オスロ市内観光のこと【8/9】

  • 朝メシ

 晩メシと同じレストランである。
もちろん、ブッフェ形式。
朝も「コルボール」って言うんだべか?
でもなあ、名前が何であっても中身は似たようなモンである。
ちょっと、飽きる・・・。
 レストランは満員御礼だった。
同じツアーの「斉T夫妻」が手招きして、席を空けてくれた。
「ここ、どうぞ!」
「あ、どうも有難うございます」
何だ、とっつき難いと思ってたけど、いいトコあんじゃん・・・。
 いつもと同じようなオープンサンドを喰う。
その時である。
「ドンガラガッチャ・ガッチャ〜ン!」
すごい音がホテルのロビーに響き渡った。
一瞬の静寂。
続いて、拍手!
拍手と大笑いである。
暖かい料理の大きなフタを落っことしたオバサン、突然ヒーローだ。
ガイコクっぽ〜いっ!

  • 現地ガイド

 オスロの観光スタートである。
現地ガイドとの待ち合わせ場所に向かう。
今日も日本人ガイドだった。
「ジュンコさん」というおばはんだった。
真っ赤っかな服を着てるので、どこにいてもわかりやすい。
 この「ジュンコさん」が最高だった。
何とも浮世離れしたしゃべり方なんである。
「みなさ〜ん、よろしくねっ!」
っみたいな・・・。
思わずチカラが抜ける・・・。
 「それじゃ、みなさ〜ん。ついてきてちょうだいなっ!」
みんな、説明を聞きながら笑いを堪えてる。
ヤ、堪えられない。
大爆笑の連続である。
 朝から良く笑う日だ。
何をしゃべっても可笑しい。
「ジュンコさん」がバスに乗り込んだ直後から笑いが耐えない。
誰かが言った。
「このまま、ず〜っとガイドやってよ〜」

  • 「Frogner(フログネル)公園」

 最初の観光は公園。
どこに行っても、公園の観光ってのは多い。
何ってったって、バスが留めやすい。
しょーがないよな・・・。
 ここは彫刻家「グスタフ・ヴィーゲラン」のギャラリーである。
公園って言うよりは、作品展示場。
ものすごい数の作品がある。
「テーマは観るヒトが考えるモンだそうだ。
多分、”ヒト”っとか、”輪廻転生”っとか・・・。
オスロ市がカネを出して、彼が1人で造ったそうな。
作風よりも、そのボリュームにびっくりした。
 「ジュンコさん」の説明も絶好調。
「気持ちいいですねえ。朝のお散歩ですねっ!」
「芝生に入ってもかまいませんよ。タダの草ですから・・・」
「『ヴィーゲラン』は、作品にテーマはないと言っています」
「だから、『これは何?』っとか私に訊いちゃあいけませんよっ!」

  • 「市庁舎」

 ここで1時間、フリータイムだそうだ。
そしてその後は、もう「フィヨルド・ツアー」に出発。
”っえ〜っ!市内観光ってこれだけなの〜っ!”
って思ったけどしょうがない・・・。
 「市庁舎」はキレイな建物だった。
ノーベル平和賞の授賞式会場がある。
日本の市役所とか、村役場なんかからは想像出来ない。
立派なクロークやトイレも完備されてる。
いつでも、大会議やパーティーに対応出来る。
 正面の壁はレリーフで飾られ、オシャレな時計もある。
プラハのからくり時計を思い出す。
この建物の周りにも「ヴィーゲラン」の作品が置いてあった。
相当、市から重用されてたんだべな。
 「ジュンコさん」の説明はこうだった。
「市庁舎の裏が港になってますから、お写真撮るのにいいですよ」
「トイレは『市庁舎』の中に無料のがありますから、済ませて下さい」
我々は、この説明を聞いてすぐバスを降りちゃった・・・。

  • 閑散

 まずは「トイレ」である。
「市庁舎」の地下にすごい立派なトイレがあった。
とても公共のトイレとは思えない。
しかも、タダである。
 「市庁舎」を観てから、港に行った。
ま、観光船がいるっくらいのひなびた港である。
でも、ここは「オスロフィヨルド」なんだよなあ・・・。
散歩がてらのんびり歩いた。
花壇や、カモメのジョナサンの写真を撮ったりしてた。
 それにしても、同じツアーメンバーが見当たらない。
妙に閑散としてる。
”っかしいなあ・・・?”
途中で、「K玉夫妻」に会った。
「皆さん、どこに行っちゃったんでしょうねえ・・・?」
やっぱ、ちょっと不安になったらしい。
ま、とりあえず時間どおりにバスに戻った。

  • リタイア

 誰もいない。
っと思ったら、お1人だけ姿が見えた。
「藤Iさん」のご主人だった。
多分、今回のメンツで最高齢だと思う。
ご夫婦ともに70歳を越えてるように見える。
 「あれ、誰も戻ってないですねえ・・・」
「あ、そうですね・・・。ちょっと我々はここで離脱しますんで・・・」
「えっ?どうかしたんですか?」
「家内が具合が悪くなっちゃって、病院に行きたいってことで・・・」
 大変である。
「ヒロミさん」と「ジュンコさん」でいろいろ手配しまくってた。
荷物を全部降ろして、ホテル・病院・タクシーを手配して・・・。
幸い、「ジュンコさん」がいるので、残して行ける。
後日、ベルゲンで合流するという事になった。
 奥さんは風邪気味ではあったらしい。
何か、持病もあるという。
ホントは一緒に行っちゃった方が不安が無くっていいのではっと思うけど・・・。
なかなか、余計な口出しもし難い・・・。
「お大事にして下さい」としか言えなかった。
ご主人は、飄々たるモンだった。
多分大丈夫なんだけど、気が済むならそうしようって事らしい。

 集合時間から10分ほど遅れて、団体さんが戻ってきた。
みんな、小走りの掻き揚げ状態・・・。
ハアハア言いながら帰って来た。
「どちらに行かれてたんですか?」
「ハアハア、『ムンク』を観て来ましたよ!ハアハア・・・」
 ま、まさか・・・!
慌ててガイドブックをくくってみた。
ありゃあ〜っ!
やっぱし、そうだった!
何と、ここから「国立美術館」まで500mっくらいの距離だった!
 「せわしかったけど、入場料無料だし・・・」
「ま、オスロまで来て『ムンク』を観ないってのもねえ・・・」
みんな、バタバタながら満足したらしい。

  • 楽しみ

 しくじった!
どおりで、みんなと会わなかった訳だ!
結局、行かなかったのは我々と「K玉夫妻」と「斉T夫妻」だけ。
バスの後部ドアの近くに座っていたヒトばかり・・・。
我々がバスを降りた後で案内があったらしい。
 走り出したバスの中で「ヒロミさん」が言う。
「ここまで来たら『ムンク』は是非、観ていただきたかったんですっ!」
てんめえ〜っ!
聞いてねえよっ!
 後ろの座席から「K玉さん」ご主人のボヤキが聞こえる。
「くっそお〜っ!迂闊だった。これは悔やまれるなあ〜・・・」
相当、悔しかったらしい。
しばらくブチブチ言う声が聞こえてた。
 ま、いーじゃん。
美術館のマーキングなんてシャレになんないべや。
ムンク」がすべてじゃないべ。
他にも「セザンヌ」、「マネ」、「ルノワール」、「ゴッホ」なんかもある。
又、ゆっくりと訪れて観る楽しみが残ったじゃん。
 ここで、「藤I夫妻」と「ジュンコさん」を残して出発。
いよいよ「フィヨルド・ツアー」の始まりである。