珍しくもない本の雑感57(3)
【愛の年代記】
- 侮辱
「ビアンカ・カベッロ」は次の1編にも登場した。
見事、トスカーナ大公妃になった後のこと。
先妻の娘「レオノーラ」の結婚話が持ち上がった。
マントヴァ公国の世継ぎ「ヴィンチェンツォ」の花嫁候補に挙がった。
ところがマントヴァ公からケチがついた。
「情人あがりの女に養育された娘など困る」
「ビアンカ」が長年、愛人暮らしだったのは周知の事実。
っとは言え、この侮辱は許せない・・・。
「ヴィンチェンツォ」はパルマ公爵の孫「マルゲリータ」と結婚した。
ところが、花嫁に肉体的欠点が発覚した。
結局、2年間の”白い結婚”の後、離婚せざるを得なかった。
再び「レオノーラ」にお鉢が回ってきた。
- 復讐
「ビアンカ」は復讐に燃えていた。
”あの恨み、晴らさでおくものか・・・!”
イチャイチャモンモン・・・。
肉体的欠陥は「マルゲリータ」だけだったのか?
「ヴィンチェンツォ」の能力を証明したら、婚約を成立させよう。
小意地の悪いこって・・・。
早速、試験台探しが始まった。
誰でもいいって訳にゃいかんざき・・・。
そして彼女に白羽の矢が立った。
「ジュリア・デリ・アルビツィ」っという娘だった。
フィレンツェでも有数の旧家「アルビツィ」の姓を持っている。
この家の三男と召使との間に生まれた私生児だった。
彼女は21歳。
生まれてから一度も「アルビツィ家」の門をくぐったことが無かった。
毎月の手当てが本家から届いていた。
そんな彼女に本家からお呼びがかかった。
生まれて初めて「アルビツィ家」の豪邸に向かった。
- 屈辱
話を聞いて、「ジュリア」は屈辱に震えた。
そりゃ、そーだべな。
すっごい格差社会である。
今の日本なんか比べ物になんない。
勝ち組、富めるモンは何でもありなんである。
でも、屈辱に震えてもどーにもなんない。
逆らって、手当てを打ち切られたら喰えない。
路頭に迷うほかない。
尼僧院に入れてもらっても下女としてこき使われる・・・。
試験会場はヴェネツィアに決まった。
毎日が忙しくなった。
その日の為に、衣装やら寝衣やら宝石やらの見立てに追われた。
「ジュリア」にとっては夢のような世界だった。
残酷な役目さえなければ・・・。
- ポジティヴ・シンキング
「ジュリア」は前向きだった。
とりあえずは試験台かも知れない。
でも、もしかしたら・・・。
「ヴィンチェンツォ」は自分を愛してくれるかも・・・。
自分を忘れられなくなるかも・・・。
1回こっきりじゃなくって、愛人にしてくれるかも・・・。
そしたらどんなにいいか・・・。
時々、会いに来てくれるだけでいい。
夢はどんどん膨らんだ。
「ヴィンチェンツォ」に会う日を心待ちにするようになった。
ものすごいポジティヴ・シンキングである。
いいかも・・・。
結果は、そんなこたあ無かった。
でも、大金と無難な結婚相手が用意された。
きっと、ポジティヴに幸せに暮らしたんだべな・・・。
続きは又・・・。