珍しくもない本の雑感57(2)

  【愛の年代記】

  • 回想録

 いかにもイタリアらしい話である。
1827年ってゆ〜から、今から180年ばかり昔のこと。
フィレンツェで貴重な史料が見つかったそうな。
それは、ある屋敷の地下室にあった。
その屋敷は16世紀に「ビアンカ・カベッロ」が住んでいた。
イタリアの家って、いったい何年もつんだべ?
 発見者は、歴史研究者だった。
嬉々として古文書の整理と翻訳を依頼した。
ビアンカ・カベッロ」ってゆ〜のは、トスカーナ大公妃だった。
そりゃ、ジモティには有名なんだべな。
 古文書はそのヒトの手記だった。
大公「フランチェスコ」のススメによって書かれた回想録だった。
まだ「ビアンカ」が大公の”愛人”だった時の話である。

  • 包丁さばき

 「七生おばさん」の本領発揮。
こんなオイシイ史料は絶対に逃さない。
16世紀のイタリアに、ひたすら愛に生きた女性の話。
また、上手に料理してる。
 「ビアンカ」はヴェネツィアの名家「カベッロ家」の娘だった。
わずか8歳の時に母親が死去した。
ここから人生の歯車が狂いだす。
継母のいじめ、先妻の友人による英才教育・・・。
フィレンツェ人「ピエトロ」との恋、そして駆け落ち・・・。
フィレンツェでの結婚、出産、鬱々とした隠遁生活。
 そんなある日、ハンカチ王子に出会う。
それが「メディチ家」の御曹司「フランチェスコ」だった。
”ひと目あったその日からっ、恋の花咲くこともあるっ!”
周囲の冷たい目も何のその、だったそうな。

  • 愛人

 「ビアンカ」は愛人になった。
夫「ピエトロ」も、舅も、えりゃあ喜んだ。
メディチ家」からそれなりに厚遇され、満足だった。
やがて「フランチェスコ」はドイツ皇帝息女と結婚する。
「フランチェスコ」は言った。

「わたしは結婚しなければならなくなった。だが、これはあくまでも国のためにするのだ。ビアンカ、あなたこそ、わたしの真実の愛を受けつづけるただ1人の人と思っていてほしい」

 「ビアンカ」はフィレンツェ郊外の別荘に暮らした。
「フランチェスコ」は人目もはばからず、しばしば訪ねてきたという。
少しも卑屈でない生活だったらしい。
フィレンツェ市内に「ビアンカ」名義の屋敷も手当てされた。
これが、例の屋敷だべか・・・。

  • 満願成就

 人生の歯車は暴走を始める。
夫「ピエトロ」が不倫の末に殺された。
巷の噂は辛いモンだった。
”「ビアンカ」が邪魔になった亭主を殺させた。”
 2年後、当主「コジモ」が亡くなった。
「フランチェスコ」が33歳の若さで大公となる。
でも、不幸なお家騒動が続く。
実弟「ピエロ」が不貞の妻を殺す。
実妹「イザベッラ」がやはり不実で殺された。
更に、大公妃が7人目を身ごもったまま亡くなった。
 ここで回想録は終わってるそうだ。
紛失したのか、書く必要がなくなったのかは不明だとか・・・。
いずれにせよ、彼女は「フランチェスコ」と再婚し、勝利者となった。
9年後、2人は同時にマラリアで倒れた。
そして、11時間違いで息を引き取ったという。
著者のココロに残ったこと。

1人の男にこれほどまでに愛された女の、幸福な死に方。

確かに・・・。
続きは又・・・。