和食屋の雑感14

  • ネタ切れ

 「ねえ、どこに行こう?」
「まかせるよ・・・」
「まかせるじゃないわよ。どっか提案してよ」
「ん〜〜〜ん。じゃ『I狩』は・・・?」
「やだ、アブラっこいっ!」
「だったら、訊くなよ・・・」
 恒例の週末風景である。
もう完全にネタが切れてしまった。
ここんとこ、「みずほの」と「丸子(ワンズ)」ばっかし・・・。
時々、「パットゥーラ」とかが入る。
やっぱ、「てんとう」が転倒したのが痛かった。
 さすがの嫁さんもネタ切れらしい。
いつもなら、アタマの中が真っ黒なのに・・・。
それでも、カラ雑巾をしぼり出した。
 「富田」はどう?」
「ん〜〜ん・・・、『富田』ねえ・・・」

  • 蕎麦居酒屋

 蕎麦を売り物にしてる。
でも、一品料理もあって居酒屋風でもある。
一度、会社の仲間と行った事があった。
不味くは無かったけど、何だか蕎麦ツユがなあ・・・。
 前っから、何度も嫁さんから提案を受けてた。
でも、何とも言えない不安が・・・。
ま、いっか。
一度行ってみりゃわかる。
”百聞は一食にしかず!”
 ってんで、行ってみた。
暖簾をくぐってみて、ひっくり返った。
びっちり満席である。
「カウンターでよろしいですか?」
テーブル4卓と、カウンター6席、我々が座って満席。
イチ、ニイ、サン・・・。
「シンジラレナ〜イっ!」

  • オーダー

 夫婦2人で回してる店だ。
常連さんばっかみたいだけど、そりゃ大変である。
その辺を読んで、一気にオーダーした。
幸い、ビールは「アサヒスーパードライ」だった。
「っかあ〜っ!ちっくしょ〜っ!」
やっぱ、こいつのナマは最高だべさ。

 【お通し】
「タコワサビ」の小鉢が・・・。
なるへ。
これなら、手間要らずである。
味は、土産物屋のそれで、かなり辛い。
 【ナスのピリ辛煮】
なるへ。
ナスをじっくり煮込んで、作り置き出来る。
これも手間要らずか・・・。
どーでもいいけど、和食にあるまじき辛さ。
 嫁さん、ソク、ギブアップである。
全部、こっちに自動転送される・・・。
「タコワサビ」2皿と、「ド辛ナス」で口の中はバクハツ。
つい、ビールのお代わりしなきゃいられない。
”そーゆー作戦か・・・?”
 【サンマのミリン干し】
何故か、干物の皮の面が上になって出て来た。
”?”
ひっくり返すと、理由がわかった。
ちょーウェルダンだった。
ってゆ〜かあ、半分炭になってんじゃん。
 嫁さんとヒソヒソ・・・。
「ねえ、ふつー、これを客に出すかい?」
「忙しいし、アットホームなムードだから言えないけどね・・・」
「ふつーは焼き直しだべやっ!」
「し〜っ!」
 【もつ煮】
嫁さん、苦手な一品である。
でも、その嫁さんがやむなく手を出し始めた。
ま、しょうがない。
ここまで、今んとこ喰えるモンが無い。
空腹に耐えかねたと見える。
 もちろん、喰うのは根菜とコンニャクだけ。
モツ本体は一切喰わない。
どーでもいいけど、しょっぱいっ!
ほとんど、味噌の味しかしないべやっ!
ノドが乾きっぱなしである。
 【揚げ蕎麦の野菜あんかけ】
これは自信作らしい。
壁に張り紙もしてあるし、値段もちょっと高い。
これは薄味だった。
”今までのは何だったんだっ!”
ってえくらい、薄いってゆ〜かあ、抜けてるってゆ〜かあ・・・。
辛さとしょっぱさで爆発してた口直しにはなった。
 味の解説がとっても難しい・・・。
蕎麦湯と干し海老のダシが飛び出してる。
塩っ気は薄い。

嫁さんは、どうも手数が少ない。
やれやれ、やっと喰い終わったぜ・・・。

  • 蕎麦

 仕上げに蕎麦をオーダー。
不安は拭えないけど、嫁さんはロクに喰ってないし・・・。
作戦を練った。
「せいろ蕎麦」を2枚と、「FOX蕎麦」
これで、冷たい蕎麦と暖かい蕎麦を味わえる。
 出て来た蕎麦を見て又、ひっくり返った。
「せいろ」はえりゃあ遠慮がちだった。
3回すくったらお仕舞い・・・。
”おいおい、神田の「砂場」じゃあるまいし・・・。”
この田舎の街でみんなこれで満足してるんだべか?
 しかもツユがイケない。
”思い出したっ!”
蕎麦そのものは、そこそこだった。
でも、ツユにクビを傾げてしまったんだっ。
何だかコクのないヘンな甘さの蕎麦ツユだった。
合生甘味料みたいな後味なんである。

  • コストパフォーマンス

 嫁さんが眉間にシワを寄せてる。
やっぱ、ツユがお気に召さない様子である。
暖かい蕎麦のツユも同じだった。
コクが無くって、ヘンに甘くて、後味が悪い・・・。
決して安くない値段なんだけどなあ・・・。
 「お会計、お願いします」
嫁さんが憮然として勘定しに行った。
これで、6千数百円だった。
まったくの「低パフォーマンス」だった・・・。
 やっぱ、「石狩」で押しちゃえば良かったかなあ・・・。
ワンパターンだけど「みずほの」でも良かったなあ・・・。
「アフターフェスティバル」である。
”百聞は一食にしかず!”
 家に帰ると嫁さんがヒトコト。
「あ〜、お腹すいた〜」