珍しくもない本の雑感53

  • 参考書

 雑誌に”経営トップの参考書”ってな特集があった。
名前の知れた企業の社長が何を読んでるか?
多分、いろんな本を読んではいるべ。
でも、その中でオススメする本を選ばなきゃなんない。
この選び方がお人柄を表わしてる。
 圧倒的に多いのはやっぱ、経営・経済理論。
しかもカタカナが多い。
タイトルも著者も・・・。
寂しい限りである・・・。
 次が小説、古典、歴史モン。
同じ参考書でも”ハウツーモン”とはちょと違う。
個人的には、こっちの方が好みである。
こういう本を選ぶ経営トップは信頼出来そうな気がしちゃう。

  • 「七生おばさん」

 結構、常連である。
誰かしら「七生おばさん」の作品を選ぶ。
今回の特集でも「ローマ人の物語」が載ってた。
ソニーの「出井顧問」、住友信託銀行の「高橋会長」のオススメ。
何となくわかる。
あの揺るぎない個性に通ずるモノがあるかも・・・。
 今回、もう1つおばさんの作品が載った。
マキアヴェッリ語録」である。
推薦者は神鋼電機の「佐伯社長」
”っほお〜っ・・・”
さて、そのココロは・・・?

  • 「抜粋」

 この本はちょっと異色だった。
よく読めば、「七生おばさん」らしいんだけど・・・。
前書きで、この本は「抜粋」だと宣言している。
有名な「君主論(プリンチペ)」と「政略論(デイスコルシ)」
この2つからの抜粋が中心だという。
 そもそも「七生おばさん」は「マキアヴェッリ」にぞっこん。
「わが友マキアヴェッリ」なんて作品も書いてる。
おばさんは言い切る。
”「マキアヴェッリ」にとって、書くということは生の証だった”
 「マキアヴェッリ」思想には賛否両論あるという。
500年来の論争らしい。
非難するヒトの主張は「ヒトの道に反する」
弁護するヒトの主張は「時代背景でしゃあんめ」
おばさんはどっちにも同調しない。
「抜粋」は「マキアヴェッリ」の文体が与えてくれる快感も味わえるはずだとか・・・。

  • 3部作

 この本は3部からなる。

  1. 第1部 君主篇(76編)
  2. 第2部 国家篇(50編)
  3. 第3部 人間篇(57編)

語録だから、選ばれたモンばっかし。
思わずうなっちゃったり、考えさせられるモノも多い。
人間の心理の奥底をえぐり出してる。
 読んでると、グサッとくるモンもある。
中には不愉快に感じることも少なくない。
でも、現実はその通りだべさ。
実に冷静に、客観的な視点で書かれた語録である。

  • 「抜粋」の抜粋

 面白いのを幾つかピックアップしようと思った。
ところが、”どれもこれも”になっちゃう。
「抜粋」が如何に難しいか・・・。

君主(指導者)たらんとする者は、種々の良き性質をすべてもち合わせる必要はない。しかし、もち合わせていると、人々に思わせることは必要である。

 この後に、はっきり言うと、実際にもち合わせていると有害だ。
もち合わせていると思わせることが重要だと言ってる。
んで、いざとなれば徳を捨て去ることが出来る能力が必要だと・・・。

君主にとっては、愛されるのと怖れられるのとどちらが望ましいであろうか。

 そりゃ、両方とも兼ねそなえているのが望ましい。
でも、そんなこたああり得ない。
んならば、君主は怖れられる方が安全だと言う。
人間の性向はそんなモンだという。
怖れている者より、愛している者の方を容赦なく傷つける・・・。

個人でも国家でも同じだが、相手を絶望と怒りに駆りたてるほど痛めつけてはならない。

 徹底的に痛めつけられたと感じた者は、ヤバい。
もはや他に道なしという想いで、反撃や復習に燃えちゃう。
これはわかりやすい。

自軍の力と敵の力を、ともに冷静に把握している指揮官ならば、負けることはまずない。

 確か、中華風のことわざにも似たようなヤツが・・・。
洋の東西を問わず、考えるこたあ一緒か。

一軍の指揮官は1人であるべきである。

 ”船頭多くして、船山に登る”ってヤツですか?
他にも面白いのが沢山あった。
でも、キリがないんでこの辺りで・・・。