中華料理屋の雑感22

  • 転倒

 恐れていたことが起こった。
「Tんとう」が転倒しちゃった・・・。
去年の4月から1年半。
「『転倒』しないように頑張ってね!」
んなあ〜んて、憎まれ口きいてたのに・・・。
シャレになんない。
 2〜3日前、嫁さんがマスターに偶然会ったそうな。
随分、疲れた様子だったとか。
「店を閉めることになりました・・・」
「えっ!どうしたんですか?」
「厳しいんです・・・」
 さすがの嫁さんも眼を合わせられなかったとか。
「閉める前に是非、1度来て下さい」
「必ず、行きます」
ってんで、その場を離れたそうな。
嫁さん情報では最終日は10月24日。
せっせと通わなきゃ・・・。

  • クチコミ

 すぐに嫁さんはスポーツクラブ仲間に伝達。
まだ、行った事がないってヒトも駆けつけたらしい。
評価は上々だった。
そうなんだよなあ・・・。
決して、悪くないんだけどなあ・・・。
 結構、宣伝したんだけどなあ・・・。
我が夫婦のクチコミ程度じゃ追っつかないんだべな。
ビールが美味いから我が家も良く行った。
っとは言っても、せいぜい月に2回っくらいだけど・・・。
とっても貢献してるとは言い難い。
 やっぱ、厳しいんだべなあ・・・。
場所が良くないんかなあ・・・。
JR駅前の一等地なんだけど、びみょーにブラインドになってる。
決して人通りは多くない。
店がある事に気づかないかも・・・。
我がマンションから徒歩50歩の距離なのに・・・。

  • 慰労

 ま、閉店まで1ヶ月あるから何度か足を運ぶべ。
ってんで、早速行ってみた。
貸切状態だった。
心なしか、マスターも奥さんも表情が固い。
 そりゃそーだべな・・・。
せっかく出した店を閉めるとなりゃ、忸怩たる思いだんべ。
何とも言いようがないんだけど・・・。
黙ってる訳にもいかない。
 嫁さんがタマを投げる。
「マスター、次に店を出す予定とか決まってるの?」
「いえっ!しばらくサラリーマンして体力つけないと・・・」
「お友達ももったいないって言ってたわ。予定があったら聞いといてって・・・」
「他にもそう言って下さる方がいて、感激してます」
「マスターのチャーシューは絶品ですよ。この辺じゃ一番美味しいわ」
「有難うございます・・・」

  • 特別メニュー

 まずはビールである。
ここんちのビールは平塚でベスト3に入る。
そして「つまみの3点盛り」をオーダー。
3点ってのはチャーシューとメンマと白髪ネギである。
チャーシューは絶品。
メンマもちょうどいい味である。
 「今日は『牛スジ煮』作ったんですけど如何ですか?」
「へえ〜、珍しいね。頂きます・・・」
反射的にこう言う答えになっちゃうべな・・・。
奥さんが気を遣ってくれる。
「チャーシューと牛スジで両方肉になっちゃいますけど・・・」
「あ、いいよいいよ。両方下さい」
 「牛スジ煮」は嫁さんの領域じゃない。
やっぱ肉だし、コラーゲンいっぱいだし・・・。
大半を1人で引き受けるハメになった。
アブラ虫で、好きなヒトにはこたえらんないべな。

  • サービス

 ほどなく、マスターが皿を2つ運んできた。
「たった今、出来上がったチャーシューです。良かったらどうぞ」
見ると、厚さ2cmっくらいに切った塊が・・・。
贅沢の極みである。
 いいも悪いもない。
めっちゃ、美味かったあ〜。
箸を入れると、サクッと切れるくらいの柔らかさ。
んで、さっぱり系なんである。
味もちょうどいい。
「美味いっ!絶品だっ!」
 なんだけど、肉が続きすぎ・・・。
「ポテトの明太子和え」をオーダー。
少し、アブラを相殺出来るんじゃないべか。
ジャガイモは血圧にもいいし・・・。
 仕上げは「塩ラーメン」と「あっさり豚骨ラーメン」
これもいつも通りの美味しさだった。
完全に我々用にカスタマイズされた塩加減である。
せっかく覚えてもらったのになあ・・・。

  • 大ボケ

 いつの間にか店は満席。
テーブルからカウンターまでびっしり。
こんな情景は見たことがない。
みんな、閉店を聞いて集まって来たって感じである。
 「悪いからそろそろ引き揚げようか・・・」
ってんで会計を済ませて帰ろうとした。
するとご夫婦でふっ飛んできた。
「来て頂いて、有難うございましたっ!」
「いや、まだ何度も来ますよ・・・」
「いえっ!明日で閉店なんですよ・・・」
「えっ!10月じゃないの・・・?」
 やられた・・・。
大ボケかましてしまった。
「名刺か何か、お持ちじゃないですか?」
「いやあ、こんな格好だからねえ・・・」
嫁さんが特製名刺を持ってた。
「メールアドレスが書いてありますから、連絡下さいね」
何だか、唐突な幕引きになってしまった・・・。