珍しくもない本の雑感55(3)

 【辺境・近境】

  • からす島

 初めて聞いた。
んなのも当然である。
瀬戸内海の無人島の名前だった。
でも、ありがちな名前である。
ひょっとしたら、日本中探せば10個っくらいあるかも・・・。
 個人の所有である。
個人の名前も「村上さん」だった。
元々は地元の大きな造り酒屋だったとか。
土地の名士で今は悠々自適。
からす島の対岸の広大な屋敷で暮らしてる。
 著者はからす島に泊まった。
写真の「村松映三」も一緒である。
「村上さん」のご好意で無人島に泊めてもらった。
これは十分に冒険と言う名に値する。
見事な「辺境」だった。
近代文明と隔絶した貴重な経験だべさ。

  • メニュー

 3日分の水や食糧を用意して出発。
「村上さん」が船で送ってくれた。
著者はメニューを用意してた。
無人島でキャンプしたらやりたかったこと。
 まずは思う存分泳ぐ。
この島は陸地から800mしか離れてない。
泳ごうと思えば泳げる距離である。
でも、潮の流れはきついそうだ。
手つかずのキレイな海に飛び込んだそうな。
 いきなりクラゲに刺された。
もう秋も近い夏だったらしい。
あわてて陸に戻ると、脚はみみずっ腫れ。
想像するだけでゾッとする・・・。

  • フライ

 メニューには釣りも入っていた。
狙いはキス。
投げ釣り用の道具を用意してきた。
今夜はキスのフライで晩メシの予定だった。
 ところが海の底は石だった。
すぐに針がひっかかっちゃう。
話になんなくて、これも諦め・・・。
 次のメニューはヌード・サンペインティング。
真っ裸での日向ぼっこだ。
これは気持ちよかったそうだ。
全身隈なく日焼けする。
正に無人島でなきゃ出来ないメニューだべな。
もっとも、これも曇ってしまったらアウト。
3日間、晴れることを祈るっきゃない。

  • 探検

 島の面積は6千坪。
小振りな野球のフィールドっくらいかな・・・?
95%は原生林。
トリが沢山いるのはわかった。
他に何がいるんか、よくわかんない。
 夕方、干潮になってから島を一周したそうな。
まわりの岩場をあるいて回る。
露出した岩を飛び石にしてぴょんぴょん歩いた。
ところどころは水の中を歩かなきゃなんない。
靴を脱いで水に入った。
 途端に「松村さん」が足をすぱっと切った。
牡蠣のカラである。
あわてて岩に手をついた。
そこにも牡蠣のカラがあった。
手のひらもすぱっと切ってしまった。
痛そう・・・。
さらにアンティークの「ライカ」を海水漬けにした・・・。
そりゃ、痛てえ・・・。

 晩メシの頃から虫が出始めたそうな。
いろんな種類がいた。
フナムシさえも身体に這い上がって来たそうだ。
こいつも暗くなると勇気が出るらしい。
昼間は絶対に寄って来ないくせに・・・。
 足長のクモみたいなのがぴょんぴょん跳ねてる。
ゾウリムシみたいなのもいた。
団体で身体といい、荷物といい這い上がってくる。
害はないかもしんない。
でも、やっぱいい気持ちはしなかったそうだ。
 あわてて密閉式のテントに避難。
テントは狭くて蒸し暑い。
大の男が2人で閉じこもって、面白くも何ともない。
でも、外に出る勇気はなかったそうな・・・。

 次の朝、虫たちは1つもいなかった。
著者はどこでも眠る性格なんだとか。
でも、「村松さん」はぜんぜん眠れなかったらしい。
「ライカ」はオシャカ、手足は切る、虫の襲撃、寝不足・・・。
お気の毒だった。
 昼ごろに「村上さん」が船でやってきた。
「どうですか?何か問題はありますか?」
”渡りに船”ってヤツですか?
とってももう1泊する元気は無かった。
 別に艱難辛苦を求めて来た訳じゃない。
無人島の砂浜にのんびり寝転がっていたかった。
ちょっとメロウな気分を味わいたかった。
でも、現実はそんなにロマンチックなモンじゃない。
著者のチャレンジ精神に拍手っ!
続きは又・・・。