ・・・」
んで、「道徳」も「歴史認識」も「反省」も捨て去ってしまった・・・。
何となく今の日本がうなづける気がする・・・。
続きは又・・・。