朝のピクニックのこと【8/10】

  • 決行

 朝、5:00前に起床。
カーテンを開けてみると、びみょーな空だった。
雲は多いけど、ガンガン流れてる。
”ええいっ!山側の部屋じゃ良くわからんっ!”
外に出て、「フィヨルド」側の空を見た。
ところどころ、晴れ間も見える。
 嫁さんはまだベッドに溶けてる。
「どうする?」
「さっき、窓の外見たら真っ白だったわよ・・・」
「でもさ、雲の流れが早いから賭ける価値はあるかもよ・・・」
「行きたいわけ?」
「行きたいっ!」
 じゃ、しょうがないってな訳で行動開始。
やらずに後悔するほど、バカらしいこたあない。
Tシャツにベスト、ヤッケを重ね着して出発。
逆算すると帰還のリミットは7:50かな・・・。

  • 山登り

 ホテル内も、外も、まったくひと気はない。
そりゃ、そーだべな・・・。
気合入れて、しゃかしゃか歩き始めた。
空気が美味い。
山登りにハマるヒトの気持ちがちょっとわかる。
 30分経過。
展望台らしきモンの影もカタチも見えない。
やっぱ、30分ってこたあ無いだろうと思ってはいたけど・・・。
バスがローギアで下りるっくらいの急坂である。
たちまち汗びっしょり。
すぐにTシャツ1枚の姿である。
 でも、今回は嫁さんから泣きが入らない。
おんなじペースでスタスタ歩いてる。
さすがは平素、ジムで鍛えてるだけのことはある。
たいしたモンである。

  • 先客

 ヒトもクルマもまったく通らない。
貸切の山登りである。
40分ほど経った頃に、はるか上の方にヒト影が・・・。
ん?
「あ〜っ!『吉Dさん』だ〜っ!」
大きく両手を振ってる。
 やっぱ、来てたんだ・・・。
「素晴しい眺めだったよ〜っ!」
「まだ大分かかります?」
「ううん、もう10分もかからないよ。我々の足でちょうど50分だった」
「よっしゃ!もうひと息だ!」
俄然、元気が出た。
 何と、「吉Dさん」は昨晩下見に来たそうだ。
聞いてひっくり返った。
晩メシの後、散歩に出て、行きがかり上帰れなくなっちゃったとか・・・。
さすがに真っ暗で展望台の岩の上には立てなかったそうだ。
でも、大変なモンである。

  • ビューポイント

 ほどなく目的地に到着っ!
「うわあ〜っ!これはすごいっ!」
こりゃ、ポスターになるのもわかる気がする。
吸い込まれそうな景色じゃん。
 しかもこんな絶景を独り占めっ!
我々の他にヒト影はない。
駐車場にキャンピングカーが1台留まってた。
でも、まだ夢の世界らしい。
 展望台の岩の上にはちゃんと手すりがあった。
そりゃ、そーだべな。
無かったらとっても立つ気が起こらない。
きっとポスターは、後から加工して手すりを外しちゃうんだべ・・・。
 何枚も写真を撮った。
この写真は汗の結晶である。
お約束の写真も撮らなきゃっ!
嫁さんを展望台の岩の上に立たせて、ズームで・・・。
ん〜〜ん、びみょー。
我が家のデジカメじゃあ限界がある。
ケシツブほどに写ってるような・・・。

  • 山の天気

 いつまでも悦に入ってる訳にもいかない。
帰りの時間を計算しなきゃなんない。
でも、何ってったって下りである。
写真撮りながら帰っても大丈夫だんべ・・・。
 写真を撮りながらどんどん下る。
来る途中、メドをつけておいた景色が沢山あった。
ところが・・・。
やっぱ、山の天気である。
一転、俄かに掻き曇り・・・たちまち視界が無くなってきた。
 ひょえ〜っ!
危ないところだった。
あと10分、遅かったらビューポイントもアウトだった。
「何でも後からってのはダメよ!」
「近Dさん」のセリフを思い出した。

  • 得意顔

 帰りは所要30分ちょっとだった。
7:30っ頃にホテル到着。
計画より若干余裕が出来た。
まず、朝メシ。
それからシャワーを浴びて出発である。
 やっぱ、みなさんから好奇の眼で見られた。
特に汗みどろのTシャツ姿のオジサンは異様だべさ。
「どしたの?」
「えっ!まさか行って来たの?」
ってなモンである。
 そこで、広報担当の嫁さんの出番である。
「そりゃもう、感激モノよ〜っ!」
「やっぱ、ここまで来たらあの景色は観なきゃって思って・・・」
得意顔である・・・。

  • クルーズ船

 ホテルに着く頃には、雲が取れてた。
天気は悪くなさそうだ。
せっかくの「フィヨルド・クルーズ」だ。
眩しいっくらいの光が欲しい・・・。
 いつの間にか、目の前の「フィヨルド」にクルーズ船が停泊してた。
っでかいっ!
どう見ても、こないだの「シリヤライン」と大差ない。
5〜6万トンはあるべ。
 この眺めは何とも違和感がある。
不忍池」に「飛鳥」が浮いてるみたいな・・・。
それだけ、急深だってことなんだべな・・・。

 「フィヨルド」の説明を聞くと納得する。
これを作ったのは、1万年も昔の分厚い氷河だそうだ。
厚さは1,000〜3,000mとか・・・。
内部にはすごい圧力がかかってた。
 こいつが岩盤を削りながら海に流れた。
谷底をガンガン削った。
その跡に両側が切り立った「U字谷」が出来た。
ここに海水が流れ込んだモンなんだそうだ。
 氷河は海に近づくと溶ける。
圧力も小さくなって侵食力が弱まる。
ってんで、「フィヨルド」は海に近いほうが水深が浅い。
内陸に行くほど水深が深いそうだ。
水深1,000mなんてのがザラになるとか・・・。
恐るべし・・・。